株式会社ジョイゾー・四宮琴絵さん 第1回

結婚するから仕事はそれほど…と思っていた彼女が「母・経営・複業」をこなす理由

結婚するから仕事はそれほど…と思っていた彼女が「母・経営・複業」をこなす理由

働きながら、子育てをするのはしんどい。仕事でイレギュラーなことが起こるのは日常茶飯事だし、子どもだって思う通りには動いてくれない。なぜか「この日だけはお願い!」って日に限って体調を崩すこともしょっちゅう——。

厚生労働省が2018年7月に発表した「国民生活基礎調査」など、複数の調査を元に読み解くと、国内のワーキングマザーの割合は7割を超えているとのこと。一方で、家事育児の負担が女性に集中しがちな日本。内閣府が発表した「男女共同参画白書(概要版) 平成30年版」によると、6歳未満の子どもを持つ夫婦のうち、女性が家事育児にかける時間は7時間34分なのに対し、男性は1時間23分という結果も出ています。

副業や勉強をしたいと思っても、自分の時間を持てるようになるのは一体いつなのか。今回ご紹介するのは、3人の子育てをしながら仕事に復帰し、夫と会社を経営しながら出身地・釧路の町おこしにも邁進する四宮琴絵(しのみや・ことえ)さんです。

全3回にわたってお届けするインタビューの第1回は、四宮さんのこれまでのキャリアについてお話を聞きました。

「女は料理上手なだけでいい」と元彼の言葉を間に受けて

——会社の経営をしながら、3人(中学2年生、小学5年生、1年生)の子育て。さらには出身地である北海道釧路市の地域おこしにも貢献している四宮さん。どうしてそんなに頑張れるんですか?

四宮琴絵さん(以下、四宮):自分としては「私、バリバリ頑張っている!」という気負いはないんです。むしろ、人に言われるまま流されてきたらこうなっていたという感じで。

——もともと、キャリアにおいて上昇志向ではなかった?

四宮:そうですね。そもそも「キャリア」よりも「料理上手な女」になりたかったんですよ。私は高校卒業後に、地元・釧路市の企業に事務として就職しました。そこを選んだのは当時の彼氏に「女は料理が上手ければいいんだ!」と言われ続けたから。周りも「女性は結婚するから、別に仕事に一生懸命にならなくてもいいよね」という空気だったし、そんなもんかなーという感じで、何の疑いもなく就職したんです。

——四宮さんは今年44歳になられますが、その「空気」というのは時代と釧路市という場所も関係していますか?

四宮:そうですね。それはあったと思います。

——そんな中でなぜ東京に?

四宮:それも一言で表すとやっぱり「流れ」。日本民謡の先生だった祖母に、ずっと民謡を習っていて、ある時カラオケの全道大会に出たんです。そこにたまたま東京の芸能事務所の社長が審査員として来ていて。

後日、私がいない時に実家に電話がかかってきて「お嬢さん、東京で歌手修行しませんか?」と。私というより母親が乗り気で「あんた、歌手になれるかもしれないから東京に行ったほうがいいよ!」と言われ、母がそこまで言うなら行こうかな、という感じで上京しました。

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私、年齢を偽ってまで歌手になりたい?

——そこから芸能活動は順調に?

四宮:まったくでした。私は歯並びが悪かったこともあって、まずは歯の矯正をしながら歌やダンスのレッスンをしようということになりました。歌うことは好きなのでレッスンも一生懸命やりましたが、当時すでに21歳。時代はSPEED*とか若い女性グループが活躍している頃。当然のように「年齢をごまかそう」という話になりました

* SPEEDのデビュー当時の平均年齢は13.5歳

——えー……。

四宮:そんな反応になりますよね(苦笑)。私も、「そこまでして歌手になりたいか?」と疑問を持つようになりました。また、グラビアの仕事を勧められたこともありましたが、「私、そういうタイプじゃないし」と思っているうちに、何の仕事も来ないままバイトとレッスンだけで2年が過ぎました。

そのうちインターネットで知り合った仲間たちとバンド活動を始めるのですが、親しくしていた友人に「音楽で食べていきたいの? 歌を歌えればいいの?」と迫られて、自分は歌うのが好きなだけで、歌手になりたいわけではなかったと初めて気づきました。そこで芸能活動は諦めることにしたんです。

いきなり現場へ

——その後はシステムエンジニア(SE)としてお仕事を始めるわけですが、これも流れで?

