何気ない日常の描写の中で、くすぶっている男女の感情のもつれや葛藤をほろ苦く描いた魚喃キリコ(なななん・きりこ)のマンガを映画化した『南瓜とマヨネーズ』(冨永昌敬監督)が11月11日から公開されました。
プロのミュージシャンを目指す恋人の夢を支えるためにキャバクラで働きながら、再会した元恋人との間で揺れうごく主人公・ツチダ。その心情を、痛々しくも愛おしく描き、多くの女性ファンに支持されてきた作品です。主演を務める女優の臼田あさ美(うすだ・あさみ)さん(33)に、お話を伺いました。
女優業は「まだまだ道半ば」
——(前回)「私生活が豊かであるほど、いい仕事ができると思う」とおっしゃっていましたが、例えば、20代より経験値が増えた30代のほうがお仕事が楽しいなど、30代になって感じた変化はありますか?
臼田あさ美さん(以下、臼田):仕事は毎回、初めてのメンバーが集まるので、緊張もするし、不安もあるし、初めてのことをやる感覚で取り組むのですが、20代の頃は、モデルの仕事をしていたり、バラエティに出たり、お芝居をしていたり、今よりいろんなことをやらせてもらっていたので、自分で先のことまで考えて何かをやりたいっていう気持ちは少なかったかもしれません。
10代、20代で傷ついたことにいまだに傷つくし、あの頃嬉しかったことに今でも喜びを感じるし、変わらない部分もある。まだまだ道半ばという感じですね。
——この『南瓜とマヨネーズ』もそうですが、映画『愚行録』やドラマ『架空OL日記』(テレビ東京系)など、最近の出演作は、ピリリとスパイスが効いたものばかり。面白いと思うお仕事を忠実に選ばれている印象があります。
臼田:この人たちと一緒に芝居ができる喜び、この監督と一緒にできる喜び、このキャストの中に呼んでもらえた喜び。そういう気持ちは常に感じていますね。このお仕事は、自分ひとりでは引き出せなかったものをまわりに引き出してもらったりできる。そういうことに敏感でいたいし、喜びを感じていたいと思います。
私生活の経験も活かせるくらい強く
——芸能人が結婚すると、よく、「ファンがショックを受けている」とか、「価値が下がる」といった書かれ方をメディアにされことが多いですよね。臼田さんは今年ご結婚されましたが、私生活をもって女優の価値をはかるような風潮があることをどう思いますか?
臼田:そういうことを気にとめてしまうほうがストレスじゃないかなと思います。
だから私は、結婚しようと、お芝居は別だし、むしろそれを仕事に活かせるぐらい強い人でありたいって思います。
——会社員の女性と話していると、結婚・出産したというだけで、「仕事に影響するのでは」「迷惑をかけるのでは」と、社内の立場を気にして思い通りに働けない……という声を聞くことがあります。
臼田:私にはまだ子どもがいないけど、やっぱり妊娠中はどうしてもできないことがありますし、
そういう事情で仕事が減ってしまうことはあると思います。。出産したことによって、それの比にならないぐらいの幸せやかけがえのないものを得たんだと思って、ハッピーでいるほうがいい。女性の場合、仕事も出産も同時に全部やりたいというのは、一時的にムリですから。そこは割り切るしかないところかなと思います。
誰かのせいにするのは気持ちよくないから…
—— 最終的にはやっぱり、自分の価値感でしっかり自分の仕事をするぞ! っていうところに集約されてといくような気がします。
臼田:別に誰かにこう言われたわけではなのですが、私の女優という仕事でも、「女優さんは恋してなんぼだから、結婚するより恋多き女でいたほうがいい芝居ができる」っていう価値観の人もいらっしゃると思うし、そういう価値観の監督もいらっしゃるかもしれない。
けど、私が結婚して思うのは、うちの場合は結婚したからって生活が安定したわけでもないし(笑)、一生働かなくても生きていけるというような、暇つぶしでやれるほどの余裕もない。そのあたりの状況は人によって全然違うと思いますけど、世の中の価値観にしばられないほうがいいと思います。
——臼田さんは、自分の人生は自分で選び取っていくスタンスなんですね。
臼田:やっぱり、自分で決めたら、いいことがあっても自分のおかげだし、ダメなことがあっても自分のせい。誰かのせいにするのは、気持ちよくない。でも、必ず誰かに助けてもらっているということは、常に忘れないようにしています。
(取材・文:新田理恵、写真:宇高尚弘/HEADS)
【作品情報】
『南瓜とマヨネーズ』
11月11日(土)より全国ロードショー
配給:S・D・P
(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会