manma・青木優さんインタビュー 前編

「やりたいことに気づいたから、思い切って就活をやめました」ミレニアル女子の決断

「やりたいことに気づいたから、思い切って就活をやめました」ミレニアル女子の決断

卒業後に、就職するのか起業するのか、あるいは学び直すのか、選択肢はいろいろありますが、社会的には就職するのが一般的。自分で事業を立ち上げる人はまだまだマイノリティかもしれません。

けれど、大勢の人が選ぶ方に行くことが必ずしも正解ではないもの。何をどう選ぶのか、自分なりの考えを持つことが大切なのではないでしょうか。

お茶の水女子大学を卒業したのち、ライフとキャリアの設計に悩むプレパパ・ママの若い世代の人たちと、子育て中の家族に”留学”という形のマッチングで生き方のヒントを見つけてもらう、そんなサービスを提供するmanma(マンマ)の事業化にジョインすることを決めた青木優(あおき・ゆう)さん。思い切って就活をやめた時のことについて話を聞きました。

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人に「すごいね」と言われるのが喜びでした

——卒業後すぐにmanmaの取締役兼COOとしてジョインされたとのことですが、学生の時から卒業したら自分で事業を運営したいと思っていたんですか?

青木優さん(以下、青木):いいえ。企業に就職する予定でした。当時は外資系大手コンサルティング企業や大手金融機関など、世の中の動きがわかるような職に就きたいと思っていましたし、留学から戻って来てバリバリ就職活動していましたよ。

でも、同時期に、留学仲間と今後の進路について考える機会があって、そこで「軸がブレている自分」に気づいてしまったんです。

——軸がブレている自分?

青木:はい。生まれてから今日までを振り返り、今自分が何をしていて、これから何をしていくのかを物語として書くという作業をしたんです。すると、今しているところに「いろんな業界に出会えるコンサルティング企業にエントリーシートを出しています」と入っていて。なんか急に普通の就活生みたいだなって。その時から、「本当にこれでいいのかな」と思うようになりました。

——普通がイヤになった?

青木:うーん……。恥ずかしいんですけど、私は小さい時から「すごいね!」って言われたい願望が強くて。常に成績が良くて、仕切りたがりの優等生。大学受験も、宇宙関係の仕事に就きたいからという大義名分があって東大に願書を出しましたが、どこか「かっこいいね」って言われたいと思う気持ちもあったと思います。社会の中で評価される自分でありたい、と。

今やりたいことがあるのに「とりあえず」でいいの?

青木:留学を決めたこともそうです。「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」という文部科学省が展開する留学支援制度でフィンランドと台湾に、半年ずつ1年間留学したんですけど、「日本代表なんてかっこいいじゃん」みたいな。

——どこか見栄を張りたいという気持ちがあったんですね。

青木:そうなんです。ずっと自分にとって大切なことが人からの評価で、すごいと言われることが私の喜びだと思っていた。「とりあえず外コン」って、自分の価値観の上ではブレてないはず。でも、違うなと思ったんです。この違和感はなんだろうなと思った時に、人から評価されたいという軸以外に、本当にやりたいことが出てきたからだと気づいた。

——やりたいこと?

青木:はい。それが今、manmaで行っていること。具体的には、家族を取り巻く環境とか、社会にどういい影響を与えていくかということですね。留学先で過ごすうちに、日本にもこんな社会を作れたらいいのにという気持ちが大きくなって。

社会に出たら世の中を変えていくぞって思っていたんですけど、「とりあえず3年は外コンで」って、やりたいことを持っているのに、なぜ違うことをやろうとしているのだろう、と。

——じゃあそこから、気持ちが固まった?

