50代からの女性の“よりよく生きる”を応援する雑誌『ハルメク』を発行するハルメクホールディングス。このたび、社内シンクタンクの「生きかた上手研究所」が、1年間のさまざまな調査の中で見いだしたシニアのトレンド「2022-2023シニアトレンド」を発表。12月7日に都内で発表会が行われました。

梅津さん
「生きかた上手研究所」は、「思い込みや想像で読者の生活を決めつけない」ことを目指し、2014年に発足されたシニアの調査・分析を行い、主にシニア女性のインサイトを発掘する社内シンクタンクです。
「生きかた上手研究所」所長の梅津順江さんは、シニアのトレンドについて「Z世代や現役世代と違い、シニア世代のトレンドは息が長く、これまでの流れを汲みながら緩やかにブームが訪れる点が特徴」だと話します。
「生きかた上手研究所」では、時事性と世代らしさを踏まえて、6つのシニアトレンドを厳選。社会がめまぐるしく変わる中、日本のボリュームゾーンであるシニア世代はどんなふうに過ごし、そしてどう変わっていくのでしょうか。
発表された6つのトレンドと梅津さんのコメントを紹介します。
トレンド1:スマ活シニア

ハルメクでは、スマホの使い方や注意点なども特集
昨年、シニアのスマートフォン保有率が90%を超えたことをうけ、昨年「スマートシニア元年」と定義しました。今年はさらに一歩進み、スマホを中心にデジタルを賢く活用する人が増加。動画視聴や動画撮影、SNS、決済、ポイ活など、スマホを楽しくお得に活用する人が増えてきています。
来年は、スマートウォッチや音声サービスに注目が集まりそうだと予想。センサリング技術で自分の体の状態を見える化できるムーブメントが、シニアにも訪れることでしょう。また、音声入力や、オーディオブックの利用も進み、大きな変化が起こっていくと予想しています。
トレンド2:推し活で若返り
推し活は、「若者がお金と時間を費やすもの」と思っている人も多いのではないでしょうか? 実は、50歳以上でも大いに盛り上がっています。
生きかた上手研究所が2022年6月に実施した調査によると、推しがいるシニア女性は35.2%でした。そのうち、推しにお金を使っているシニア女性は約7割。年間で平均9万円を費やしていました。
推しの対象は様々で、身近なペットや孫から、スポーツ選手、芸能人、ミュージシャンなどかなり広範囲にわたります。
今年注目したのは、推しができてからの変化。「新しい目標ができた」「夢ができた」「動画サイトを見るようになった」など、学びやデジタルスキル向上のきっかけになっています。
また、「推しがいることでときめきが生じて若返った」「病が快方に向かった」といった意見もあり、美容や健康を保つ上でもとても良い効用をもたらしているようです。
もう年だからと、つい諦めがちになるシニア世代の幸せに繋がるきっかけとして、2023年も推し活は広がりを見せていくであろうと私たちは考えています。
トレンド3:とっくにSDGs
2018年頃から注目が集まり始めたSDGs。物価高の影響による生活防衛意識もその一因でしょう。一方で、50代から70代は、食材を使い切ったり、必要な分のみ買ったり、物を大切に使ったりする生活習慣を、とっくの前から持っていました。
シニア世代は今後も、SDGs生活を賢く丁寧に営むオピニオンリーダーとして、他世代に対して影響を与えていくものと見ています。
トレンド4:コンパクト終活

ハルメク2023年1月号の「安心シート」
シニア世代には「終活はまだまだ先のこと」「まだ気持ちが進まない……」と、終活を後回しにする傾向があります。
このように、先延ばしにしがちな終活をミニマム化したのが今年の動き。例えば、エンディングノートではなく1枚のシートに書くだけ。また、いつから施設に入るか決めるだけ。今やるべきことを前向きに絞ると、終活にも楽に取り組むことができ、身の回りも気持ちもすっきりします。
自分のお葬式の準備も同じです。コロナによって家族葬、1日葬が加速しています。地域独自の伝統や葬儀形式をガラリと変えるのはなかなか勇気のいること。しかし、身内だけでゆっくり見送ってほしいと決めると、しがらみから解放されます。
トレンド5:AGEメイク
AGEと書いて「アゲ」と読みます。読み方の通り「気持ちが上がる」と「年齢=エイジ(age)」の2つの意味を掛け合わせた造語です。
感染症対策でまだ完全にマスクは取れませんが、シニア女性のあいだでも「華やかにメイクしておしゃれしたい」というお出かけマインドが高まっていることを肌で感じた1年でした。
ハルメクグループでは通販事業を展開しており、昨年と比べ、ベースメイクは112%、ポイントメイクは117%と絶好調。特に、ポイントメイクの伸長が目立ちます。シニア女性は、他者だけでなく、自分の気持ちを盛り上げるきっかけとしてメイクを活用しているようです。
2023年も外出意向が高まることが予想されます。自分の気持ちを「AGE(アゲ)る」きっかけとして、世代に合ったメイクが求められていくでしょう。
トレンド6:素材丸ごとおやつ
シニア世代では、不足しがちなカルシウムや食物繊維がおいしく、かつ手軽に取れるということで、素材を丸ごと使ったおやつが静かなブームになっていました。2022年は、Z世代や現役世代のあいだで、シラスを丸ごと使ったおせんべいや、丸ごとしいたけチップスなど、素材を丸ごと使ったヘルシーおやつが人気を集めることに。
ハルメクグループでは、カルシウム系おやつ全体で前年比309%を売り上げました。今年ブレークしたかに見える「素材丸ごとおやつ」ですが、健康目的で食べていたシニアが先導していたといえるでしょう。
総括:賢く豊かに年齢を重ねる「ウェルエイジング」の時代へ
健康で幸福な状態を「ウェルビーイング」と言いますが、今、それに長寿社会を掛け合わせた「ウェルエイジング」という言葉が注目されています。
心と体、社会のつながりだけでなく、知識や経験、そしてデジタル活用によって、ウェルエイジングを実現できます。「年を取るのは悪くない」「スマートに年を重ねたい」というシニアが増えていけば、明るい社会が見えてくるでしょう。