臨床内科専門医に聞く食中毒対策・第2回

自作弁当でまさかの食中毒…予防のための10のコツ【臨床内科専門医が教える】

自作弁当でまさかの食中毒…予防のための10のコツ【臨床内科専門医が教える】

自作のお弁当を職場に持参する人は多いと思いますが、夏は食中毒が気になるところです。

「弁当で食中毒を起こした場合は、発生源がご自身や家族にあるためにあまり報道されませんが、医療の現場では日常的に発生しています。自分で作っているだけに、まさか細菌やウイルスが混じっているとは想像もしなかった、という患者さんがとても多いのです」と話すのは、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長。

第1回の「梅雨から夏は食中毒に注意! 自炊で用心のポイントを臨床内科専門医が教える」に続き、今回は弁当を自作する際の注意点について、正木医師に詳しく聞いてみました。

<第1回のポイント>
・食中毒菌は、湿度や温度が高いと急増する
・食中毒予防の三原則「菌をつけない・増やさない・やっつける」

自作弁当はチェックが甘くなる

周囲の人に聞くと、自作の弁当を食べて、午後や夜におなかが痛くなった、吐いた、病院に行ったと言う人は案外多くいます。正木医師はまず、こう注意を呼びかけます。

「自分で食べるものだからと手を抜きがちでチェックが甘くなることがあるようです。古い食材を使ったり、前日の残り物を詰めたり、また、弁当箱の殺菌を忘れるといったことはありませんか。それに、前の夜や早朝に作って、暑い日に昼までバッグの中に入れっぱなしだったということはないでしょうか。いずれも、食中毒の原因となる細菌やウイルスをまねく行為です

お弁当は作ってから食べるまでに数時間を要するので、その間に菌が増殖する可能性があることを念頭に置きましょう」

どきっ、はい、どれも思いあたります。続いて正木医師に、弁当を作るときに「してはいけないこと」や「食中毒撃退策」を挙げてもらいましょう。

不潔、水分、素手、残り物、混ぜ詰め、ムラ焼け、常温保存はNG

第1回の記事で、菌を『つけない・増やさない・やっつける』という食中毒予防の三原則を教えてもらいました。正木医師は、「その対策法を基本として、弁当を作るときに具体的に応用し、次のように実践してください」と話します。

(1)指輪を外して石けんで手をよく洗う

流水で手を洗う2[1]

調理前後、調理中に肉や魚、卵など生鮮食品を触ったとき、お弁当に詰める前後は、指輪を外してから石けんを使って、流水で手をよくもみ洗いします。食中毒をはじめ、細菌やウイルスを寄せ付けないための基本の行動です。指輪のすき間や長いツメの先には、細菌が付着していると考えてください。清潔なタオルや使い捨てのペーパータオルで手を拭いた後に、手指用のアルコールスプレーを使うとよりよいでしょう。

(2)弁当箱はよく洗浄して除菌する
容器に、食中毒の原因となる菌が付着していると、具材を詰めたあと、時間が経つにつれてどんどんと菌が増殖します。よく洗剤で洗い、熱湯をかける、また、キッチン用の除菌剤で除菌し、清潔な容器を使用してください。

また、パッキンや仕切りは、容器から必ず外して洗ってください。外さすに洗うと、食べかすや菌が残ることがあって危険です。梅雨から9月ぐらいまではとくに、使い捨ての容器を用いるのもいいでしょう。

(3)水分が多い料理は詰めない
水分が多いと、菌が繁殖しやすくなる、他のおかずを傷めやすくするため、水分の多い生野菜や豆腐などの食材はお弁当に適しません。水気のある食材は、梅雨から9月ぐらいまでは使わないようにしましょう。

(4)おかずやごはんが温かいまま詰めない
温かいおかずやごはんをそのまま詰めると、お弁当の温度が高くなり、菌が繁殖しやすくなります。また、蒸発して水滴となり、水分が発生します。おかずやごはんは、必ず冷ましてからお弁当箱に詰めましょう。

(5)おにぎりは素手で握らない
おにぎりを素手で握ると、手についた菌がごはんに付着することがあります。おにぎりは必ず、ラップを使って握りましょう。

おにぎりや寿司、サンドイッチ、肉や卵などで調理されたものに付着する「黄色ブドウ球菌」は、ヒトの皮ふや口、鼻に存在し、食後30分~6時間で、吐き気やおう吐、腹痛などを発症します。加熱しても食中毒を防ぐことはできません。食材に菌をつけないように、とくに自分の顔や体に、ニキビや吹き出物、傷がある場合は、それらを触った手では食材に触れないようにしてください。

(6)残り物を詰めない
肉や魚、野菜を使用した煮込み料理に繁殖することが多い「ウェルシュ菌」は、高温で加熱しても死滅せず、常温で酸素の少ない場所で繁殖します。食後6~18時間で腹痛、下痢などの症状が現れます。加熱調理したから大丈夫だろうと思うのは間違いです。前日の残り物を使わないようにしましょう。

(7)半熟、ムラ焼けの具材はNG
加熱が不足している肉や魚、卵には、食後6時間~48時間で吐き気や腹痛、おう吐などの症状が現れる「サルモネラ菌」、肉や生野菜には、食後2~7日で腹痛や吐き気、おう吐、下痢、発熱などの症状が現れる「O(オー)157、O(オー)111」、カキやアサリなどの二枚貝には、食後24~48時間で吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れる「ノロウイルス」が付着する可能性があります。

肉や卵は75度以上で1分以上、魚介類は65度以上で1分以上加熱し、食材の中心部まで十分に火を通して菌をやっつけることを意識しましょう。半熟卵や温泉卵、汁が出るハンバーグや肉など、おいしそうに感じても、加熱にムラがあるものはNGです。

(8)抗菌作用がある梅干しや酢、シソを使う
梅干し、酢、シソ、ネギ、タマネギなどは、抗菌作用があることで知られる食材です。これらを活用しましょう。

(9)おかずとごはんを一緒に詰めない

shutterstock_468047705 

おかずの水分がごはんに侵入し、傷む場合があります。おかずとごはんは別の容器に入れる、仕切りで分けるなどしましょう。

(10)保冷剤を必ず使用する
お弁当は必ず保冷剤と一緒に持ち運びましょう。低温に保つと菌が増殖しにくくなります。ただし、保冷剤を使用していても、室温で2時間以上は放置せずに、できるだけ早く食べましょう。また、職場に冷蔵庫がある場合は、出勤後すぐに利用しましょう。

正木医師は最後に次のアドバイスを加えます。
「梅雨から9月ごろは、とくに自作の食事はできるだけ早く食べるのが理想ですが、お弁当の場合はそうもいかないでしょう。もしお弁当を開いたときに、少しでも妙な臭いがする、または具材を口にしたときに、すっぱい、生臭いなど違和感があった場合には、食べずにすぐに処分をしましょう」

梅雨から残暑のころまではとくに気を抜かずに、健康のためのお弁当作りに徹したいものです。続く第3回では、「食中毒を防ぐバーベキュー編」をご紹介します。

【第1回】梅雨から夏に急増する食中毒…自炊で防ぐコツは?

(構成・文 品川 緑 藤原 椋/ ユンブル)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

自作弁当でまさかの食中毒…予防のための10のコツ【臨床内科専門医が教える】

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング