恋愛経験をある程度積み重ねてきて、酸いも甘いも知っているオトナだからこそ、パートナーにあえて「言わない」ことをあえて拾って、恋愛コラムニストの桐谷ヨウさんにアドバイスをいただく連載「◯◯って言わない女子」。
ヨウさーん! 今回はこんなつぶやきを発見しましたよーー!!
【今回のつぶやき】
「本当に転職する気、あるの?」
恋愛というか、生き方の話になってきてしまうのですが、付き合って5年目の彼がいます。大手企業で働いているのですが、二言目には「会社辞めたい」と言って「君は好きなことをしていていいね」と言います。
最初は「まだ34歳なんだし、男の人はこれからだよ。転職してみたら?」と言っていたのですが、なんだかんだ理由をつけて今の会社に止まって早3年。最近は仕事の愚痴も適当に相槌を打って聞き流しています。
最近は結婚の話も出ているのですが「今の会社にいたほうが君の親受けも親戚受けもよさそうだからしばらくは今の会社にいるね」と言ってうちの親のせいにしています。うちの親は元ヒッピーなので、結婚相手のスペックなんて気にしないのに……。
いやいやながら生きていくよりも後悔しても好きなことをしたほうがいいなと思うのですが、それは私が女だからなのかな。上記の言葉を言いたいのですが、言ったら傷つくと思って言えません。黙って見守るしかないのでしょうか?
人って本当は「変わりたがらない」生き物?
“親は元ヒッピー”に食いついて3度見してしまいました。今日もご機嫌なヨウさんです。
生き方の話、大好物です。恋愛を真剣に考えることは、自分の人生観を振り返ること。同時に、恋愛相手の人生観に惚れることができるかの一世一代のギャンブル。だから、“本当の恋愛の話”と“生き方”は地つづきになります。
さて、ストレートに書いてしまうと「つまんねー生き方をしてる彼氏だな」と思います。そして「こんなネガティブなバイブスを与えてくる彼氏と一緒にいると、運気が下がるぜ」と論理のカケラもないことを感じました……!
と他人事なので言えますが、自分自身の経験を振り返って彼氏の気持ちも分かるんです。
俺自身もお恥ずかしながら新卒で入った大手企業で「つまんねー会社だな」「ずっとはいない」とクダを巻きながら、けっこう長いあいだ転職のアクションを取れなかった。なぜか? 怖かったんです。何が?
それは失敗する(待遇が下がる、社会的なステータスが下がる)こと
ではなく、
変化(新しい環境でやっていくこと)自体です。
自己啓発界隈ではよく言われることですが、生物って現状維持を続けようとするものなんですよ。自分のマインドセットに応じた快適なゾーンを維持しようとする。寒かったら身震いして体温を上げようとする恒常性の機能が、生理レベルだけでなく、人生の達成についても存在している。
彼の居心地のよい生き方が、「不満を言ってながらもそれなりの何かが保証されている働き方」なんですよ。それなりの何か、にツッコミを入れたら大したものじゃないはずだけど。
なかなか行動に移さない理由
次に、アドラー心理学から引用します。
人が変わろうとしないときは、そのことによるメリットを享受しているからです。これズバリと言い当ててません?
「私ってかわいそう」アピールする女の子は、それで人にかまってもらえるメリットを享受しているんですよ。だから、傷ついた心を味わう。「明日から本気出す!」って言っている人は、失敗で傷つかないメリットを享受しているんですよ。だから、今日をダラダラと平穏にやり過ごす。
彼はメリットを享受しているんでしょうね。そして、ご質問者様が気づいているように「君の親受け」がその理由では決して、ない。
おそらくは自分のプライドを守ろうとしています。それもショっボいプライド。
ご質問者様の彼氏がショボいと言ってるわけではありません。人が能動的なアクションを起こせないときのプライドとは、総じてショボいということです。
自分にできる自信がまだない。失敗したら取り返せないのでは。人様に笑われてしまうんじゃないだろうか。
大抵はこのあたりです。
重要なことは、自分の人生は誰のものでもない。人生とは、監督・脚本・主演をすべて自分でこなす映画であること。観客動員数なんて気にする必要なんてない、ということです。
そしてこのことに、男も女も関係ありません。自分(と大事な人)の人生を味わい尽くすためには、誰しもが生きるための前提として心の奥底に抱いておくべき信念です。
とはいえ、こんなふうに考えられて、実際に行動できている人はそう多くありません。俺自身も徹底できているとは到底思えないです。
誰かと寄り添って生きていくために必要なこと
さて、ご質問者様は「後悔しても好きなことをしたほうがいい」と提言するか迷っているようです。
提言しましょう。おそらく彼は傷つきます。それでよいじゃないですか。傷ついて、人は変わるきっかけを得ます。変わらないことで得られるメリットを超える、変わることで得られるメリットを見いだせれば、彼は目を覚ますでしょう。
ただ、ご質問者様は自分の人生を充足させるのは自分次第、という考えをスムーズに受け取れる人でしょうが、おそらく彼はそうではありません。ある意味では、ちがう世界の住人に言葉を届けるくらいの覚悟が必要です。だって彼は、やらされている役を演じることが好きなんだもの。
ご質問者様は、きっと彼のことが大好きなんだと思われます。だからこそ、「もっと楽しく生きてよ!」と期待してしまうんでしょう。
断言しますが、好きなことに向き合おうとする“人生の妙味”を知っているあなたは、それを知らない・知ろうとしない相手と人生を寄り添って生きることは難しいです。おそらく煮え切らない思いを抱き続けることになるでしょう。
人生をかけて寄り添うためには、自分が向こう側の世界を許容するか、相手にこちら側に来てもらうしかない。「生き方の態度」が根本的にちがう人に、自分の人生を賭けることは絶対に避けるべきです。結婚後もずっとつきまとう二人の壁になりえます。
いま抱いている彼氏へのモヤモヤは、このことをご質問者様の恋愛観に織り込んでみるタイミングだというお知らせなのかもしれません。それにより相手を再考することになるかもしれないですよ。応援しています。