ドラマにみる女友達考 #3 「陸王」

「紅一点」に舌打ちするか、ほくそえむか 女友達がいない環境について考えてみた

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「紅一点」に舌打ちするか、ほくそえむか 女友達がいない環境について考えてみた

大人になると、気の置けない女友達の存在がいかに貴重であるか感じる場面も多いのでは?

しかし、友達不要派なのか、そうせざるを得ない環境なのか、「紅一点」という女性も少なからずいます。前回、前々回と「今期は女性同士が仲良くしているドラマが目立つね」という観点から女友達考察を繰り広げてきました。

最終回となる今回、ライターの吉田潮(よしだ・うしお)さんに、「紅一点」というポジションについて切り込んでいただきます。

【女友達考1】「偶然近くにいるだけの人」との適切な距離感
【女友達考2】「監獄のお姫さま」に見る団結力

「陸王」で女友達考察?

男たちの闘い、下剋上、そして熱い友情と信念というテーマでヒット作品を生み出す、日曜劇場。今期は「陸王」(TBS系)だ。ドラマをご覧の方は、ここに女友達なんて関係ないじゃんと思うでしょう。何せ男たちが活躍するドラマ、なのだから。

でも、その中にどうしても気になってしまう立ち位置の人がいるんだよね。阿川佐和子だ。演技力うんぬんではない。彼女が演じる役の、ほぼ「紅一点」的な立ち位置がめちゃくちゃ気になる。

つぶれかけた老舗足袋屋がランニングシューズの開発を始めて、有名選手の契約を勝ち取るも、大手シューズメーカーからさまざまな嫌がらせを受ける。唯一無二の素材製造機もぶっ壊れちゃうし。それでも負けない足袋屋の男たち、ってのが主な内容なんだけど、私はあまり好きじゃないから解説に熱が入らないことをお許しください。

足袋屋社長の役所広司、その息子の山崎賢人(註:崎は「たつさき」が正式表記)、老番頭の志賀廣太郎、素材提供から関わり、足袋屋を支えていく寺尾聰。骨格は男所帯なのだが、今回はおばちゃんたち「縫製チーム」が縁の下の力持ちとして登場する。

そのチームリーダーが阿川佐和子である。もちろんチームリーダーだから、足袋屋の一挙手一投足に関わってくるのは当然のこと。でも、足袋屋の飲み会、男たちの意見交換の場などで紅一点の状況が非常に多い。

紅一点というポジションが似合う人

ものすごく適役だと思う。テレビ番組でも、男所帯でひとりだけ、ちょこんと座っているイメージ。オンナの感覚でモノを言うと、男社会では必ずはじかれる。でも、阿川はちょこんと健在。権力におもねらないように見えて、実はうまく核心をかわし、従順なように見せるという特異な立ち位置を獲得しているような気がする。

たとえ茶化したとしても、本質ではない部分なので、茶化された方はイヤな気分にならない。むしろ話をじっくり聞いてくれたような感覚になる。本当は右から左へ受け流すのが上手なのだと思う。

ドラマの中では、元気なおばちゃんとして男たちの背中を押す役どころだ。自分の意見をがっつりぶつけそうな縫製課ナンバー2的ポジションの春やすこや、時空を超えた理論で周囲を困らせそうな縫製課最高齢・正司照枝は、重要な場所にいない。女たちの意見をまとめる代表者然として、阿川が存在する。
   
「陸王」を観ていて、なんだか腑に落ちたことがある。熱い男ドラマには、意見してくる女はいらないんだもんね。優しく、ときには厳しく、でも基本的には歯向かわずに支えてほしいだけなんだよな。ラグビーとかサッカーなど、人気の高い部活のマネージャーみたいな感じ

共通言語のない男社会で感じるツラさ

紅一点ドラマは刑事モノなどでよく目にする。でも、だいたいが専門職か特殊技能所持者、男勝りか変わり者である。

そもそも、女性警察官は全体の9.3%と、驚くほど少ないので、紅一点になること自体、当然というか、デフォルトなのかもしれない。

職場で、望んだわけでもないのに仕方なく紅一点になってしまい、苦労がたえない人もいるだろう。

「女だから」と気遣いするフリして、実は軽んじたり、蔑んだり、小ばかにする輩も多い。悔しい思いをしながら、歯を食いしばっている女性を何人か知っている。男社会で周囲との共通言語がない。理詰めで話をしても「これだから女は……」と、逆に感情的だと決めつけられる。

