最近ちょくちょく耳にする「専業主夫」という言葉。
高年収の女性やハイキャリアの女性が、家事や育児が得意な男性をパートナーに選ぶという夫婦のカタチです。でも、一見新しそうに見える「専業主夫」だって、「専業主婦」から男女の役割が入れ替わっただけで、実は古いんじゃないの? もっと自由で楽しい夫婦のカタチがあるんじゃないの?
そんな疑問を、MCのSHELLYさんと当事者が過激な女子トークを展開しながらトコトン深掘りしていく番組が、本日23時45分放送のAbemaTV『Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜』。普段はレギュラーコメンテーターとして参加している私(ウートピ編集長・鈴木円香)も、今回は当事者の一人としてトークに加わりました。
ヒモ(一般的には女性の稼ぎに頼る男性のこと)とそれを飼う女でもない、専業主夫とそれを養う女でもない、新しい夫婦のカタチって? 専業主婦から編集者としてのキャリアをスタート、今や「ヒモ疑惑」の夫を持つまでになった私自身がこのテーマについて書いてみました。
ダンナさんはヒモですか?
「鈴木さんのダンナさんって、ヒモなんですか?」
時々、聞かれる質問だ(もうちょっとオブラートに包んだ表現になることもあるけれど、質問の意図としては同じだ)。
……ヒモ、ではない。10〜16時の時短勤務だが週5で働いているし、所得は私より低いが完全独立採算制を維持できるくらいは稼いでくれている。そろそろ任期が切れて今年9月には失業予定だが、一応求職活動はしていてまだ無職は確定していない。よって「ヒモ」ではない。
しかし、私たち夫婦の日常を目にしていると、「ダンナはヒモか?」と疑いたくなるのはわかる。
私たちの間には、現在2歳の娘がいる。そして、育児の分担は私:夫=3:7くらいの比率でやっている。保育園を探すのも、申し込み書類を揃えて提出するのも、落ちた時の対応策を考えておくのも、衣類やその他必要なアイテムを買い揃えて名前を書き込むのも、朝の送りも、毎日大量に持たされる洗濯物の処理も、子供部屋の片づけも、すべて彼の仕事だ。育児に関して、私の仕事は、朝食と夕食の準備、週4のお迎え(週1は姑の担当)、おふろくらいだろうか。
この状況を見聞きした人は、「ダンナがヒモじゃないとムリだろう……」と想像する。近所の人も、毎朝家のまわりを掃除して、2歳児をなだめすかして保育園に送り届けてから、しわくちゃのチノパンとシャツ(もちろん上下ともユニクロ)で自転車をこいでどこかに出かけていく彼の様子を見ているので、時たま私を捕まえては「ご主人、今、何してるの?」と心配そうに聞いてくる。要は、ここでもヒモ疑惑をかけられているわけだ。
ヒモ疑惑ができあがるまで
「ヒモじゃないとムリだろう……」と想像されてしまうほどの仕事量を日々こなしている彼だが、こういう生活形態に辿りついたのには、二つの理由と長い長い経緯がある。
理由の一つは、分娩直後に私が「こんなにもつらい妊娠と出産をやりとげたのだから、あとの育児はまだ何も負担していないあなたがやるべきだ。この苦しみは育児10年分に値する」と主張し、彼がそれを当然のごとく受け入れたこと。もう一つの理由は、新生児を育て始めてすぐに、育児に関しては女の私よりも男の彼の方が圧倒的に適性があると判明したことだ。
仕事でも、マネジメントに向いている人はマネジャーを、現場が向いている人はプレイヤーをやった方がいいように、育児も向いている人がやった方がいい。非言語のコミュニケーションに長けていて、変化を求めずルーティンをきちんと回すことが得意で、結果重視ではなくプロセス重視の発想をするタイプの方が、育児には向いている。私のように「言葉にしてくれないとわからない」と何事もロジカルに相手を打ち負かそうとしたり、好奇心旺盛で「明日が予想できない人生が好き!」というタイプには、完全に不向きだ。
つまり、夫のヒモ疑惑は適材適所の結果でもあった。
私が養われていた時代
