倍速視聴できない、恋の情景がある…満島ひかり&佐藤健で贈るNetflix『First Love 初恋』【前編】

倍速視聴できない、恋の情景がある…満島ひかり&佐藤健で贈るNetflix『First Love 初恋』【前編】

ドラマファンに朗報がある。Netflixが今秋より「いよいよ船出か」と生唾を飲み込むほど、日本ドラマ制作に力を入れ出した。2023年までめくるめく大作の配信が予定されている。その第一弾として11月24日(木)には、満島ひかり、佐藤健主演の『First Love 初恋』がスタートするのだ。

タイトルが示唆するとおり、こちらは純度の高いラブストーリーだ。全9話の長時間にわたる視聴に耐えられるだろうかと思いきや、とんでもない感動に脂肪を蓄えた私の全身が包まれて、大号泣。経過した時間の長さなんぞ、月の向こうに飛んで行った気がする。いち早く、この思いを届けられればと筆を取ることにした。「ここだけは後生だから……見て……!」という見どころを伝えていきたい。

あの日、あの時、あの場所で…自分が味わったかもしれない“初恋”

第一話から三話までのおおまかなあらすじはこうだ。

2018年。野口也英(のぐち・やえ/満島)はタクシー運転手として北海道で働いている。最近、恋心はどこかに忘れてしまっている。離れて暮らす息子の綴(つづる/荒木飛羽)と会うことが唯一の楽しみだ。也英は綴の父親と出会う以前に恋をしていた。相手は高校の同級生の並木晴道(なみき・はるみち/佐藤)だ。高校卒業後、航空学生から自衛隊員となった晴道。彼もまた、出身地である北海道に住み、セキュリティ会社で働いていた。也英と離れ離れになって、約20年がたつ。結婚を控えるパートナーがいながらも、晴道の心からどこか也英の姿が消えることはなかった。

あらすじを書いておいて何ではあるが『First Love 初恋』には、確固たる概略というのは存在しない気がする。也英と晴道のふたりがベースとなり、最終話に向かって進んでいくのだが、ふたりが出会って、離れて、別々に生きてからの20年間を何度も物語が行き来していく。ふたりがまだ出会う前、中学生時代のエピソードも流れてくる。時系列で進行をしない作品というのは、この世にはあまたと存在するけれど、やはり見づらさは存在してしまう。私のような理解力に乏しい人間からすると、録画視聴のうえで早送りと巻き戻し機能は必須。「あ、あれなんだっけ? どこまで行ったっけ??」となるのが関の山。お恥ずかしながら感動が摩耗してしまうことが多々ある。

ここから『First Love 初恋』を褒めちぎっていくが、こちらに関してはその見づらさが一切見当たらなかった。四十路近くなったふたりがいたと思ったら、八木莉可子が演じる、10代の也英が登場する。実にみずみずしい。その横には凡二(中尾明慶)と一緒に、AVを毎週ビデオテープでレンタルをする、やんちゃな晴道(木戸大聖)がいてほほえましい。なんだろう、これだけ回想劇が邪魔にならない理由は。

そう思ってクレジットを見ると、監督は映画『天使の恋』(2009年)の寒竹ゆり。ちょうど也英と晴道、そして宇多田ヒカルと同年代である。

伏線ではなく、パズルをはめていくようなストーリー展開

さて第一話から三話。ふたりが出会い、高校を卒業して遠距離恋愛をしていく様子が一部に描かれる。これがものすごく甘酸っぱい。制服でデートをしたり、当時大ヒットしていた『タイタニック』(1997年)を鑑賞に出かけたり……。ふたりの行く先々には、そこかしこに青春がダダ漏れしている。顔がぶつかったのではないかと心配するファーストキスに、苗字呼びから名前呼びへ。ただ誰かを好きだという気持ちは、これほどまでに中年を高揚させるのか。

実は私、小学生の頃から毎クール放送されるドラマをチェックすることが趣味である。たぶん、地上波放送のドラマは数千本以上観ているオタクだ。ただ最近のドラマときたら、なんだかおかしい。やたらに伏線回収を求められるような展開が多すぎる。私の理解力不足の問題もあるけれど、なんだかなあと頭をもたげていたような気がする。

そこへ登場した本作。至極簡単に説明をすると、ものすごく純度の高いラブストーリーなのである。青春期、月9に熱狂していた身分からすると「こういうのが観たかった!!」と、令和一番の嬌声をあげた。なので、これから視聴される皆さまも「わかる〜!」「そうだよね!」など、テレビに向かって盛大に話しかけることになると思うので、覚悟を決めて臨んでほしい。

それから本作はほぼ北海道中心に撮影が敢行されている。豪雪、緑の大草原、満開のライラック、映像の往来を示唆するような、旭川市の名所ロータリー。今すぐにエアチケットを取って、北海道に飛びたくなるほどのロケーション。私も現役の編集者なので、どうも背景をチェックする癖が抜けずに眺めていたけれど、相当な撮影とロケハンに時間を費やしたことがうかがえる。9月25日に開催されたNetflixの新作発表会『TUDUM(トゥドゥム)』で、主演の佐藤健が「去年(2021年)はずっと『First Love 初恋』でした」と言っていたこともうなずける。丁寧に、真綿を触るように優しく作品が作られているのだ。

これらを眺めているだけでも視聴の価値はある。昨今は、1.5倍速で動画を見ることが若者の主流らしい。Netflixの機能にもある。でも『First Love 初恋』に関しては、せめていったんだけでも倍速ボタンをタップせずに、そのままの映像を堪能してほしい。そこには情景だけではない、何かが待っている。

本コラムは中編へと続く。

Netflixシリーズ「First Love 初恋」は 2022年11月24 日(木)より独占配信。

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