戸田久実さんに聞く、オンナのヨユウ 第1回

あいさつをしない後輩にも背景がある。働くオンナに必要なゆとりの作り方

あいさつをしない後輩にも背景がある。働くオンナに必要なゆとりの作り方
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年を重ねるごとに、経験を生かしてどんどん軽やかになる女性がいる一方で、「聞く耳を持たない先輩」や「頭の固い先輩」になってしまう女性も……。

30代は、後輩や部下も増え、仕事の責任も増していく世代です。一本芯の通った女性として、頑固になりすぎずに上手くコミュニケーションをとるには、どんなことに気をつけたら良いのでしょうか。

『働く女の品格 30歳から伸びる50のルール』(毎日新聞社)の著者で、アドット・コミュニケーション代表取締役の戸田久実さんに、働く女性が知っておきたい心構えについてうかがいました。

第1回となる今回のテーマは「働くオンナに必要なゆとり」についてです。

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気にしすぎるとかえって自己嫌悪に

——『働く女の品格 30歳から伸びる50のルール』の中に、「何歳になっても能力も魅力も伸びていく女性がいるいっぽう、いつまでも若さに甘えたり、経験があるがゆえに、それにこだわって変化を拒み伸び悩む、残念な女性がいることも事実」とありました。私もその残念な女性側になってしまうのではないかと、不安を感じることがあります。

戸田久実さん(以下、戸田):30代の働く女性には「お局様と思われたくない」「うるさい先輩だと思われたらどうしよう」という恐怖を抱えた方がいらっしゃるんですね。でも、あまり恐怖心にとらわれないでほしいです。後輩や周りの反応を気にしてご機嫌取りをしたり媚びた振る舞いをしたりしていると、自己嫌悪に陥る危険だってあるんですよ。

——確かに「なんで私、後輩にこんなに気を遣っているんだろう……」って虚しさを感じたことがあります。

戸田:それは危ない(笑)。虚しさがイライラに変わって「私はあなたたちにこんなに気を遣ってあげているのに!」と思い始めてしまったら、その憤りと苛立ちは周りに伝わります。そうすると、結局「面倒くさい先輩」という印象を与えてしまいますよ。それって、本末転倒ですよね。

「当たり前」「社会人として常識」は通じないと心得て

——たとえば、他部署の20代の社員に挨拶をしても返事がなかったり、同部署の後輩にキーボードを打ちながら小声で挨拶されたりすることがあります。私は、社会人として挨拶くらいきちんとするべきだと思います。でも、「そんなこと言わなくても当たり前でしょ」と、イライラの成分を含んだ言い方になってしまいそうで……。

戸田:いま「挨拶をするべき」とおっしゃいましたよね。挨拶をしない、または、こちらが望む挨拶ができない若い世代に苛立ってしまうというわけですね。でも、いまの20代は「挨拶をするべきではない」と思っている人もいるんですよ。

——えっ! どうしてですか!?

戸田:それは、幼い頃から「知らない人に挨拶をするべきではない」と教わって育ってきたからです。いまの30代くらいまでは、学校や家庭で「地域の人や知らない人にも大きな声で笑顔で元気に挨拶をしましょう」と教育されてきました。でも、20代になると、家族やご近所の知り合い、お友達以外の人に挨拶されても、返事をしないようにと言われているんです。連れていかれてしまう可能性があるから、って。

——確かに……。誰にでも挨拶をすることが良いことだと言われていない世代が、社会に出てきているんですね。それはジェネレーションギャップかもしれません。

戸田:私たちが「挨拶するなんて当たり前」「こんなの常識」と考えていることが、当たり前でも常識でもない可能性があるということを理解しておく必要があります。

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「この人、頭ごなしに否定してくる」と思わせないために

——でも、やはりお客様や他の部署の方にはちゃんと挨拶してほしいという気持ちもあります。そんなときに「社会人として」「大人なんだから」と言ってしまいそうになるんですが、若い頃は私もこの言葉が大嫌いで反発していました。もっと相手が受け取りやすい伝え方はありますか。

戸田:その言い方では「この人、私のことを頭ごなしに否定してくる」と心を閉ざされてしまいます。コミュニケーションにおいて大切なことは、自分の正しさを認めさせることではなく、相手に「わかってもらうこと」です。

そのためには、まず自分も相手のことをわかってあげる姿勢を見せないと。まず、「会社の中では、お客様や先輩に目を見て挨拶してほしいんだ」と、こちらが望んでいることを伝えましょう。そこで「どうしてですか? 知らない人なのに」と言われたら「あなたが、知らない人に目を見て挨拶したくないと思うのはどうして?」と、相手の価値観を聞いてみてください。

——あなたの価値観や意見を尊重しますよ、という姿勢を見せるんですね。

戸田:ひとりひとり、大切にしていることは違うはずです。「私はAを大切に思っているけれど、この人はBを大切に思っているんだな」と受けとめましょう。許容範囲を広げましょう、という話を、私は講演会などで繰り返しお伝えしています。

——相手のBという価値観を認めたら、自分のAという価値観はどのように扱えばいいでしょうか? 引っ込めるべきですか?

戸田:いいえ。あなたのAという価値観も大切にしてあげてください。それを他人のBという価値観で塗り替えるわけではなく、お互いに「こういうものを持っているんだね」と認め合い、受けとめるだけなんですよ。受けとめた上で話し合うということですので安心してください。

——若い頃、自分も頭ごなしに怒られて反発心でここまで頑張ってきたような面もあります。なので、つい「20代の頃、私はあんなに頑張っていたのに、いまの子は……」という根性論を持ち出してしまいそうになることがあって。自分でも戸惑っています。

戸田:仕事ができる人や努力してきた人は、特にそういう思考に陥りがちですね。いまは若い世代の話をしていますけれど、同じ30代でも経験のプロセスが違えば仕事の価値観も違うはずです。自分の頭の中に「当たり前」「常識」という言葉が浮かんできてしまったときには「でも、他の人にとってはどうだろうか?」と考えるゆとりを持っていると、どんな世代とのコミュニケーションも、ずっとやりやすくなりますよ。

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(取材・文:むらたえりか、写真:青木勇太)

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