「作るのが好きな人」と「見せるのが好きな人」のちがい
ヨシタケ:学生時代、僕は立体作品を作っていたんですけれど、「作品を作るのが好きな人」と「人に見せるのが好きな人」って結構違うんです。作家として生きていく人は、作るのが好きな人よりも、見せるのが好きな人が多いんです。それがわかったときにホッとしたんです。
——というのは?
ヨシタケ:僕は作るのは好きなんだけど、人に見せるのはそんなに好きじゃなかったんです。作ってニヤニヤするのは好きなんだけど、そういう人って作家としてやっていけないんですよ。それは趣味でやればいいだけだから。
作家って、人に見せて喜んでもらったり、人の意見を聞いたり、人とつながることが楽しいから作っているという人が多いんです。だからこそ、もっと見てくれってなるし、人の意見を聞きたいし、人とつながっていたい。そのための“媒体”として、自分はモノを作りたいという人が作家に向いている。
「作るのが好きな人=見せるのが好きな人」ではないことを、僕はごっちゃにしてて苦しかったんですけれど、それがわかったときに結構楽になりました。
僕は作るのは好きだけど、それをどう見てもらおうとか、どう喜んでもらおうということに、大して興味がないんだとわかったときに、作家は無理だと思ったんです。
——だから大学院を修了されたあと、就職したのですか?
ヨシタケ:はい。人の言うことを聞くのは得意だったので。
だから(作品を作るのは)人とつながるのが目的じゃないんです。自分でニヤッとするのが好きなんです。でも、出版であれば人と会わなくてもできるんですよね。そういう抜け道もあるよ、というのはのちのちわかってくるんだけれども……。
例えば、食べるのが好きな人と料理を作るのが好きな人は全然違いますよね。その区別がついてない人が結構いる。自分は食べるのが好きだから、料理を作るのも好きなんじゃないかみたいな。それに気づくだけでも結構ちがってくるんじゃないかなと思いますね。
映画を見るのが好きだから、映画を作るのも好きなんじゃないか? というのも全然別じゃないですか。働いているとその違いがなんとなくうっすらわかってくるんだけれど、言われると「確かに」と思いますよね。「どっちが好きだったんだっけ?」って。
——はい。自分の仕事に当てはめてもそうかもしれないですね。
ヨシタケ:「へー」ってなりますよね? だから、例え話で「世の中で起きている問題は、あなたでいうところのこのことなんじゃないか」と提示していくのが、絵本にしろ今回の本にしろ、僕がやっていきたいことなのかなって思います。そういうことを考えるのも好きだし、楽しいし、わかると自分がうれしいんですよね。
※次回は4月23日(火)公開です。
(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)