家モチ女子は、お嫌いですか? 第5回

会社員だった私が4000万円の家を購入 ローンと覚悟の不思議なカンケイ

会社員だった私が4000万円の家を購入 ローンと覚悟の不思議なカンケイ

「「家モチ女子」は、お嫌いですか?」
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フツーに会社員をしていた女おひとり様が、40歳にして4000万円で都心に一軒家を建てた時、身に起きた最大の変化は「地に足がついたこと」。

前回、東京・豊島区に「10坪」の土地を見つけ、今回はいよいよその土地を購入することに。

「私、ホントに東京に土地を買っちゃうんだ〜」という相変わらずフワフワとした感覚のままサインしたものの、実際に4000万円の買い物をしてみると、何やら覚悟のようなものがムクムクと湧いてくる。それは、自由気ままなおひとり様人生で初めての経験だった——。

3階のロフト部分からの天窓の眺め。畳を敷いたスペースは普段、寝室として使っている。

3階のロフト部分からの天窓の眺め。畳を敷いたスペースは普段、寝室として使っている。

見学から購入までわずか3週間

2010年11月末、フワフワ宙に浮いた感覚のまま、私は「不動産購入申込書」にサインをしていた。とはいえ、この時点ではまだ購入決定ではない。審査も通っていないし、こちらからの購入条件もいくつか出し、それをクリアにする必要もあった。

ところが、そんなハードルもなんなく飛び越えて、話は短期間のうちに急激に進んでいった。今振り返ると、土地の見学から購入までわずか3週間ちょっとだ。

11月20日:土地の見学
11月29日:「不動産購入申込書」を提出
12月3日:銀行へ融資の相談
12月12日:「不動産売買契約」を交わす

「大金が動く時って、こんな感じなんだ」と、変に客観的に見ている自分もいるのだが、本で読んだ家づくり経験者の体験談にもよく書かれていた「あれよあれよという間に」「わけのわからないうちに」という表現がまさにピッタリのスピード感と当事者意識の低さだ。

実際には翌年の3月に「土地所有権移転登記」を済ませた後ということにはなるが、私はあっという間に地主になってしまった。たった10坪とはいえ、東京のど真ん中(かどうか不明だが)にある土地の地主に……。

巨額のローンを抱えたのだから少しは不安になるかと思いきや、なんとあんなにフワフワして現実感に乏しかった感覚がなくなった。急激に足が地に吸い寄せられ、すとんと地に足がついてしまったのだ。

たぶん“覚悟”の問題なのだと思う。大金をはたいて買ってしまった土地を見て、はじめて「都心に一戸建てを持つ」という実感が沸いてきたのだ。

塚本邸の入口。壁の色は落ち着いたブルーグレーで、下町にも不思議と馴染んでいる。

塚本邸の入口。壁の色は落ち着いたブルーグレーで、下町にも不思議と馴染んでいる。

「自分ひとりの生活くらい何とかなる」

土地代2000万円の借金を抱え、これから家を建てれば、さらに2000万円の借金が増える。

深く考えなくとも、私のような一般会社員(当時)にとって4000万円は大金である。でも、2000万円の土地を買ってしまったら、返済の心配よりも理想の家を建てるために、借りられるだけ融資をしてもらおうという思いのほうが強くなるのだから不思議だ。

これは「女ひとりで家を建てる」ことのプラス面でもあるのかもしれない。大金の動く買いものの場合、細かなお金の計算よりも勢いが肝心なこともある。

しかし、夫婦+子どもの家庭であれば、勢いで進んでしまうわけにはいかないだろう。食費や光熱費、子どもの養育費、保険などなど、ひとり者より圧倒的に支出は増えるし、夫婦共働きで2倍の収入があったとしても、支出は2倍では済まないからだ。

また、資金的にはなんとかなると思っても、パートナーが慎重だったり家を持ちたくないタイプだったりすれば、家を建てること以前にパートナーの説得が必要になる。思い通りにいかないストレスは相当だと思う。そういったさまざまなしがらみを考慮しているうちに、家を持つことを諦めてしまう人は多いのではないだろうか。

その点ひとり身はシンプルだ。収入はほぼ自分のために使え、支出部分は削ろうと思えばなんでも思い通りに削ることができる。子どもの教育費とは違い、自分につぎ込む教育費(習い事)なんて、いつでも打ち切ることができるのだ。

そんな環境だから、たとえ借金を抱えたとしても「自分ひとりの生活くらい何とかなる」と思えてしまうのだ。すべて自分で行動し、決断しなくてはならない状況は、時に不安だったり面倒だったりもするけれど、背負うものがない身軽さは、家を持つことにプラスに働く部分は結構あると思う。

自分の足で人生を歩いている

こうして私は東京のど真ん中にある、小さな小さな土地の“地主さま”に成り上がったけど、都心に自分の土地があるというのは、やはり不思議な気分だ。地に足がついた感覚があったものの、自分の家が建って、そこに住むという具体的なイメージまでは沸いてこない。

難航すると思っていた土地探しは、スタートしてから約2ヵ月というスピードで終了したけど、これから建築家さんとやりとりをし、家が建つまでに1年以上はかかるだろう。

家が建つまでの過程で、私は建築家さんをはじめ、いろいろな方々と知り合いになるのだが、そんな出会いも私の人生に大きな影響を与えることになる。

土地を買ったことで地に足がつき、家を建てたことで、今度は自分の足で人生を歩いているという実感を持てるようになるのだ。

(塚本佳子)

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「結婚して家庭を持つ自分をイメージできなくて……」30代まで散々自由気ままに生きてきたおひとり様が、アラフォーにして「都内に一軒家を建てる」と決意。無事に「7坪ハウス」が建つまでの悲喜こもごもを綴ります。

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