仕事ができて優秀なのに、なぜか会社からはそれほど評価はされていない女性の先輩。学生時代から優秀で同期の出世頭だったのに中間管理職になった途端、出世が止まってしまった女友だち。私のほうが真面目に仕事もして結果を出しているはずなのに、男性の同期に比べて上からの評価がイマイチな気がする……。
「女性活躍」と叫ばれているわりには、昇進してキャリアアップする女性が少ないのはなぜ? 優秀なはずなのに評価がパッとしないのはもしかしたら「仕事」や「出世」のルールを知らないからかも……。
そんな、女性が気づきにくい「ルール」についてつづった秋山ゆかりさんの新刊『自由に働くための仕事のルール』『自由に働くための出世のルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が5月に同時発売されました。
20代でボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で戦略コンサルタントとしてビジネスの基礎を学び、その後ゼネラル・エレクトリック(GE)やIBMなどのグローバル企業で管理職を歴任。現在は事業開発コンサルタントとして活躍中の秋山さんに、働き女子が知っておいたほうがいいことについて4回にわたって伺いました。
第3回目のテーマは「他人に振り回されないために」です。
【第1回】デキる人なのに評価がイマイチな理由
【第2回】“中間管理職ゾーン”を早く抜けたほうがいい理由
時間は振り回されても気持ちは振り回されない
——部下や後輩ができると自分だけに時間を使えなくなりますよね。よくわからない会議にいつの間にかメンバーとして入れられていたり……。出世したり、マネジメント側に回ったりすると「他人に振り回されること」も多くなると思うんですが、秋山さんはどんなふうに時間を管理していますか?
秋山:私は相当バッファをとっていますね。「いつ仕事をしているんだ?」といろいろな人から指摘されるんですが(笑)。でも、人に邪魔されない時間はちゃんと確保していますよ。
部下に対しては「ここで話を聞いておかないと、あとあと大きな問題に発展しそうだな」と思うことも結構あるので、そういうことはちゃんと聞いてますね。
——なるほど。でも部下や後輩が増えれば増えるほどすべてを見わたせないというか、大変になってくると思うのですが……。
秋山:もちろん全員を同じ熱量で見るのは難しいのですが、「この人はヤバそうだな」というシグナルは常に受けられるようにして、積極的にフォローします。そうではない人は、「ご自由にどうぞ」という感じですね。「放置プレイはしないけれども、放牧はする」とよく言われます。
結局、他人のことは完全にはコントロールできないですし、いい意味で「期待」はしないようにしています。全員が自分と同じようにできるわけではないと思っています。人に使っている時間は多いかもしれないですね。むしろ、時間は振り回されても、気持ちは振り回されないことを大事にしています。
——「気持ちは振り回されない」というのは?
秋山:「部下にこう言われた、ああ言われた、どうしよう?」と悩むことはないです。特に女性同士というのは、そういうことが起きやすいと思うんですが、ここで振り回されたら自分が破綻するだけだと思うと、そこからは淡々と作業処理はしても、思い入れは強くならないように意識をしています。
——他人の思惑をあれこれ想像してモヤモヤするのは自分のリソースの無駄ですもんね。
飲み会が「つまらない」と思ったら…
——「無駄」といえば、飲み会も時間の無駄だと思うことが多くなって困っています。もちろんいろいろな出会いもあって「行ってよかった」と思うときもあるんですが。
秋山:今は子どもが小さく、夜は外出が難しいので、飲み会も行かなくなって、ランチで終わらせることが多いんですが、子どもが生まれる前は、結構行っていました。でも、「もういいかな」と思ったら、途中退席するんです。「すみません、電話会議が入るので」って。たくさん言い訳はありますよ(笑)。
「電話会議が入りますので」「実は明日の朝の締め切りの原稿が終わってないので、ちょっと失礼させていただきます」と言ってサクっと帰る。失礼かもしれないですが、「ここにいるのは時間の無駄」と思いながらその場にい続けるほうが相手に失礼ですよね、という自分の中で言い訳を作って出るようにしています。
——「途中退席」、いいですね!
秋山:最初から「くだらない」と決めつけるのではなく、食わず嫌いしないこともすごく大事だと思います。
途中まで参加すれば、まわりも「秋山さんは仕事忙しいんだな。忙しいなか来てくれたんだな」と思ってもらえるのでよいかな、と。気がつくといない、という人もいるじゃないですか。お金だけちゃんと払っていなくなっている人。それでいいのではないかと思います。
実は、私の父がお客様との会食が多い仕事だったんですが、父は二次会に絶対に行かないことで有名な人だったんです。大きな組織のトップまで上がった人なんですけれども。理由は「9時になると眠くなる」から。朝4時か5時に起きていた人で、とにかく睡眠時間を確保したいというのと、深酒やいいものを食べ過ぎたら健康が害されるだけで、自分にとってのプラスは何もないと考えていたんです。それでも父は組織のトップになっていたので、「あの人はそういう人」と思われればいいんだなと思いました。
——なるほど。それはお父様から学んだ“ルール”の一つだったんですね。
※次回は7月24日(火)掲載です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)