「女子とおじさん」鈴木涼美さんインタビュー第1回

「目の前の上司も夜は縛られているかも…」女子もおじさんも“いろいろな顔”がある

「目の前の上司も夜は縛られているかも…」女子もおじさんも“いろいろな顔”がある
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女の子を前に名言を連発したり「素の俺を見てほしい」と迫ったりしてしまう痛々しくもどこか滑稽な“おじさん”という存在。

そんなおじさんのエピーソードを軽妙に、鋭く綴った鈴木涼美さんのエッセイ『おじさんメモリアル』(扶桑社)が9月に発売されました。

「◯◯女子」のようにこれまでは何かと女性が取り上げられたり、話題の中心になったりすることが多かったけれど、これからは「おじさん」が主役……? 

鈴木さんに「女子とおじさん」をテーマに3回にわたって話を聞きます。

【関連記事】「おじさん」って何?男は40歳で“別れ話”に目覚める

『おじさんメモリアル』の著者・鈴木涼美さん

『おじさんメモリアル』の著者・鈴木涼美さん

女子の対(つい)がおじさん?

——『おじさんメモリアル』、とても面白かったです。有名私立女子大生、記者、キャバ嬢、AV嬢などたくさんの肩書きを持つ鈴木さんが見たおじさんの姿が生き生きと描かれていましたね。

鈴木涼美(以下、鈴木):ありがとうございます。本に登場するおじさんは私が実際に出会った人もいますが、友だちに聞いたおじさんのエピソードもたくさんあります。

友だちが話す(キャバクラに来る)お客さんや会社の上司、先生といったおじさんのエピソードがとにかく面白くて、そんなおじさんたちの話を集めたら面白そうだなって思ったのが、執筆の直接的な動機です。

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——そういえば、最近「◯◯おじさん」っていう言い方をよく聞くなあと思っていて。「◯◯女子」みたいな。

鈴木:女性って見た目も華やかだしよくも悪くも世間の話題の中心になりやすい。風俗やAV、キャバクラでもキャスト側の女性に目がいってしまうけれど、お客であったり店の経営者であったりするおじさんが興味の対象になるというのは少ないんですよね。だから、女の子から見たおじさんの姿を描きたかったんです。

——小難しい言い方になっちゃいますが、おじさんがコンテンツとして消費される時代がやってきたってことですかね。

鈴木:そうですね。男性って「負の遺産」のような意味でのバブルおじさんや「最近の若者は消極的で」っていう文脈で語られる草食系男子といったバクッとした取り上げ方しかされてこなかった。だから、男の人が主役の本を書きたかったという気持ちはありましたね。

おじさんは居場所がない?

鈴木:おじさんって複雑な立ち位置だなと思っていて。

——どういうことですか?

鈴木:頑張って男らしくしようとすると怒られる。例えば、「頑張って家庭を支えるから家のことは頼む」って言うと「古い考え方」って怒られますよね。かといって稼いでこなかったら「甲斐性なし」ってそれはそれで怒られる。

——それはそれで可哀想かも。

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鈴木:そうなんです。微妙なバランスで生きないと批判されちゃうところがあるのかなって。もちろん女性にもいまだに「女はこうあるべき」という圧力はありますし、バランス感覚は重要ですが、男性の場合かなり「何をやっても批判される」状況にあるように思います。

これまでは、ある意味女の人を養うために頑張ってきたのにここにきて「権力を独占しやがって」って言われ出した。

権利を獲得しつつある側の女性って、力をつけている途中だから貧しくても元気じゃないですか。社会的にもちょっと女の人を貶(おとし)めてはいけない、大切にしなくてはいけない、活躍させなくてはいけない、と過敏になっていますしね。

それに対して、おじさんは新しい生き方を提示されているわけでもないっていうのを思うと居場所のなさがあるし、男性のリアルってそこまで注目されていないなあと思います。

おじさんもいろいろな顔がある

——おじさんのリアルかあ……。鈴木さんの本を読んでいるといろいろなおじさんが登場しますよね。名言を引用しながら話す「名言引用おじさん」や毎回別れ話を切り出してくる「別れるサギおじさん」とか……。

「こんなおじさんがいるんだ!」って驚くと同時になぜ私はこういうおじさんに会っていないんだろう……ってちょっと悔しかったんです。

鈴木:私は青春のある時期をキャバクラとかおじさん相手の商売の場で過ごしたので(笑)。例えば会社員だけをやっていると、会社で仕事をしているいい格好をしているおじさんしか見ていないわけですよね?

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——あ、そっか! 昼の仕事をしているおじさんしか見ていないです。

鈴木:おじさんにも昼の顔と家庭の顔とかいろいろな顔があるんです。

だから、夜の顔もそのひとつで「君たちの前で偉そうにしている上司も夜は縛られているよ」っていうのを垣間見える感じに意識しました。

いろいろな顔があるというのは女性もそうですよね。

私も表向きは進学校に行って、大手新聞社に就職してという“表の顔”もあれば、別の顔も持っていたので、おじさんが別の顔を持っているのは不思議ではなかったんです。

——いつの間にか表の顔だけ見て、それがおじさんのすべてだと思っていました。

鈴木:特に私は顔を使い分けるタイプだったので、絶対人は片方だけの顔じゃないと思っちゃう。

おじさんに関しても「夜はこんなだけど昼はどんなだろう?」とか「記者時代に取材先で会ったかっこいいおじさんって夜はどんな顔をするんだろう? うん、意外に別れ話ばかりしてくるな」とか(笑)。

どちらかで見るかで人って本当に違いますよね。

——まさに「おじさん、下から見るか?横から見るか?」ですね(笑)

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第2回に続く。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

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