「素敵じゃないって思ってるかもしれないけど素敵だよ」田中麗奈が27歳の自分にかけたい言葉

「素敵じゃないって思ってるかもしれないけど素敵だよ」田中麗奈が27歳の自分にかけたい言葉

「みなさんもこれから10年たったら、必ず27歳になります。そのときに後悔することが、私なんかより一つでも少ないことを私は本気で願っています」

ある夏の日の教室で下着姿のグラビア写真を生徒にさらされてしまった教師が生徒たちに告げるシーンが印象的なドラマ、Huluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(萩原健太郎監督)がオンライン動画配信サービス「Hulu」で5月20日から全話独占配信中です。

『あなたに聴かせたい歌があるんだ』メインビジュアル(C)HJホールディングス

『ボクたちはみんな大人になれなかった』で知られる小説家・エッセイストの燃え殻さんによる書き下ろし原作で、成田凌さんが主演。17歳と27歳という年に人生の分岐点を迎えた5人の若者たちの夢と葛藤、後悔を描いた群像劇です。

冒頭の言葉のあと、キリンジの「エイリアンズ」を流す英語教師・望月かおりを演じた田中麗奈(たなか・れな)さんにお話を伺いました。

「主人公にならないような人たちが主人公になる物語」

——まずは脚本を読んだ感想をお聞かせください。

田中麗奈さん(以下、田中):このお話は望月かおりという教師にとってショッキングな出来事から始まり、そこに居合わせた生徒たちは大人になってもなおその出来事をどこかで引きずっています。

10年後の27歳は彼らにとって描いていた現実とは言えずもがいているのですが、その姿が繊細に描かれていてそこが非常に色気があるというか、面白い脚本だなと思いました。

普通のドラマだと主人公にならないような人たち、日の当たらない人たちが主人公というところもとても魅力を感じました。

——田中さんが演じられたかおりがすごく魅力的でした。マンガのかおりともまた違って、「ほんとに笑える、間が抜けた私の人生」とは言っているものの、エレベーターの扉に挟まれてしまうシーンなど、コミカルというか人間味があって引かれました。

田中:実は、エレベーターに挟まれるシーンは脚本には書かれてはいないのです。私の演じるかおりの“鈍くささ”が萩原監督の目に、コミカルに映ったらしく監督のアイデアで生まれたシーンです。「ちょっとやってみたいのですが」とその日に萩原監督から言われました。

なぜ「エイリアンズ」を流したのか? ノートに書きつづって見えたこと

——かおりを演じるにあたって意識したことはありますか?

田中:かおりが教室で生徒に向かって話した内容から彼女の生い立ちが少し垣間見えるんですよね。彼女が臨時教師になった理由や生い立ちから広げて彼女がどんな環境で育ったのか、家庭環境など想像しました。なぜ教師を目指したのか--。どんな暮らしをしてどんなことを考えて毎日学校に通っていたのかなど想像できることをノートに書いていました。そしてあの出来事からの10年間どう生きてきたのかなど。そうすることで描かれていない10年間が少しでも醸し出せれば良いなと思いました。

——演じる人物のプロフィールを書くというのは毎回やられているのですか?

田中:自分が演じる人物についてノートに書き込むというのはほぼ毎回やっていることかな。10代のときから実践しているやり方なんですけれど、今回はわりと時間がとれたのもあって、細かくいろいろ書き込んでいきました。

——具体的にはどんなことを書き込んでいったのでしょうか?

田中:彼女が音楽とどう付き合っていたのか? なぜあそこでキリンジを流したのか? あの瞬間に音楽に発想がつながる理由は何だろう? など疑問に思うことなども考え書いてみました。音楽で伝えようとする発想って音楽との関係性が近くなかったら浮かばないことだと思い、彼女もこれまで音楽で救われたり、メッセージを受け取ったりしてきたのかなと思いました。あのときエイリアンズを流したのは、彼女にとっては自然なことだったのだと思います。周りからしたらびっくりするし、だからこそ印象に残ったと思うのですが、彼女の心の訴えの表現の一つだったんじゃないかと思いました。

27歳の自分にかけてあげたい言葉

——今回、27歳というのもテーマです。それぞれが分岐点を迎えていますが、田中さんにとって「あれは分岐点だったな」と思うエピソードはありますか?

田中:単純に振り返ると、17歳くらいのときかな。小さい頃から女優さんになりたいとずっと思っていました。今考えればそれほど長い時間ではないのですが、5歳くらいからずっと女優になりたいと思っていたので17歳くらいのときは「夢がかなわなかったな」って思ったんです。「これが自分なのかな」「これが自分の人生なのかな」と受け入れようとしていたときにオーディションの話がきて『がんばっていきまっしょい』という映画で女優デビューすることになったのですが……。今思えば、あれが分岐点だったのかなと思いますね。

——田中さんが27歳だった頃はどんなことを考えていましたか?

田中:燃え殻さんの本にも書いてあったのですが、結構グラグラしている時期で、それこそ分岐点なのかもしれないですね。確かに振り返ると27歳って30歳目前で、10代のときは30歳ってすごく大人だし完璧になっている気がするけれど、あと3年後に30歳というのが見えたときにまったくそんなところに立っていない自分自身に不安を覚えてしまうというか……。自分が歩いてきた道が本当にこれでよかったのかな? と振り返る時期だった気がするんですよね。健康的ではなく、少しネガティブにそう思っちゃっていた時期だった気がします。

今回ドラマを見ていて27歳でもがいてるみんなの姿が泣けてくるというか「あー、わかるなあ」と思いました。みんな自分のことを素敵じゃないって思っているかもしれないけれど、素敵だよって言ってあげたくなるんですよね。そういう意味では、あのときの私も素敵だったんじゃないかなって(笑)。でも、当時はそんなことにまったく気づかないし気づけない、そんな時期でしたね。

後悔も失敗もあるけれど…「何もないよりいい」

——田中さんもそうだったんですね。「後悔」というのもキーワードですが、「後悔」についてはどんなふうに考えていますか?

田中:後悔はたくさんあるんです。やっぱり、後悔のない人生を生きていこうなんて言うのは難しい。どんなに完璧に見える人でもやっぱりあるんじゃないかなって思います。それでも、なんとか後悔しない選択、後悔しない人生を求めてもがきますよね。「ああすればよかった」「こうすればよかった」って思えばキリがないし、でもそれが人生なのかなって。

このドラマのテーマの一つだと思うのですが、「後悔することがあるだけでも何もないよりはいい」っていう。失敗しないより、何もないよりよかったという、そういうのが人生なのかなって最近思ったりしています。

——ウートピは田中さんと同世代の人たちもたくさん読んでくださっているニュースサイトなのですが、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

田中:今回、私一人だけ教師役で、私たちの年代とは違う世代の人たちとご一緒しているのですが、華々しい活躍をされているみなさんとご一緒でき、とても刺激的でした。

自分のことはなかなか客観的に見れないけれど、過去の自分は客観的に見れますよね。『あなたに聴かせたい歌があるんだ」を見て、過去の自分やあの頃の自分に重ねて、密かに心につっかえたものに、あぁあれでよかったんだなとか、悩んでもがいてる姿も、かっこいいもんだな。などと、自由に何かを感じていただけたら。生きてるだけで素敵だということに触れさせてくれる作品です。是非ご覧になっていただきたいです。

Huluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』はHuluで全話独占配信中。全8話。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)

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