『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』インタビュー第2回

ジャッジせず、人の話を聞けますか? 清田隆之さんと語り合う

ジャッジせず、人の話を聞けますか? 清田隆之さんと語り合う

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さん。ウートピでの連載「結婚がわからない」を担当する安次富が、新刊『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社/以下、『一般男性』)についてインタビューを行いました。

「ジャッジをせずに人の話を聞くことが、だんだん難しくなってきました」という素直な悩みを打ち明け、話を聞くことについて語り合いました。今回は、普段のカジュアルなトーンを織り交ぜつつお届けします。全3回の第2回。

用意されていない言葉の中に感じる本音の面白さ

ウートピ編集部・安次富(以下、安次富):前回は、どういった人たちが「一般男性」として今回の本に取り上げられていて、どのように取材を進めてきたのかについて聞きました。ここからは、どのように本音に近づいていったのかを聞きたいです。用意された言葉と、本音ってどう見分けましたか?

清田隆之さん(以下、清田):取材に協力してくれた“一般男性”は、当然ながら「インタビューを受ける」という行為に慣れていないわけだよね。なので最初はみなさん戸惑っていたし、「ネタになるようなことをちゃんと話さなきゃ」というプレッシャーもあったようで、用意した回答を読みながら答えてくれたりしていた。語る機会がほとんどない話題だからか、「こんな話で大丈夫ですかね?」ってみなさんしきりに心配していたけど、話があちこちに飛びながら段々と熱を帯びていく感じがすごく面白くて。

安次富:取材で脱線すると、想定外の面白さが出てくることってありますよね。

清田:良くも悪くも整ったストーリーを超えて、偏りやほころびみたいなものを感じる部分にその人らしさが出てきたりする。たとえば、本書に登場するシングルファーザーの男性は、仕事も趣味も子育ても、あらゆるものが見事に「合理化」されていて驚いたんだけど、本人は途中までその自覚がなかった。

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こだわりが、ある種の哲学のように

安次富:へぇー。そのエピソードを聞かせてください。

清田:彼は就職した先でも、戦略的に人脈を構築することで売り上げを伸ばしてきた。恋人との人生設計も、「一人暮らしより二人で住むほうが効率いい」などの理由で結婚を選択していた。そういう話を聞くにつれ、何かと合理的な思考をする人なんだなってことをだんだん感じてきて。

安次富:子育てのプロセスでも生活のDXを推し進めていると書いてありますね。

清田:もちろんそうしなければ手が回らないという事情もあると思うんだけど、それ以上に「合理化」に対するこだわりがある種の哲学みたいになっていて。

掃除の手間を省くためできるだけモノを増やさないとか、祖父母の力を借りるために実家近くに引っ越しをするとか。あるいは親が二人いる家庭と比較するとコミュニケーションの総量が不足するから、友達とか地域コミュニティの力を借りてつながりを広くするとか。さらには子どもが「シングルファーザーの娘」という色眼鏡で見られないようにしたいという思いから、親同士のつながりを作るためにPTAの仕事を積極的に担ったり。

安次富:効率的かつ戦略的です。

清田:行動の一つひとつに狙いや理由が明確に存在していて、そこが個性的で面白いと伝えたら、「確かに、言われてみれば……」と言っていて。そうやって語り合いの中で自己理解を深めていくような瞬間も多々あって、個人的にはそこも興味深かったです。

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男性たちの“場当たり的”な傾向

清田:それぞれの個性でありながら、同時に「これは男性性的な問題かもしれない」と感じる部分もあった。たとえば「不妊治療で悩んでいる妻の気持ちをちゃんと受け止めたい」と話してくれた男性は、趣味のバスケにも熱心に参加するし、先輩たちの誘いにもフットワーク軽く乗る。就職した会社で長時間労働という問題があっても「いい人ばかりだから」と適応してしまうし、妻に不妊治療を持ちかけられれば真面目に応じる……という感じの人だったのね。でも、「なぜ妻が子どもをほしがるのか」など、根本的なことはあまり考えない側面があって。良く言えば「目の前のことに一生懸命」となるのかもしれないけど、意地悪な見方をすると「受動的に流されてるだけ」とも言えるかもしれない。

安次富:あー。仕事にしても、転職とか改善するとかいう選択肢がなかったり、先輩たちに誘われた遊びの場にいた“女性”と仲良くなることに抵抗がなかったりって様子も書いてありましたね。場当たり的な対応をしているというか。

清田:そういう話を聞くにつれ、似たタイプの男性が何人も思い浮かんだし、自分にもめっちゃ思い当たる節があったりで、これはもしかしたら“男の人っぽい”性質なのかもと感じたり。もちろん数時間のインタビューでその人のすべてがわかるわけないし、聞いた話もその人のごく一部に過ぎないと思う。だから安易に価値判断を下すことはできないけど、男性たちの言動に宿る善し悪しの両面性というか、様々な側面が浮かび上がってくる感じがあって個人的にも学び深かった。

