好きなワインを自分で選べるようになりたいオトナ女子に向けてレクチャーを続けている「ウートピ・ワインラボ」、今回取り上げるのはニューヨーク・ワインです。「えっ!? ニューヨークでワインを造れるの!?」とびっくりしちゃいますが、実はニューヨークでもすんごいワインが生み出されているんです。
詳しい話は「ウートピ・ワインラボ」所長のワインジャーナリスト、浮田泰幸(うきた・やすゆき)さんに聞いてみましょう。
2016年にプロたちを唸らせたNYワイン
ごめんなさい! ウートピ・ワインラボ所長たる者として、たいへんお恥ずかしいのだけど、ニューヨークでこんなにおいしいワインが造られているなんて、知りませんでした。
昨年末、都内で開かれた国際的なワイン見本市〈ヴィネクスポ2016〉。世界のワインが集まったその会場で、プロフェッショナルたちの多くが「面白かったね」と口を揃えたのが今回初めて出展されたニューヨーク・ワインだった。
ニューヨークは──マンハッタンだけじゃなく、ロングアイランドやカナダ国境の地域まで含めたニューヨーク州のことだが──、アメリカ国内で3番目のワイン生産量を誇る。でも、それって最近のことでしょ? いえいえ、ワイン造りの歴史も古くて、アメリカ最古のワイナリーがあるのもニューヨーク州だ。
とはいえ、ニューヨーク・ワインの品質が飛躍的に向上したのは比較的最近で、21世紀に入ってからのこと。ここ15年ほどの間に州内で操業するワイナリーの数は約4倍に増えた(現在約400軒)。2013年、オバマ大統領が2期目の当選を決めると、就任式後の昼食会が開かれ、そこでニューヨーク・ワインの白・赤が振る舞われた。その4年前、最初の就任の時に採用されたのがカリフォルニア・ワインだったことを思うと、ニューヨーク・ワインがいかに急速に品質を高めたかが想像できる。
日本でも入手可能なニューヨーク・ワインを4本、テースティングしてみよう。
1.アンソニー・ロード リースリング・ドライ2015
柔らかな柑橘系の香りにマジョラムやコリアンダーを思わせるハーブ香が交じる。口の中ではホロリと甘く、ノスタルジックな気分にしてくれる。(3700円/税別)
2.ウォルファー・エステート ロゼ2015
白桃の上品な香りに青いプラムのクールなトーンが交じる。口の中では淡い果実を綺麗な酸が支えて、スレンダーで凛々しい印象。某アカデミー賞男優が箱買いしたとの噂も頷ける出来栄え。(3700円/税別)
3.サーモン・ラン ピノノワール2013
バラ、ヨード、ワイルドベリーの香り。どこか肉感的なトーンがある。口の中では果実というより花のリキュールのよう。時間と共にローリエやオリーブの風味が出て、肉料理を食べたくなる。(3500円/税別)
4.ベデル メルロー2013
最初に立ち上がるのは松脂を含む森林のトーン。時間と共に赤い果実が儚く香る。口の中ではスレンダーだが、きちんとしたテンションがあり、極めて上品。呑み下したあとの余韻にまで冷涼さが潜む。オバマ大統領の昼食会で振る舞われたのはこのワインの2009年物。(5400円/税別)
ニューヨーカーが磨きあげたスタイリッシュな味
ニューヨーク・ワインは、スタイリッシュでトレンドやテイストにうるさいニューヨーカーによって磨かれたと言っていいだろう。ニューヨーク・シティ*には14軒のアーバン・ワイナリーがあって州内その他から取り寄せたブドウを使って町中でワインを造っている。多くのアーバン・ワイナリーにはショップの他、レストランやワインバーが併設されている。所長・浮田も近いうちにニューヨークへ現地取材に出かけるつもりだ。摩天楼を見上げながら飲むニューヨーク・ワインはさぞや美味いだろうなぁ……。
1〜3は、GO-TO WINE(TEL:03-5770-2316)
4は、ワイン・イン・スタイル株式会社(TEL:03-5212-2271)
*ニューヨーク・シティ:ニューヨーク市(NYC)。マンハッタン、ブルックリン、クィーンズ、ブロンクス、スタッテンアイランドの5行政区からなる。