四宮:そうです。たまたま知り合いにIT企業の管理職の方がいて、最初は営業事務で入りました。ところがプログラミングのことなんてまったくわからないのに、いつの間にか現場に駆り出されるようになって……。

右も左も分からないので「何しに来たかわからないので教えてください!」という感じで仕事を覚えていきました。当時のその企業のビジネスモデルとして「人がそこにいること」が大事だったんですよね。ただ、その過程で、SEの仕事が段々おもしろくなってきたんです。

仕事って、出来ることが増えて、任される範囲も増えると、楽しくなりますよね。そうこうしているうちに、システム部の人から「若いうちはいいけど歳取ったら事務で雇ってもらえないから、技術を身に付けないと」と言われて、社内のテストを受けてシステム部に異動することになったんです。当時、事務からシステム部への異動は超異例でした。

——若いうちはいいけど……歳とったら……事務で雇ってもらえない……。

四宮:遠い目をしていますけど、大丈夫ですか?

——あ、すみません。そんなこと言われたら怒ってしまうなと思ったり、でも技術は大事だなと思ったりしていました。異動後は仕事の楽しさに目覚めて自分で舵取りを?

四宮:いや、今もその場その場で流されている感じはありますよ。自分から「これになってやるぞ!」というのは、今もあまりないです。でも、完全に流されっぱなしというより、流れに身を任せながら、最善なところを自分で選んで歩んでいる感じですね。今は夫が代表を務める株式会社ジョイゾーというシステム開発会社の取締役ですが、これも、夫が起業したから巡ってきた道とも言えます。

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流れに身を任せながら、最善を選ぶ

——ご結婚はいつされたんですか?

四宮:29歳のときです。夫とは当時の職場で知り合いました。仕事が楽しいなというときに妊娠がわかったので、ギリギリまで仕事をしてちょこっと産休を取ったらすぐに復帰しようと考えていたんです。それが産んでみたら10年専業主婦してました

——10年!

四宮:産んでみたら「育児ってめっちゃ大変だし、楽しい!」って思って。私は性格的に両方やろうとすると両方おろそかになる傾向があるので、しばらくは育児に集中しようと思ったんです。その間に2人目、3人目が生まれ、あっという間に10年が経っていました。

——また働こうと思ったきっかけは?

四宮:同居している義母が仕事を引退したからです。末の子が1歳になったときでした。「家に主婦が2人いてもねえ」ということで、私は近所の会社でパートとして働き始めました。その後、夫の会社の人手が足りなくなり、SEをしていた私に声がかかったんです。

——元SEとはいえ、動きのはやい業界です。不安もあったのでは?

四宮:そうですね。最初は現場に出るのが怖いと思っていましたが、なんとか慣れていき、SEとして実績も出して、去年から経営陣に加わりました。

——旦那さんの会社の取締役を務めながら、ご実家のある釧路の地域おこしにも関わっていると伺いました。

四宮:はい。専業主婦時代に、子どもたちをつれて釧路に戻ることが多くて。母親としての私の目には、すごくいい場所だと映ったんです。ちょっとした公園とか、古いけど意外と面白い動物園とか、何もない町だと思っていたけれど実は何でもある。

地方創生なんて大それたことがしたいわけじゃなく、釧路の良さを地元の人にも、東京の人にも知ってもらいたいと思うようになりました。その話を地元の知り合いにしたら、実際に活動している人たちとどんどんつながって、ならば一緒に活動しようと。会社の出張や釧路の活動を合わせると、月に1週間から10日は釧路に滞在しています。

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ちょっとしたことで「私、天才!?」と思う

——あまりの忙しさから、一人になりたくなるときはありませんか?

四宮:特にないんですよね。基本的に流れに乗って生きているので、あまりストレスを感じないのかもしれません。ただ目の前のことをやるだけです。私、たぶん物事を楽しむのが上手いんです。ちょっとした作業を完了しただけでも「私、天才!?」って思える(笑)。大変なことほど楽しめちゃう。楽しいから頑張れるんです。

——挫折経験とか、ないんですか?

四宮:たとえば、歌手になれなかったのも、挫折といえば挫折ですよね。でも、あのとき年齢を誤魔化すことやグラビアの仕事は断ったりしましたが、歌うことについては本気で取り組んでいたんです。だから納得して次に行ける。「まあ、ここまでやってダメならダメじゃん? これが私の実力だよ」と思える。

流されて生きてはいるけれど、「目の前に流れてきたことには全力投球。打席立ったら本気!」みたいな感覚です。「私が本気になったらそれなりのことやるわ!」という気分で、楽しみながら目の前のことと向き合っています。

第2回は3月19日(木)公開予定です。
(構成:落合絵美、撮影:面川雄大、聞き手・編集:安次富陽子)

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