安次富:たしかに。気持ちは複雑で割り切れないことも多いから、コミュニケーションを合理的にってしんどいときもありますよね。目の前の人に誠実っていうのも、裏を返せば目の前にいない人のことはいないも同然……。

相手の話を聞けているか問題

安次富:……は! つい、うがった見方を。とにかく、自分から見える景色と隣で他の人が見ている景色って違うかもよってことですね。

清田:自分は割と話を聞いて感情移入してしまうところがあるので……そういうところは、取材に同席してくれていた編集者のMさんが追加質問でフォローしてくれました。たとえばMさんが最後に「合理性がアダになった部分はありますか?」と聞いてくれたり。「yomyom」での連載時も担当のNさんがそうしてくれていて。複数人の視点が入ることでまた違ったものが見えるようになったと思う。

安次富:複数人の視点、大事ですね。ところで清田さん。私、悩みがありまして。

清田:唐突に(笑)。

安次富:取材をしていると「私は人の話をちゃんと聞けているのだろうか」と思うことがあるんですよね。年齢を重ねて人生のいろいろが見えるようになったからか、ジェンダー問題に関心を寄せるようになったからか、ウートピがコンセプト性の強い媒体だからか……。とにかく、話を聞きながら「それは性差別では?」「その発言は炎上しそうだからカットしよう」とついジャッジしてしまって。

清田:なるほど……。

安次富:自分が聞きたいように聞いているだけで、相手が本当に語りたいことを語らせていないんじゃないかって考えてしまうことがあるんです。清田さんも似たような瞬間がありませんか? 特に本書のような取材では。雑念、湧いてきませんでしたか?

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シャッターを閉じられてしまうかもという不安

清田:今回の企画って、男性たちにとってかなりのリスクがあると思うのね。身元がバレないように配慮しているとはいえ、かなりプライバシーに踏み込む企画だから。

安次富:確かに。どんなリスクを想定していましたか?

清田:当事者の男性たちを怒らせてしまう可能性もあるし、彼らが語った周辺の人を傷つけてしまうこともあり得るし……。事前準備や原稿確認を含め、慎重にコミュニケーションをとりながら進めてきた企画なので、基本的には「参加してくれただけでありがたい」という感謝が大きくて。

それから、かなり心の内側を話してもらうことになるから、安心して打ち明けてもらえるような空気を醸成することにも集中した。たとえばこちらが話の途中で「ん?」とか「うーん……」っていう反応を見せれば、即座にシャッターを閉じられてしまうかもという思いもあって、だから基本的には相づちを打ちながら傾聴し、ときに自分の話もしながら対話することを心がけてた。

安次富:やべーこと言ってんなと思うことはありませんでしたか?

清田:もちろん、賛同できない意見やツッコミを入れたい発言も正直あった。だけど、自分の中にも似たような考えがあったり、かつて同様のことを言ったりしていたなって思いも同時にわき起こってきて。だから基本的にジャッジはせず、「そういう気持ちになっちゃうのはどうしてなんでしょうね……」って一緒に語らっていったという感じでしょうか。

本音に宿っているものを漂白しない

安次富:炎上リスクとかも配慮しましたか?

清田:もちろん炎上リスクはできるだけ軽減したいけど……この企画の場合、配慮しすぎてしまうことで語りのリアリティが損なわれる側面もあって難しかった。「彼らが語ったことを自分(清田)が執筆して載せる」という構造になっているから、「批判が起こるかもしれないから表現を変えよう」ということをいくらでもできてしまう。もちろん身バレ防止のために固有名詞を変えたり、適度にフェイクを混ぜたりはしているけど、中心的なテーマであるジェンダー観の部分に万全の配慮を施してしまうのはどうなのかなって。

安次富:本の意味がなくなっちゃいますね。

清田:そうなのよ……。だからリスクはあったけど、重要な部分に関しては発言のエッセンスをなるべく残しました。

安次富:シングルファーザーの男性が元妻に対し、「やっぱり、水商売の家の娘だから……」って差別的な眼差しを語っている部分もありましたよね。そのまま載せたのはすごいなと思いました。編集者としての視点で。私だったら削除するか迷うかもって。

清田:ギョッとした部分は正直あったけど、そこには彼の強い感情が宿っていたことも確かで、こちらで勝手にそれを漂白してしまうのは違うかなと思って。

安次富:それぞれのエピソードの前に清田さんのコメントパートが入っていて、そこでうまくバランスが取れているなと感じました。肯定はしないけど、気持ちを理解することはできる。それでも相手の側に立つと、違う風景が見えていたかもしれない、みたいな。

清田:そう言ってもらえてひと安心……コメントに関しては入れるか入れないかとても悩んだ部分だったので。後出しジャンケン的にジャッジするようなことはしたくないけど、あまりに投げっぱなしなのも不親切だよなとも思い、自分事として受け止めたこと、あるいは個々のエピソードを通じて見えてきた男性性や社会構造の問題をコメントにまとめるというバランスを意識しました。

最終回は5月20日(金)公開予定です。
(取材・文:安次富陽子、撮影:面川雄大)

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