『かんたん仕込みですぐごはん』上田淳子さん 最終回

「お母さんみたいにやらなくちゃ」に縛られないで。仕込み術の料理研究家が伝えたいこと

「お母さんみたいにやらなくちゃ」に縛られないで。仕込み術の料理研究家が伝えたいこと

手抜き、時短、外食、外注……。料理する人の負担を軽くするようなハックやサービスはあふれているものの、「身体にいいものを食べたい」「経済的なことを考えると自分で作ったほうがいい」と考えると、なかなか切り離せない“料理”。どうせやるのならば、おいしいものを食べたいですよね。

2019年3月に『仕込みと仕上げ合わせて最短10分! 帰りが遅くてもかんたん仕込みですぐごはん』(世界文化社、以下『かんたん仕込みですぐごはん』)を上梓した料理研究家の上田淳子(うえだ・じゅんこ)さんに、料理する人の憂うつな気持ちを晴らすヒントになる“仕込みメソッド”について話を聞きました。最終回となる今回は、仕込みを使った料理シェア術を教えていただきました。

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「自分のお母さんみたいにやらなくちゃ」の呪縛

——第1回で「料理ができなくて当たり前」と言っていただいて少しホッとしました。でも「独り立ちしたり家族を持ったら、料理は手を抜かずにしっかりやるべき」みたいな理想に苦しめられている人は、まだきっとたくさんいると思います。

上田淳子さん(以下、上田):そうですよね。でも、完璧にやろうとしても長続きしないので、小さなステップを楽しみましょう。とくに大切なのは、自分のお母さんと比べないことです。

——お母さんと比べない?

上田:はい。「お母さんは忙しくてもおいしい料理をつくってくれた」「手を掛けて育ててもらったから、同じだけのことを家族にやらなくちゃ」って、思っていませんか? でも、そのお母さんたちは、きっといまの若い世代とは生きてきた環境が違います。家のことに専念できた方が、いまよりは多いはず。もちろんバリバリ働いてお料理も完璧というスーパーお母さんもいたかもしれないけれど、そうだとしても、同じように頑張る必要はありません。女性の肩にのしかかっている“晩ごはんの呪縛”を、そろそろ解いていきましょう。

——たしかに、いちばん身近なロールモデルとして「母と同じくらいのことをしたい」と思っている部分がありますね……。上田さんも働きながら双子の息子さんを育ててこられて、同じように悩んだ時期がありましたか?

上田:しんどい時期はありましたよ。でも、無理せず、できるだけのことをやればいいって考えるようにしたんです。たとえば子どもが小さいときって、一生懸命つくったのに一口も食べてもらえず全否定される……みたいな場面がある。そんなとき、子どもに合わせて試行錯誤しすぎると、どんどん消耗します。ならば、自分が食べたくておいしいと思うものを家族も食べてもらえばいいのかなと思うんです。ある種の開き直りというか(笑)。でも、そうやって自分の好きなものを優先させたら、もし子どもが食べなくたって、あとから自分で楽しく食べられますよね。

——気持ちがぐっとラクになりますね(笑)。

上田:子どもにしても、自分がいらないと言ったものでも、母親がおいしそうに食べていたら、次の日は興味を持つかもしれないですしね。家族のためにつくっていたって、お料理の軸は“自分”でいいと思います。

料理を分担するのは将来のためになる

——共働きもスタンダードになったこれからは、料理も家族でシェアしていけたら素敵だなって思います。

上田:いいことだと思います。『かんたん仕込みですぐごはん』も、作業を分担しやすい構成にしているんです。メニューを選んで仕込みを済ませたら「こういう状態で置いてあるから、仕上げはよろしくね」と伝えればいい。仕込み6:仕上げ4のレシピだったら「俺はあと4割だけやればいいいんだな」と思ってもらえます。ぜひコミュニケーションツールとして使ってみてください。

実際に家族にお願いしたLINEのスクリーンショット1/画像提供:上田淳子さん

実際に家族にお願いしたLINEのスクリーンショット/画像提供:上田淳子さん

実際に家族にお願いしたLINEのスクリーンショット2/画像提供:上田淳子さん

実際に家族にお願いしたLINEのスクリーンショット2/画像提供:上田淳子さん

——なにを使えばいいのか、どんな作業が残っているのかすぐわかるから、お料理初心者の家族でも安心ですね。

上田:夫より先に、子どもを巻き込むのもおすすめですよ。子どもがふつうに料理をするようになったら、焦って「自分も巻き込まれなくては……」と思うようです。

——そんな効果が(笑)。

上田:子どもに料理をシェアするのは、自分がラクになるだけでなく、子どもの未来のリスクヘッジにもなります。小さいうちから自然と台所に立つ習慣が身についていれば、調理に対する苦手意識が軽減されるはず。独り立ちするときに、自分たちほど困らないで済むんです。

我が家の息子たちにも、キャベツをまるごと渡してちぎってもらうとか、3歳くらいのちょっとしたお手伝いから家事に参加してもらってきました。子ども、とくに男の子に家事をシェアするきっかけをつくれるのは、いまのお母さんたちですから。

——次世代のために、私たちがいまできることですね。

上田:人は、毎日ごはんを食べないと生きていけません。「食べたいものをつくって食べる」というシンプルなことのはずなのに、いま料理は、多くの人を悩ませて、負担になってしまっています。だからこそ、すこしでもラクにおいしく食べられるやり方を、これからもみなさんと一緒に考えていきたいです。

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(取材・文:菅原さくら、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)

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