こちとら捨てたつもりは毛頭ないのに、「あいつは仕事のためにオンナ捨てた」なんて陰口叩かれたりしてね。

しかも、そういう話をできる女が周囲にいない。違う部署の女性に話しても、「紅一点なんてうらやまし~」とお門違いのことを言われたり、「しょうがないよ、男社会なんだから」と共闘してくれる気がさらさらなかったりしてね。

孤独必至の環境はさぞやツライだろうなあと思う。考えてみたら、紅一点、男の中にポツンと女ひとりなんて絶対イヤだな。女だらけのほうが絶対楽しいし、建設的な意見も出る。

「紅一点」に舌打ちするか、ほくそえむか

しかしだな、「紅一点を自ら望む」「紅一点でなきゃイヤ」という女も、確実にいると思う。自分が紅一点になるようあえて仕向けたり、他に女が入ることをよしとせず、目に見えないバリアのようなものを張ったりしてね。

紅一点というよりも、自分がコミュニティのお姫様でいたい「姫体質」とも言える。

姫体質の特徴としては、女友達が極端に少ない。利益追求で繋がっているだけの人材はいても、自分の意見や心の暗部、体の恥部も含めて解放できるような親友はいない。

たまに、自分よりも何かしら劣っている女を加えようとするが、それは自分を目立たせて際立たせるためのダシだったりもする。この「あ、今日のあたし、ダシだな」感を味わったことがある女性も少なくないはず。

姫体質には、達観した仙人のように枯淡の境地にいる女友達がまれに付き合ってくれることがあるかもしれない。でも、この仙人からは友達と思われていない可能性大だ。
  
紅一点を好む女は、いろいろと覚悟が必要だ。決して自己主張せず、反論や意見をいわず、おかしいと思ったことにも口をつぐみ、「さすがです」「知らなかったー」「すごーい」「センスいい!」「そうなんだー」を繰り返しておけば、紅一点の立ち位置は安泰である。

男社会になじむのは肩書優先の人

紅一点でも何の違和感も覚えず、問題にならない人はどんな女性か。経歴や肩書で闘える人ではないかとひそかに思っている。

難関有名国立大学卒とか、アメリカのなんちゃら大学留学とか、ナントカ委員会の評議員やってますとか、華麗なる経歴や肩書を持っていて、しかもそれがその人の自慢の種である人だ。自慢の種というのがポイントね。

自己紹介するときに、学歴や経歴、自分の肩書や地位から口にする人は、そういうものにすがっていて、しかもこだわっているとわかる。そして、それは肩書や地位にこだわる男性たちに一目置かせるための武器でもある。男社会で生き抜くために、郷に入れば郷に従う戦術なのだ。

また、有名人や権力者と知り合いであることを自慢気に話したりする。その時点で、「うわぁ、この人、いかにも男子って感じだなぁ」と思う。イカダンとでも呼んでおこう。

男社会にいるうちに、男の皮をかぶってしまうのだろう。イカダンは紅一点でもほうっておいて大丈夫。たくましく生き延びていくし、男友達といるほうが気が楽なのだから。

ただまあ、男女比の偏った職場やコミュニティはあまり居心地がよくなさそうな気もするが。

さして興味のなかった「陸王」から、ここまで紅一点について考えることになるとは。阿川佐和子に感謝である。でも、私は春やすこや正司照枝を目指していきたいな。

紅一点ドラマを観たい人には…

『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系・2017年)
出演:小栗旬、西島秀俊、野間口徹、田中哲司、新木優子

『緊急取調室』(テレビ朝日系・2014年・2017年)
出演:天海祐希、大杉漣、でんでん、小日向文世、田中哲司、鈴木浩介、大倉孝二

『刑事7人』(テレビ朝日系・2015年・2016年・2017年)
出演:東山紀之、吉田鋼太郎、髙嶋政広、塚本高史、片岡愛之助、倉科カナ、北大路欣也

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