口臭、口内炎、むし歯、歯周病、またそれらの原因につながる口内のトラブルのことを「口バテ」と呼び、そのメカニズムやセルフケアについて提唱する歯学博士の照山裕子医師に、詳しいお話しを連載で尋ねています。
第1回では口バテの状態や原因、口臭のセルフチェック法、第2回ではガムよりグミの方が唾(だ)液の分泌を促すという最新データの紹介や、唾液を促すマッサージ法、第3回では歯垢(しこう)の元となる食べかすを洗い流す「毒出しうがい」について聞きました。今回は、口臭の原因にもなるという「舌苔(ぜったい)」について尋ねます。

照山裕子医師
口臭の発生源のほとんどは舌苔
——舌苔とは舌の上に付着する白や黄色っぽい汚れのことですね。べたっと付いているときと、そうでもないとき、色合いが違うときがあります。原因は何なのでしょうか。
照山医師:舌の表面に付着する汚れを、舌に生える苔に見立てて、舌苔と呼んでいます。舌の表面にはざらざらとした突起があり、これを舌乳頭(ぜつにゅうとう)といいます。この部分に、食べかすや細菌、口内のはがれた粘膜、唾液の成分などがたまって付着し、蓄積するとにおいを発するようになります。これは、歯のまわりに付着する「歯垢(しこう)」と同じもので、「バイオフィルム」ともいいます。
——舌苔がたまって口臭も発するようになることはイメージができます。舌苔と口臭はどう関係するのでしょうか。
照山医師:お話ししてきた「口バテ」によって唾液の分泌が減少していると、口の中の洗浄や殺菌が十分に行われないため、舌苔がたまりやすくなります。
しかし、「口臭の原因が舌にある」ということはあまり知られていません。歯のケアを十分に行っているという人でも、舌の状態を日常的に気にしている人は少ないのではないでしょうか。舌苔をセルフケアすることで口臭の改善が可能なので取り組んでみてください。
舌苔が付きやすいのはどんなとき?
——日ごろ、舌苔がべたっと付いているときとそうでないときがあります。付着しやすいのはどういうときですか。
照山医師:おもに次のような要因があります。口内の清潔度や、唾液が十分に分泌されているかどうかがポイントです。
・口をあまり動かさずに食事をしている
・軟らかいものばかりを食べている
・口を開けていることが多くて口内が乾燥しているとき(口呼吸になっている)
・体調が悪いときや、疲労、睡眠不足、ストレスが強いとき
・全身疾患(糖尿病など)の副症状、および薬剤の副作用など
思いあたりませんか。これらは舌苔の原因になるわけです。
鏡で舌をセルフチェックするポイント
——そのようなとき、舌苔をチェックするコツはありますか。
照山医師:歯磨きのときに鏡の前で舌を出して、舌の色に注目しましょう。舌の表面が全体にピンク色、薄めのピンク色の場合は健康的でにおいもしない状態でしょう。一方で、舌苔が薄い黄色、厚めの白、茶褐色や黒ずんでいる場合は口臭を発している状態で、体調不良のケースもあります。
色が判断しにくい場合は、少し水で濡らしたガーゼ(不織布か布製で毛羽立たないもの)で舌の表面をそっとぬぐい、舌苔の付着の様子やにおいを確認してください。毎日舌の状態を見ておくと、変化に気付きやすいでしょう。
歯ブラシ、舌ブラシ、ガーゼで舌を磨こう
——舌苔はどういうふうにケアすればいいでしょうか。
照山医師:お話ししたように、舌苔は、食べかすや細菌などが蓄積したものがたまって口臭の原因となるため、取り除きましょう。口をゆすぐだけではしっかりと取り除くことができないため、舌を磨くケアをする必要があります。
歯ブラシ、舌ブラシ、また舌苔チェックのときに伝えたように、ガーゼを使って舌の表面を清掃します。
鏡を見ながら行いましょう。舌を前方に出して、苦しくない程度に舌の表面の奥から前に向かって一方向に3回ほど、ブラシなどでそっと磨きます。汚れを浮かせるように、指でくるくるとなでるのもいいでしょう。ただし、舌の粘膜は繊細で傷が付きやすいため、決して強くこすってはいけません。
鏡を見て舌の色が気になったときに行いましょう。
聞き手によるまとめ
舌苔の正体は食べかすや細菌が付着した汚れであり、口臭の原因になるということです。さっそくに舌ブラシやガーゼで舌磨きをしてみたところ、予想以上に爽快感を覚え、唾液の量が増えたように感じました。継続して実践していきたいものです。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)