「幸せ」という概念に興味を持った著者の堂原さんは、長年勤めた広告代理店を辞め「幸福国」の調査に乗り出します。世界一周23カ国、幸福国を調査して気づいたことをまとめた『脱!しあわせ迷子 世界の幸福国を旅して集めた幸せのヒント』(いろは出版)が2022年6月2日に出版されました。
世界と日本で異なる価値観や教育、政治、社会の違い、世界から見た日本……。さまざまな経験から気づいた「幸せ」のために必要なこととは——? 本書から抜粋した内容を2本掲載します。2本目は旅の最初の国、フィンランドで感じたこと。
好きなことを仕事にするのが当たり前
5年ぶりのフィンエアーに乗り込む。機内にはマリメッコのカトラリーやクッションが揃っていて、そのかわいさにテンションが上がった。
世界幸福度ランキング(国連)1位の常連国、フィンランドへ。
フィリピンへの語学留学の後、いったん日本へ帰国し、まずはこの地へ飛んだ。この地に降り立つのは2回目だ。
前回の訪問で「どうして幸せなの?」とフィンランドの人に聞きまくったとき、さまざまな解答があったものの、ほとんどの人が「教育がいいから」と言ったことが気になっていた。そのリサーチの続きもしたい。
到着した首都ヘルシンキの空港は以前と変わらず、人がまばらでゆるりとしていた。窓から見えるだだっ広い大地。視界を邪魔する建物はなく、一面が自然だ。空気はひんやりとして気持ちがいい。懐かしいなぁ……。
空港内にはストレッチできるジムのような部屋もあったが、相変わらずオシャレでハイセンス。この国は見るもの全てセンスがよく、その徹底ぶりに笑ってしまう。
そこからホームステイ先を目指した。
街から少し離れた自然豊かな場所で、途中で何度も迷いながらようやくホストの家へたどり着くことができた。家は全体が木でできていて、ロッジのように見える。落ち着くなあ……。
部屋の中は北欧家具でシンプルにまとめられており自然、静けさ、シンプル。私が好きなフィンランドがあった。
着いた翌日、さっそく「さあ、幸せの秘密を見つけるぞ ! 」とインタビューをしに街へ繰り出した。日本で事前に連絡をとっていた人たちと約束をした場所まで向かう。一人はフィンランド歴が長い日本人ジャーナリストの女性。気を効かせて、この国に住む日本人女性を何人か呼んでくれていた。
家は北欧家具に囲まれ、食器や食べ物までも全てフィンランド仕様。私は『かもめ食堂』みたいだ! などと思いながら女子会を満喫。楽しい……。
そんな中で、「この国に住んで驚いたことってありますか?」と聞いてみる。すると、ある女性がひょうひょうと話し始めたのだが、そこには驚くような事実があった。
「この国は、好きなことを仕事にするというのが、当たり前なんです。フィンランド人の夫と結婚して、この国で仕事を決めるとき、夫に“本当に何がやりたいか、よく考えなさい”と何度も言われたんです。私が日本で仕事を選ぶとき、世間体とか待遇とか、自分のレベルを考えて公務員を選んだので、え? いいの !? と、ちょっと驚きました。でも、毎日することだからと。そこではっとしました。ここでは好きなことができるんだ、やっていいんだって!」
その話を聞いたとき、私はちょっと鳥肌がたち、涙が出そうになった。
日本では、女性は結婚や子育てに縛られ、やりたいことができないのはまだまだ当たり前の感覚になっている。その呪縛から解き放たれる場所があることへの感動や「好きなことを貫く」が実践でき、その瞬間に喜びを感じている人が目の前に現れたからだ。
この国、やっぱり普通じゃない……!
「この国では専業主婦を選んだ場合でも子育てのための育児手当も出ますしね。え、いいの !? って思っちゃう。主婦という職業が認められている感覚が本当にありがたいです」
日本では悩み多き立場である女性が喜ぶ姿がこの国にはあった。そんな理想の社会が実際に存在することに私はゾクゾクした。