映画『私をくいとめて』インタビュー・後編

みんな生まれながらの“おひとりさま” のん出演『私をくいとめて』で描きたかったもの

みんな生まれながらの“おひとりさま” のん出演『私をくいとめて』で描きたかったもの

30代、会社員。おひとりさまライフを満喫中。話し相手なら、脳内に生み出した「A」がいるから大丈夫。自分の世界の中で、傷つかない術(すべ)は心得ている――と聞いて、「え、私のこと?」と思った人も多いのでは? 

これは12月18日に公開される、映画『私をくいとめて』の主人公・みつ子のお話。綿矢りささんの同名小説を映画化しました。

みつ子の気ままな快適ライフも、年下の営業マンに恋をしたことで変化が……。うれしいやら困惑するやらのみつ子の姿が魅力的に描かれています。

「人は生まれながらに、おひとりさま」と力を込める大九明子(おおく・あきこ)監督に、初タッグとなったのんさんとの仕事や人との距離の取り方について伺いました。前後編。

『私をくいとめて』撮影の様子。大九明子監督(左)。

『私をくいとめて』撮影の様子。大九明子監督(左)。

「人間は生まれながらの“おひとりさま”。人といるには努力が必要」

——「おひとりさま」というと、恋愛“できなかった”人とか、コミュニケーション能力に問題ありとか、ちょっと残念な人のようにとらえる人もいます。「みんな恋愛したくて、誰かと一緒にいないと寂しい」という人がマジョリティとされているような気がします。だからこそ、みつ子が自虐的ではなく、本当におひとりさまライフを満喫して気持ちよさそうに過ごしている姿に共感する人は多いと思います。

大九明子監督(以下、大九):ひとりでいることが私自身もすごく好きなので、マジョリティとか考えたことすらなかったですが、ひとりでいて居心地がいい場所と悪い場所はあって、居心地のいい場所が増えればいいなとは思います。「いくつになったら家族を持って」みたいな外圧にも従う必要はないですよね。「おひとりさま」という言葉があることだし、おびえることなく、謳歌(おうか)すればいいと思います。

——なぜ、おびえてしまうのでしょうね?

大九:映画の中で、みつ子の先輩のノゾミさんに「人間なんて生まれながらの“おひとりさま”なんだから、人といるには努力が必要」とセリフで言ってもらったのですが、私は本当にそう思っているんです。実際、私もその努力ができないから、友達が少なくて、仕事関係の人に囲まれて生きているのですが(笑)。

「私をくいとめて」場面写真㈭

——分かります……。

大九:友達がいっぱいいる人って、オープンマインドで、努力して人のために尽くしていますよね。私はその努力がまったく足りていないゆえの「おひとりさま好き」。結婚している、していないや、ひとり暮らしだろうが家族と同居していようがあまり関係がなく、ひとりが何よりのびのびできる。「心のおひとりさま」は一生変わらない。

映画の中で、多田くん(林遣都さん)が初めてみつ子の部屋に来たとき、うれしいんだけど帰ってくれてホッとするみつ子の心情もすごくよく分かります。基本、みんな「生まれながらの“おひとりさま”」なんだろうなと思います。

本当はひとりが好き…頑張って“祭り”に参加している

——みつ子と多田くんは2人で一歩踏み出す決意をするわけですが、おひとりさま好きでもやはり、いろんな人とふれあい、最終的には誰かと出会う結末がいいと思いますか?

大九:やはり人はひとりでは生きていけないのだから努力は必要で、みつ子はその努力をどこかで怠ろうとしている人間だと思うんです。そんなみつ子の前に、試練のように次々いろんな人が現れる。フタをして見ないようにしていたものを正視しなければいけないときがくるということを、この映画では描きたかったのかもしれないです。

「私をくいとめて」場面写真㈫

——大九監督ご自身は、「人と出会うこと」や「人関わること」にどう向き合っていますか?

大九:“祭り”みたいなものですね(笑)。緊張するし、疲れるけど、やっぱり刺激も多いし、受け取るものも多い。だから頑張って祭りに参加して、疲れたら「ひとりにさせて」という感じです。

——“祭り”たいな非日常な感覚でもいいですよね。

大九:そうですね。仕事関係者にはわりと友達の多い人が多くて、「私ももっと頑張れば、いっぱい人が寄ってきてくれるような人になれるかもしれない」とは思います。みつ子が脳内のAに「ただいるだけで好かれる人になりたい」と言うシーンがあるのですが、あれが本当の最後の願望(笑)。「悲しい質問ですね」って、Aにツッコませましたけど(笑)。楽して生きる方法があればいいですけどね……。

他人との自分なりの距離の取り方が分かってくる

——人との距離の保ち方で心掛けていることはありますか?

大九:教えてほしいくらいです。用事がなければ、不用意に近づかない。真似しちゃダメですよ(笑)。でも、自分なりの距離の取り方が分かってくる。「こういう詰め方をすると傷つくから、最初から離れておこう」と、ちゃんと諦めがつくというか……。若い頃に比べて少しずつ楽になっているので、皆さんも楽になりますよ。

「私をくいとめて」場面写真㈮

■映画情報
『私をくいとめて』2020年12月18日(金)全国ロードショー
【原作】綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
【監督・脚本】大九明子
【出演】のん 林遣都 臼田あさ美 若林拓也 前野朋哉 山田真歩 片桐はいり 橋本愛
【クレジット】 (C)2020『私をくいとめて』製作委員会
【配給】日活

(聞き手:新田理恵)

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