松居大悟×ジェーン・スー第3回・止

バディは欲しいけど家庭の役割を担うことには自信がない【ジェーン・スー×松居大悟】

バディは欲しいけど家庭の役割を担うことには自信がない【ジェーン・スー×松居大悟】

帯にもたすきにもならないけど、最高の柄なら私にとって最高

スー:次は何をやりたいですかって聞かれることが多いと思いますけど、私は本当に何も思いつかなくて。何かありますか。次はこういうものを撮りたいとか。

松居:やったことないことをやりたいですね。家族とかやりたいな。

スー:私小説『またね家族』(2020年刊行)の映像化はやらないの?

松居:大人が動いたらしますけど。

スー:松居さんがもう十分大人でしょう。

松居:持ちこんでダメだと言われたら、自分の家族が否定された気がしてしまうから。持ち込まれたらやりたいです。

スー:家族のことも少し話しましょうか。松居さんちもうちも、「お父さん役をやってくれなかったお父さん」が父親です。松居さんのところはもう亡くなっているし、うちは母親が亡くなってる。

これから自分が新しく家族をつくることについてどう思ってらっしゃいますか。結婚や子供を持つことに対しての意識は変わってきました?

松居:変わりましたね。それこそ兄貴が結婚して子供が生まれて。母親が甥っ子の面倒をみたりするのを目にしてかわいいし。そう思った時に、普通にしたいと思ったりします。

スー:以前は「女。それは怖い生き物」だったわけでしょう。

松居:それもありますけど、昔ほど怖い生き物とは思ってないかも。

スー:その変化は?

松居:ううーん。昔は尊敬しまくってて、尊敬という名の違うやつだったかもしれないですけど、今はリスペクトというより、自分に対しても自分以外の相手に対しても、期待しなくなったというか、諦めというか。

スー:「尊敬という名の違うやつ」だってよく気付けましたね。今はいい意味での諦めですね。

松居:そうそうそうです。そうすると肩の力が抜けていって。

スー:異性も自分と同じ人間である、異性の人間宣言が行われたということか。以前の対談では「自分より背の低い女の子で、一緒に考えていくと言いながら、実は俺のペースを乱さない女の子」がいいなんて言ってましたけど、それも変わった?

松居:変わりましたね。どういう相手がいいかって言われたらわからないですけど。シンプルに自分の家族や、それこそ劇団員と一緒にいるのが自然に想像できる人がいいのかな。

スー:松居さんには劇団があるからね。ある種擬似家族みたいで、だから心底寂しくならないかもしれない。家族を持とうとするための起爆剤がない。

松居:両親が成功してなかったというか、家族の成功体験がないから、正直「家族とはいいものだ」とは思ってないし。

スー:それは私もあります。自分の家族経験から言うと、結婚自体が憧れの対象ではない。バディは欲しいけど、家庭で役割を背負うことにまるで自信がない。

松居:そうですね。父親の役割をできると思えないですね。

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スー:私はもう諦めました。とにかく「おもしろ」に全部振り切っちゃう自分に観念した。おもしろいか、おもしろくないか、だけでしかいろいろ判断できない。いわゆる家庭人としての適切な資質というものがあったとして、そこが高い人を選ぶほうが家族を運営していく上ではうまくいくのかもしれないけど、私は「寸足らずかもしれないけど、この帯の柄、最高」みたいなのにどうしても惹(ひ)かれてしまう。

帯にも襷(たすき)にもならないけど、最高の柄なら私にとって最高。そういうところを矯正しなければと思った時期もあったけど、ダメでした。おもしろい人の「おもしろ」をかぶりつきで見たいんですよ、最前列で。だからいわゆる家族とか家庭というものは難しいだろうな。うまくやれると思えない。

自分が所属していた家族と自分の結婚観はリンクしてますね。想像力を鍛えることはできるけれど、基本的には知ってることしかできないから、私。新しいものを作るには現実社会で痛い思いをするしかない。結婚願望はあるんですか?

松居:あります。あります。それこそしたことないからやってみたいです。

スー:たしかに。「したことないから軸」で言うとしてみたいね。乗ったことないジェットコースターだもんね。

松居:そんな人は結婚したらダメかもしれないですけど。

スー:家族の最大公約数の利益を最優先して、個人の幸せより家族の幸せを優先する、そんな殊勝な心は、私にはない、私は自分が一番。だけど、自分が一番の二人が一緒になって、お互いのことをいいねって言い合えるバディがいる状態は憧れますね。

松居:ウンウン。自立し合って。

スー:バディだな、欲しいのは。「やばい、おもしろいことやってる、私もやろう」とか「あいつ、ちょっとつらそうだな。サポートしよう」みたいなバディ。

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【第1回】冴えてるか冴えてないかも自分で決めたい…映画『くれなずめ』で描いたもの
【第2回】「邪魔おじさん」「現場がいいおばさん」になるのが怖い

■映画情報
『くれなずめ』公開中
【監督・脚本】監督・脚本:松居大悟
【出演】成田 凌 若葉竜也 浜野謙太 藤原季節 目次立樹/飯豊まりえ 内田理央 小林喜日 都築拓紀(四千頭身)/城田 優 前田敦子/滝藤賢一 近藤芳正 岩松 了/高良健吾
【クレジット】 (C)2020「くれなずめ」製作委員会
【配給・宣伝】東京テアトル

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