日本一ちっちゃな働きかた改革 第26回 元Google人事・ピョートルさんインタビュー(第3回)

会社でオッサンと闘うか、お洒落カフェでママ会か…日本女性の2択はヘン!

会社でオッサンと闘うか、お洒落カフェでママ会か…日本女性の2択はヘン!

「日本一ちっちゃな働きかた改革」
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「フリー編集長」と「社畜プロデューサー」というまったく異なる立場から、ウートピ編集部というチームを運営している鈴木円香(34歳)と海野優子(32歳)。

脱サラした自営業者とマジメ一筋の会社員が、「心から納得できる働きかた」を見つけるため時にはケンカも辞さず、真剣に繰り広げる日本一ちっちゃな働きかた改革が現在進行中です。

海野P(左)と鈴木編集長(右)

海野P(左)と鈴木編集長(右)

ポーランド出身で、モルガン・スタンレーやグーグルで人事のプロとして活躍、現在は起業家兼作家のピョートル・フェリークス・グジバチさんへのインタビューも今回で終わり。

最終回は、来日17年目のピョートルさんが「いまだに最大の謎」という、日本女性の結婚と仕事をめぐる問題について聞いていきます。

第1回:女性×モヤモヤはもう古い!私たちがやるべきたった一つのこと
第2回:女性上司は一番相談しにくい相手?モヤモヤが終わらない理由

ピョートルさん(右)に会いに行ったふたり。

ピョートルさん(右)に会いに行ったふたり。

「いい男性を紹介してください」って頼まれるけど……

ピョートル:私が来日してから今年で17年になりますが、いまだによくわからないのが、結婚して専業主婦になりたいという女性が少なくないこと

鈴木:しかも、最近また専業主婦志向の女性が増えているとも聞きますね。

ピョートル:そうなんですよ!!! これは、世界的に見てもおかしいです。すごくおかしい。先進国では日本にしかない傾向です。私はポーランド出身ですが、ヨーロッパで若い女性が「お金持ちと結婚して専業主婦になりたい」なんて話せば、「ちょっとあの子、おかしい」「売春婦みたい」と言われかねないです。

海野P:売春婦……マジですか……。

ピョートル:ジョークじゃないですよ、ホントですよ。

海野P:その感覚はさすがになかったです。

ピョートル:私、よく20代、30代の女性から「いい男性を紹介してください」って頼まれるんです(笑)。みなさん、立派なキャリアを積んでいて収入も500万〜600万円はあるような女性たちです。「じゃあ、どんな人がいいですか?」と返すと、9割の女性が「経済的に困らない人」と答える。働いていて十分な収入のある女性たちが、ですよ! ビックリします。

海野P:9割かあ!

ピョートル:さらに「経済的に困らない人って、どういう意味ですか?」と聞けば、「収入が800万円以上ある人」と答える。「なぜ、800万円以上なの?」という質問には「自分が働かなくてもいいから」と。

海野P:(リアル……)

ピョートル:もっと不思議なのは、彼女たちが結婚したい理由です。「どうして結婚したいんですか?」と聞くと、だいたい「子供が欲しいからです」と答える。でも、それおかしくないですか??? 順序が真逆ですよね??? ある人と恋に落ちて、その人と一緒にいたいから結婚する、その人の子供を産みたいと考えるのが、日本以外のフツーの世界の発想なんですけど、なぜか日本は真逆なんですよね。

海野P:日本以外のフツーの世界!!(笑)。

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女性の頭の中の「ずるい計算」

ピョートル:なぜ、日本の女性、特にキャリアも収入もある女性がそんなに結婚したがるか? それは、結婚したほうが「ラクだから」でしょう。発想としては、保険に近いかもしれません。仕事もつまらないし、ロールモデルもない。そんな時に親から「そろそろ結婚してもらわないと困る」なんて言われて、年収800万円くらいの男を捕まえて結婚しちゃう。

鈴木:今の環境で働き続けるよりも、そこそこ年収のある男性と結婚するほうがラクという計算が働いている、と。

ピョートル:はい、そういう「ずるい計算」が日本の女性の中にはあるんです。

どこの社会も人が生き残るために、保険の役割を果たしているものがあります。日本の場合だと、「国」「会社」「家族」の3つが保険の役割。これが中国や東南アジアだと「家族」の比重が大きくなります。会社は、どんな時も給料がもらえるという保険。家族は、働かなくても養ってもらえる(かもしれない)という保険。

鈴木:でも、今の時代でもまだ結婚って保険になるんでしょうか?

