『余命10年』を手掛けた藤井道人監督が描く、幻想的で美しくも閉鎖的な村を舞台に、同調圧力や格差社会、貧困など現代社会が抱える問題を浮かび上がらせた映画『ヴィレッジ』が4月21日(金)に公開されました。
俳優の横浜流星さん演じる、父親が起こした事件、そして母親が抱えた借金の支払いに追われながら村のゴミの最終処分場で働く青年・片山優。人生の選択肢などはなく、希望のない日々を送る優の前に幼なじみ・美咲が現れたことで優の人生が動き出す……というストーリー。
血縁や地縁に縛られた村から逃げるように上京したものの、都会での生活に敗れて村に戻ってきた美咲を演じた黒木華(くろき・はる)さんにお話を伺いました。前後編。
プレッシャーはあえて「気にしない」
——黒木さんと言えば、3月に最終回を迎えたドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)の玲奈ちゃん役も話題になりました。映画やドラマ、舞台など幅広くご活躍されていて、活躍すればするほど周囲からの期待も大きくなるのかなと想像しますが、黒木さん自身はプレッシャーを感じることはありますか?
黒木華さん(以下、黒木):あまりないですね(笑)。プレッシャーって、期待をかけられてると思うから発生すると思うんです。私自身は毎回、やるべきことは同じといいいますか、役を演じることが一番なので、そういうことはあまり考えないようにしているのかもしれません。
——新しい仕事や現場でもあまり緊張しないですか?
黒木:むしろ楽しみのほうが強いかもしれません。新しい環境や新しい場所が好きなので、結構ワクワクしながらやっています。
——その場を楽しむ工夫などはしているのでしょうか?
黒木:楽しむ工夫……。一つ挙げるとすれば、緊張しないようにすることでしょうか。無駄に考えすぎない。緊張すると空回りしてしまってうまくいかないことのほうが多かったですね。
——「期待」というお話がありましたが、今回黒木さんが演じられた美咲も周囲からの期待に応えすぎようとして疲れてしまったのかなと思いました。
黒木:私は「期待はしないようにしよう」といつも思っています。関係性が近くなればなるほどいつの間にか期待してしまいますが、相手は“他者”だし、育ってきた環境も性格も違うんですよね。勝手に期待して勝手に疲れているだけなので、他人に対しては期待しないようにしようと考えています。
あえてルールもルーティンも作らない
——黒木さんの仕事ルールはありますか?
黒木:ルールは作らないようにしています。ルールを作ってしまうとそれが守れなかったときに「ワーッ」となってしまうから。だからルーティンも作らないし、毎日これをやるなど決まりはないですね。やっぱりその日その日で気分も変わるから。そのときどきの自分の気持ちを優先したほうが楽だと気づいたので、ルールは作らないようにしています。
——それは昔からそうなのでしょうか?
黒木:昔からです。決めたことをやるのが苦手で(笑)。旅行もそうだし、友達とも「明日遊ぼう」とその日の気分によって決めるほうが楽です。計画性があることはすばらしいと思うし、仕事は計画性を持ってやろうと思うのですが、執拗(しつよう)に考え過ぎちゃうと自分にとってはよくないと気づいたのでそうしています。
——黒木さんと同世代の読者も多いのですが「つい他人と比べてしまって落ち込む」という声も少なくないです。
黒木:比べてしまいますよね……。だって、周りが勝手に比べるから。俳優という仕事も表に出る仕事なので、比べられたり、容姿について言われたりすることもあります。だから、私自身は身近にいる人たちの声や意見は聞くけれど、それ以外のことについてはあまり見ないようにしています。
「期待」の話もそうですが、気にしないのが一番だし、それでも気になっちゃうのでしょうが、私の場合は「気にしない」と決めて、意識して、本当に気にしないようにしています。
——自分の心を無駄にかき回されないようにするというか、反応しないようにするというのも大事ですね。
黒木:そうですね。あとは、自分が思っているより人って他人のことを見てないんですよね。それは親に言われたことですが、確かにみんな自分のことで精一杯だし、それもそうだなと納得してからはちょっと楽になりました。
■映画情報
『ヴィレッジ』
監督:藤井道人
出演:横浜流星 黒木華 一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗/杉本哲太 西田尚美 木野花/中村獅童 古田新太
4月21日(金)全国公開。
配給:KADOKAWA/スターサンズ
(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)