青木:いえ。「やりたいことがある」それだけでファーストキャリアがmanmaでいいのかはすごく悩みました。周りはバリバリ就職活動をしていて、有名な企業から内定をもらって。知名度の大小じゃないよとは言われますけど、やっぱり私も所属でアイデンティティを保つようなところがあったので。誰に言ってもわかってもらえる学歴。それは私のプライドでした。有名企業に入れば、そのプライドが保たれるだろうとも思っていました。

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誰がどんな選択をしてもいい

青木:私はさっき優等生と言いましたが、単に集団主義が大好きな人だったんですよね。「運動会とか全員参加でしょ。練習にくるの当たり前でしょ。もし負けたら練習にこなかった人のせいだからね」って。

——うわ、イヤなやつだ(笑)。

青木:ほんとですよね(笑)。でも、留学した時に、尊重し合う国があるって気づいてから、「運動会は全員参加で盛り上げるべき」というのは自分の思い込みなんじゃないかってマインドチェンジがあって。ずっとルールはひとつ、それを守らないといけないと思っていたけれど、それぞれだよねと思えるようになった。高校時代までの私を知る友人が驚くほどの変化だと思います。

——「帰ってきたら中に違う優が入っている!」みたいな。

青木:そうそう(笑)。誰がどんな選択をしてもそれはその人の選択に過ぎないんだな、って。でもその選択のタイミングって自分のペースで選べない時もありますよね。

——例えば?

青木:まだ迷っている時に、代表の新居(におり)に「manmaの取り組みを事業化するから、就活との両立はできないと思う」と言われてしまって。あ、そうか。このタイミングで「本気でやって行く覚悟はある?」と問われるのか、と。

ちゃんと食っていけるのかも悩みましたし、家族のことをやりたいけれど、私結婚してないじゃん、子どもいないじゃん。それで本当に人を納得させられるの?と、人生経験の違いにも悩みましたね。

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ゼロから立ち上げる経験を評価してくれる人はいる

——誰かに相談しましたか?

青木:「トビタテ!留学JAPAN」でお世話になった、メンター的な存在のディレクターに相談しました。その時、「食っていけるかどうかは、自分が目指す生活水準によるので、自分で考えろ」と「(ファーストキャリアに関しては)なんか大丈夫じゃない?」ということを言われました。

——それを聞いてどう思いました?

青木:「あー大丈夫なのか……」と。それまでは同じように就職活動をしている学生の仲間としか話してなかったので。周囲は「リスクが大きすぎるよ」とか「優みたいな人は、ベンチャー気質の会社で力をつけたほうがいい」と。

「そうなのかな、そうなんだろうな」と思っていたんですけど、起業家でもあるそのディレクターは言うんです。「ゼロから立ち上げる経験を評価してくれる人は、ちゃんとプロセスを見てくれるはず。だから、それがリスクになることもないだろうし、やりたいと思うなら、やってみたらいいんじゃない」と。それまでにない視点が入ってきた時に、気持ちがちょっとラクになりました。

はみ出すことができて楽しい

——ラクになったんですね。

青木:はい。どこか有名なところに就職しようと考えている自分と、やりたいことはあるけれど、ファーストキャリアとしてリスクがあることに悩んでいる自分。この2つの自分の間で、前者はすごく自分らしくない。後者はリスクを取る覚悟があるかどうか。

でも、信頼している人にそのリスクが思っているより大きくないと言われたら……。しかも、私は一人じゃなくて、仲間もいる。ようやく、就活をやめてmanmaをやる覚悟ができました。

——現在でちょうど1年ほど経っていますが、自分で決めたその選択についてどう思いますか?

青木:まだ結果を出していないし、この先の自分がどうなるかも未知数。だからよかったとも、やめておけばよかったとも言えないですけど……。

ただ、あんなに枠の中で優等生だった自分が、はみ出すことができて、今めっちゃ楽しいです。事業を運営していく大変さはもちろんありますけど、誰かに「すごいね」って言われても、「すごいでしょ!?」って調子に乗らずに、「この人にはそう見えるんだな」って思えるようになった。ただ純粋に、やりたいことを自分で作ろうとしている毎日を楽しんでいます。

後編は5月2日(水)公開予定。
(取材・文:ウートピ編集部 安次富陽子、写真:青木勇太、撮影協力:RYOZAN PARK Otsuka

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