ピョートル:全然保険にはならないと思いますよ。でも、みんな気づいてない。よく仕事のミーティングで恵比寿や代官山のカフェを利用するんですが、昼間はたいてい隣の席でスーパーママたちがランチをしています。お洒落なカフェで華やかなファッションに身を包んで美味しい食事をしている、お金持ちのスーパーママたち。

鈴木:いますねえ。

ピョートル:彼女たちの会話を盗み聞きしていると、話題はいつも夫の稼いだお金を使っていかに人生を楽しむか、なんですね。旅行のこと、ファッションのこと、彼氏のこと(ママさんなのに!)、離婚のこと……。

先が見えない不安な時代だから、いい夫とか、いい家族とか、保険が欲しいのはわかる。でも、それって年収800万円以上の男性を見つけていい家族に入ることなの?と。

海野P:でもなあ、将来不安だし、仕事はつらいし、やっぱり結婚に逃げたくなる時はあると思いますよ。そんなにがんばらなくてもいいじゃんって。

ピョートル:だけど実際、「800万円以上の男性と結婚して自分は働かない」って、全然保険になってないですよね。日本のシングルマザーって貧困率がめちゃくちゃ高いじゃないですか。相手に頼るんじゃなくて、自分の市場価値を高めることを考えるべきじゃないかな。

海野P:(そりゃ、正論ですけど……)

その2択、ヘンです

ピョートル:結婚と仕事をめぐるこの謎を考えていくと、結局、日本の女性には、システムシンキングが足らないことが見えてきます。

鈴木:システムシンキングとは?

ピョートル:例えば、今、自分が「仕事がつまらない」と感じているなら、それはなぜ? どうしたら楽しくなるの? 会社や社会がどうなればいいの? そういうふうに自分と社会全体を関連づけて考える習慣がないんです。

鈴木:「自分以外」の視点がないわけですね。

ピョートル:そうです。組織の中でバーコードのオッサンと闘いながらつらい思いをして働くよりも、年収800万円以上の男をうまく落としてお洒落なカフェでランチするほうがいいじゃん。それは確かに人間らしい「ずるい選択」です。でも、本当にそれでいいの?と。自分たちがそういう選択をすることで、社会というシステム全体は悪循環に陥ってるんじゃないの?と。

鈴木:デキる女性がそうやってキャリアから離脱しちゃうことで、ますます組織は変わらなくなってしまう?

ピョートル:はい、確実に。単に女性の管理職を増やせばいいという問題じゃないんです。なぜ、女性のリーダーが増えないか? それは男性がずっとマネジメントに就いているから。だから、女性として働き続けるのはしんどい。でも、ここで女性たちが代官山のお洒落カフェに流れてしまったら、男性的なマネジメントは変わらないまま、ますます女性が働きづらくなるばかりです。

日本の女性には、そういうシステムシンキングを身につけてもらいたいですね。

鈴木:会社でオッサンと闘うか、お洒落カフェでママ会か……その2択がそもそもヘンでしょ?と。

ピョートル:はい、すっごくヘンです。

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「自分のことばっかり」じゃないですか!

ピョートル:今の仕事がつまんなかったり、しんどかったりするのはわかります。ですが、日本企業で働いている日本人社員は、自分のことばっかりですよね。自分がつらい。自分の将来が不安。自分のキャリアが見えない。でもね、みなさんは世界で3番目に大きな経済圏で仕事をしていて、もし大企業に勤務しているならグローバルな世界とも直接繋がっているんですよ!

鈴木&海野P:(この特集も含めて、ホント自分のことばっかりですみません……)

ピョートル:そんな大きな経済を持つ国で、リーダーとして優れた素質がある女性が、マネジメントをやらない。いつまでも組織が変わらない。会社の業績が悪くなる。最悪、倒産してしまうかもしれない。そうなったら、どうなると思います?

鈴木&海野P:(どうなるの……???)

ピョートル:自分が失業するだけじゃないんです。日本の大企業が一社潰れたら、世界中の数十万人の雇用がなくなってしまいます。日本はまだいい。コンビニでバイトをすれば、生きていけますから。でも、ブラジルとか、ロシアとか、アフリカの国々だったら? 職を失えば、家族全員死んじゃいます。

鈴木&海野P:そっかぁ……。

ピョートル:一瞬で数十万人が食えなくなるんですよ! みなさん、「自分がつらい」「仕事がつまらない」ばっかりで、それを全然考えていないですよね。

鈴木&海野P:(図星です……)

ピョートル:このままじゃ、世界中で食えなくなる人が大量に発生しちゃうからもしれない。だから、僕は「ヘンな外国人」としてこうして日本でキャーキャー情報発信を続けているんです。日本の組織が変われば世界に影響をあたえられますから。

鈴木:仕事や将来のことでモヤモヤする。でも、その「モヤモヤ」は組織、社会、世界とどんなふうに関係しているの?というところまでは、考えていかなきゃいけないんですね。

ピョートル:だから、「モヤモヤ」はもう古いですから! 日本の女性のみなさん、いい加減、そろそろ行動してください!

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(構成:ウートピ編集長・鈴木円香)

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脱サラした自営業者のウートピ編集長・鈴木円香と、社畜プロデューサー海野Pのふたりが、時にはケンカも辞さず本気で持続可能なワークスタイルを模索する連載です。

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