「収入がないと何も言えないの?」
「私の社会的信用は、夫の上に成り立っている」
「家事と仕事、両方頑張るには限界がある」
“ママの求人”でのWeb連載が更新されるたび、Twitterで波紋を呼んだ話題作『夫の扶養からぬけだしたい』(KADOKAWA)。専業主婦のももこがワンオペ育児の苦しみを抱えながら、夢だったイラストを仕事にしていく物語が描かれています。
夫の理解なき言動やすれ違いによって、揺れる夫婦。何のために仕事をするのかという主人公の葛藤に思わず思いを馳せてしまう本作。通称『ふよぬけ』。作者のゆむいさんに、描きたかった“夫婦それぞれの事情”について伺いました。
自分自身が持っていた「夫の扶養を抜けたい」気持ち
——まずは『夫の扶養からぬけだしたい』という漫画が誕生した経緯を聞きたいです。
ゆむいさん(以下、ゆむい):最初にこのフレーズが出てきたのは、ある編集者さんとの打ち合わせのときでした。「どれくらいお仕事を頼んでいいですか?」と、育児しながらできる仕事量について聞かれたので、「夫の扶養から抜けられるくらい仕事がしたい」と答えたんです。そうしたら、その編集さんが「それ、いいですね!」とコミックス担当の編集さんにつないでくださって。それで「主婦が扶養を抜けるというテーマで漫画を描きましょう」とご提案を受けたんです。
——最初は、ゆむいさんからの提案ではなかったんですね。
ゆむい:そうなんです。子育てがひと段落した40代専業主婦の再就職のストーリーだったんですけど、残念ながらいろいろあって書籍化企画は流れてしまって。ちょうど同じタイミングで現在連載をしている『ママの求人』というWebサイトから「ほっと一息つけるような4コマ漫画を描いてください」とご依頼をいただいたんです。それで、依頼内容とはまったく違うけれど、主人公を自分に近い20代の専業主婦に入れ替えてフィクションとして『ふよぬけ』のネタを提案して、連載が決まりました。
——たしかに、ほっと一息つける内容ではありませんが……。それでも、企画が通ったということはテーマ設定がよかったという証拠ですね。ゆむいさんご自身は、どうして「夫の扶養から抜けたい」と思っていたんでしょうか?
ゆむい:結婚前から、夫には「働いてね」と言われていたんです。でも妊娠・出産や震災などでなんとなく約束が後回しになっていて……。私の収入といえばブログからの微々たる広告収入ぐらいでした。美術系の大学を出たあと、イラストレーターのバイトをしていましたが、正社員として就職しなかったことも、自分のなかでコンプレックスとして残っていたんです。そんな私がちゃんと働けるのだろうか、と。引け目のようなものがあって。
夫には「若いんだから公務員試験を受けることもできる」と言われていたけれど、好きな絵の仕事でいろんなマイナスを逆転できるくらいドカンと当てたい、という妙なプライドもありました。