世界中で大ヒットしているDCコミックの実写映画化『ワンダーウーマン』(パティ・ジェンキンス監督)が8月25日(金)から公開されます。
映画のヒロイン・ダイアナは、女性だけが暮らす、外の世界とは隔離された島・パラダイス島のプリンセス。パイロットのスティーブ(クリス・パインさん)を助けたことをきっかけに、外の世界で繰り広げられている争いを止めようとワンダーウーマンとして立ち上がります。
周囲に止められても、困難が降りかかっても自分の信念を貫こうとするワンダーウーマンは「かっこよすぎ!」の一言。
女性監督による歴代の実写映画の興行成績でナンバー1に輝いたジェンキンス監督に作品に込めたメッセージやワンダーウーマンの魅力を語っていただきました。
ワンダーウーマンが眩しく映る理由
――ダイアナは生まれて初めて会った男性であるスティーブを信頼しますが、甘えたり、彼に守ってもらったりすることはありません。どれだけ敵が攻めてきても、自分から最前線へ向かっていく。周りの目を気にしないで自分の信念を貫く姿がとても眩しく映りました。
日本では、どうしても人の目を気にする傾向があるし、特に女性は男性の目線を気にしてしまう。「女は愛されてこそ幸せ」「女は恋しないと一人前ではない」という考えもまだまだ根強い。そんな世間や他人の目を気にしがちな女性に監督から言葉をいただきたいです。
ジェンキンス監督:私は男性も女性ももっと進化をすれば未来では良好なパートナーになれると思います。自信がある強い自立した女性は素晴らしいパートナーになると思うし、もしも、その相手がいなくなってもひとりで立てるのが真の魅力的な女性だと思います。「男がいないとどうのこうの」っていう話ではないと思いますね。
――「男性に認められないと」と思ってしまうのはある意味不自由なことだとも思うんです。
ジェンキンス監督:私は子供の頃、テレビドラマ版「ワンダーウーマン」を見て、こんなふうになりたいと思いました。でもだからといって男性に負けないと思っていたわけではありません。
男社会の中で生きる不自由さを感じる気持ちはわかりますが、そういう女性には「そんなに必死にならないで」と言いたいです。
何かひとつのことをつきつめてネガティブに考えないで、視野を広く、いろんな世界を見てください。男に認められないと一人前じゃない社会は確かに不自由だけど、お互いに認め合って、真実の愛を求める気持ちが大切。これはすべての人が求めていることだと思います。
ワンダーウーマンの魅力は我が道を突き進む「強さ」
――『ワンダーウーマン』を見た後は、自分にもダイアナのパワーが注入され元気になりました。「もう何でもできる私!」みたいな。
『ワンダーウーマン』はDCコミック出身のキャラクターですが、ヒーローといえば男!というなかで、「女性でも平和を守り、悪と戦える力はある!」とアピールしていますね。フェミニスト的な視点もあるキャラクターの物語をエンターテインメント映画として仕上げるのは難しくなかったでしょうか?
ジェンキンス監督:実は、簡単じゃないことだと思っていたのですが、思いのほか難しくなかったんです。なぜならダイアナというキャラクターが、とても自信家で、闘う技術にすぐれた人物だったからです。
映画には「ここは女の出番じゃない」という場面もありますが、彼女は、その壁を乗り越えるために男と競い合ったりしません。彼女自身が迷いなく突き進んでいくので、それがエンタテインメントしての面白さとワンダーウーマンとしての強さにつながっていったのです。私があえて特別なレクチャーをしなくても、彼女自身の存在が、女性解放やフェミニズムを物語っていたんです。
――あえて「男には負けない!」とアピールせずとも、ワンダーウーマンの存在が強い女の象徴なので必要なかったということですね。
ジェンキンス監督:周囲の人は「ワンダーウーマンをすごくタフな女性にしよう」と言っていたけど、ワンダーウーマンを描くということはタフな女を描くということ。肉体は強く、心もタフ。ダイアナを演じたガル・ガドット本人もそういうキャラクターだったので、無理にタフにする必要もなかったのです。
だから、女性しかいないパラダイス島からロンドンに来て、初めて見るものや触るものにとまどったりする、ダイアナのユーモラスでかわいいシーンを見せても問題ないと思いました。ダイアナ自身のタフさは揺るぎないものだから、逆に優しさなど、ほかの魅力も持っている人だと描きたかったんです。
大事なのは「常に自分の頭で考えること」
――だんだん監督のことがワンダーウーマンに見えてきました(笑)。ダイアナは人々の幸福と平和のために闘うという強い信念がありますが、監督の信念は?
ジェンキンス監督:私が絶対に曲げたくない信念は、常に自分で考えて行動すること。人の意見に流されたりしないように、わけもわからないまま従ったりしないと決めています。もちろん間違えて、うっかり従ってしまったことはあります。でも極力自分の頭で考えて行動し、選択していくことが大事。ダイアナの旅もそうですよね。
――それは例えばどのような場面ですか?
ジェンキンス監督:私の義務はよい映画を作ることだけど、その過程で「間違えたかも」「方向性が違う」と思うことがあります。何かが違うと気付いていても、続けるほうが楽ですよね。
多くの人が働く映画の現場で「間違えました。最初からやりましょう」と言うのは、とても勇気がいること。それでも私は「これは違う。もう一度やり直しましょう」と言います。自分の意図するものと違ったら、必ずやり直す方を選択しなければいけない。これは映画監督の仕事だけじゃなく、日常でもあることです。例えば、自分の子供を入学させた学校で子供によくないことが起こったら、転校させるという決断を強いられます。変えることは大変なことですが、やらなくてはいけないと思います。
人生は、前に進む道しかありません
――ダイアナは自分が生まれ育ったパラダイス島を出るとき、戻らない決心をして退路を断っていますよね。逃げ場を作らないというか「前進あるのみ!」という精神は、監督からのメッセージでしょうか。
ジェンキンス監督:特にメッセージとして込めたつもりはないけれど、もしそう受け止めたのなら、それが人生なんじゃないかなと思います。人生は前に進むしかないでしょう、時間は戻せないのだから。ずっと立ち止まっているわけにもいかない、前に進むのが人生。しっかり前進できるように、私は一生懸命努力してます。
――「人生は前に進むしかない!」確かにそうですね。ただ、ハリウッドも男社会と言われていますよね。監督もまさにワンダーウーマンだと思うのですが、困難にぶつかった時はどう乗り越えているのでしょうか?
ジェンキンス監督:私が頑張るモチベーションは、男性に勝ることではなく、男女を超越したところにあるんです。私は物語をツールにして、よりよい社会、よりよい文化を作っていきたい。それがこの仕事を続ける動機です。
そのためにはスタジオの偉い人と衝突しても闘います。よりよい映画を作るのが私の義務だから。そうやってできた映画に多くのお客さんが集まって感動してくれれば、お客様もハッピー、スタジオもハッピーでWinWin。加えて、私のキャリアもアップできるので言うことないですね(笑)。
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