東京移住女子物語 第4回

田舎は“人生の楽園”じゃない それでも私が地方移住に惹かれるワケ

田舎は“人生の楽園”じゃない それでも私が地方移住に惹かれるワケ

地方での田舎暮らしと聞いて、皆さんはどんなイメージを持つだろう?

住んでみると、「癒し」とか「人生の楽園」とかそんなに甘いものではないぞ、とも思う。人間関係が重視されるし、人付き合いは濃厚で、いい意味で周囲から常に「見られている」という緊張感もある。

東京時代は「誰も見てる人がいない」し、「何も考えなくても」生きていけたから。

田舎暮らし向きは、柔らかくタフな人

移住女子4-②r

突然だが、移住して2年目の私が思う、地方での田舎暮らしに向いている人はこんな人だ。

・自分から知らない人に笑顔で挨拶ができる
・万一、挨拶に気づかれずスルーされてしまっても、へこたれない
・人付き合いが苦手でない
・臨機応変に対応する柔軟性
・自分のやり方に固執せず、地域のやり方を尊重できる
・最後は「どうにかなるさ」精神

田舎暮らしにはある程度、頭の柔らかさと、精神的なタフさ、プラス、人間性が求められるのかな、と思う。もちろん、風景は牧歌的で、山々は神々しいほど美しい。けれど、実際に暮らしてみると、「癒し」とはちょっと違う気もする。

田舎、都会、それぞれの違いを感じつつ、それぞれのよさを認めたうえで、今、私は地方の、田舎での暮らしを選択している。

移住する前のこと。

私が立山町の地域おこし協力隊として富山に行くことを知った同じ立山町出身、東京在住の友人と初対面した。場所は、東京・虎ノ門にあるハイアット系の高級ホテル「アンダーズ東京」。

1階にある優雅なカフェでお茶をしながら、立山町のこと、富山のことについていろいろと教えてくれた。その友人は、私が「地域の活性化に貢献したい」という思いに共感して、応援してくれていた。

その友人が私に、一つこんなアドバイスをした。

「田舎で、何か行動を起こす時、政治的な動きが必要になるから注意して」と。

「政治的な動き?」。

正直、その時の私にはピンとこなかったが、友人いわく、「政治的な動き=事前の根回し」とのこと。とにかく、地方で何かやろうとする時、都会とは勝手が異なってくるのだな、ということだけはわかった。

イベントを企画して、わかったことは

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実際にその意味がわかったのは、移住して、自分が借りている家を使ってイベントを企画しようと思った時のこと。

都会と違い、地方では娯楽そのものが少ないため、自分たちで面白いイベントを企画して開催するケースも多い。そのイベント告知にはFB(フェイスブック)がフル活用されている。

東京よりも、FBをしている人が圧倒的に多いし、日頃の情報収集にFBは欠かせない。立山町に来る前、町長とも、FBで“お友達”になった。とにかくFBの活用され方、FB人口が圧倒的に多いのに驚いた。

初めてイベントを企画しようと考えた時、「移住・定住の促進」というキーワードに加え、「文化」をからめて考えることにした。

音楽、文学、歴史、アート、食。カフェだって一つの文化だ。

都会でも、地方でも、人の心や生活を豊かにするのが「文化」であり、東京ほどさまざまなイベントが氾濫していない地方にこそ、そうした文化的な催しは求められていると感じたから。

“政治的な動き”の正体

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そんな思いから初めて開催したのが、昨年8月14日の「夏野菜を使った料理作り&移住おしゃべり会」だった。

お盆の時期なら、富山県や立山町出身の、Uターン希望者も帰省しているので、イベントに参加しやすいと考えた。お料理会に使う夏野菜は、立山町内の知り合いの農家さんにおすそ分けしてもらった。

結果的に、地元住民を含め、Iターン、Uターン希望者ら11人が集まってくれ、北日本新聞や富山新聞も記事として取り上げてくれたイベントになった。

イベントを行うことが決まったら、まず、町役場の担当者にご相談を。次に、自分の住む村の区長さん(地区ごとに区長さんといって、エリアを取りまとめる「長」のような方がいらっしゃる)にご挨拶がてら、イベントの説明をしに行った。

大事な関係者には、しっかりと筋を通しておく。

何かやる時に周囲から「聞いてない。知らない」と言われるのが一番、マズいのだ。その伝える順番も間違えないように。そして新聞社へプレスリリースを送ることも大事な根回しの一つ。

これが、地元出身の友人から教わった「政治的な動き」の一例だ。

富山には、まだまだお宝が眠ってる

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東京時代は、「自分で何かを企画して人を集める」ということをしなかったし、新聞社にプレスリリースを作って取材のお願いをするのも初めての体験だった。

かつては、新聞社に日々、送られてくる膨大な数のリリースに目を通すのが仕事だったのに、今は立場が逆転している。そして、こんな根回し一つとっても、私には新鮮で、エキサイティングに映るのだ。

今、自分と同じように富山にIターンしてきた仲間たちと富山の魅力について語り合う機会も多い。

そういう場でもれなく話題に出るのが、「日本のいろんな地方を旅してきたけれど、やっぱり最終的に落ち着くのは富山だよね。最後、戻るのは富山だよね」という言葉。

県外の人からは「日本の秘境」など、いろいろな言われ方をする富山。たくさんの、富めるものがあふれている富山。素材はいいのに、情報発信が下手と言われる富山。

そんな富山だからこそ、私にはとても魅力的に映っているふしがある。まだまだ、発掘して情報発信するべき、お宝がたくさん眠っている場所だから。

撮影:松田秀明

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