実は、今から10年ほど前、結婚当初は私が専業主婦だった。彼はテレビ局の報道記者としてバリバリ働き、ブクブク太り、身を粉にして年収1000万円超を稼いでいた。
私はといえば、毎日のように有機野菜やその他こだわりの食材で「ライス詰めトマトのオーブン焼きトルコ風」や「自家製ドライトマトを添えた甘鯛のアクアパッツア」をせっせとこしらえていた。網戸に詰まったホコリを掃除機の先で丁寧に吸い取り、ブラインドについた汚れを一枚一枚ウエットティッシュで拭き取っていた(しかも全面窓2枚分!!!)。そのおかげで、いつも部屋にはビシッと清潔なそよ風が流れ込んでいた。脂汗とタバコの臭いの染み込んだワイシャツを洗濯して、ビシッとアイロンをかけていた。出張の前には、着替えをすべてビシッと畳んでバッグに詰めて、一寸の隙もなくビシッと荷造りしていた。
今、2歳児をそっちのけにして仕事に注いでいるエネルギーが、すべて家事に注がれていたわけだから、それはそれは全部をビシッとやっていた。糟糠(そうこう)の妻エキスが完全に底を尽いた現在は「勝手にすれば?」と冷たく切り捨てるあれこれを、信じられない健気さをもって完璧にこなしていた。まったく、「アホじゃないの?」と思う。
そこから、夫の転職やら、私の就職やら、離婚騒動やら、別居やらさんざん紆余曲折があって、冒頭の、夫がヒモ疑惑をかけられるほどの分担体制ができあがった。
「養う/養われる」の関係はうんざり
「鈴木さんのダンナさんって、ヒモなんですか?」
家事や育児を一手に引き受ける男性から、思わず「ヒモ」という言葉を連想してしまうのも、無理はないのかもしれない。だって、他に適切な言葉がないから。「専業主夫」という言葉もあるが、「ヒモ」よりはポリコレなだけで、「養われる人」を意味する点では、さほどの差はない。
私の夫は、ヒモでも、専業主夫でもない。仮に求職活動が実を結ばず無職になったとしても、そうはならない。私が生活費のすべてを稼ぐようになっても、養う/養われるの関係にはならない。というか、しない。
正直、もう「養う/養われる」の関係には、うんざりなのだ。
私自身、養われていた時代はしんどかった。人のお金で生活しているといううしろめたさから、本当は1万円で買ったお皿を「3000円くらいだったよ」とウソをつくのはイヤだったし、「元気に働き続けてもらうために栄養管理をちゃんとしなきゃ」というモチベーションで料理をするのもイヤだった。養うほうにだって、やがて「誰が食わしてやってるんだ」という傲慢な気持ちが芽生えて(最近、私の中にも芽生えてきてしまっている……)、知らないうちに力関係が生じてくる。
家事と育児は私:夫=7:3、それ以外の仕事は5:5か、3:7か、10:0か、その時々の状況にあわせてちょうどいいバランスを選んでいく。
いつでも、それぞれに得意な仕事を、やりたいだけやればいい。私は現在まったく家事をやりたくないし、その能力は退化の一途をたどっている。今は家の外で仕事をハンティングしていくことが楽しくて仕方がない。一方、彼はきめ細やかにルーティンを回していくこと、娘の成長に誰よりも早く気づくことに喜びを感じている。おたがいにそういう時期なのだ。
そこに「養う/養われる」という固定された関係はない。
ヒモ以外の呼び名が欲しい
ヒモとそれを飼う女でもない、専業主夫とそれを養う女でもない、何か新しい呼び名が欲しい。
それが今回番組のテーマとなった「大黒柱女子」だ。「養う/養われる」という古くさい構図から外れた新しい夫婦の関係を提案したい——それが番組制作のプロデューサー・津田環さんの意図だった。
ゲストには、キャリア婚を推奨する女性経営者・川崎貴子さん、英会話ビジネスを経営するこうさかゆかさん、ファザリングジャパン理事の高祖常子さん、婚活アドバイザーの大西明美さんなど。女性8人が赤裸々女子トークを展開しながら、まだ名づけようもない「新しい夫婦のカタチ」を模索していく。
2時間弱に及ぶ収録は本当に楽しかった。最終的には、「大黒柱」という日本的木造家屋をもとにしたモデルがそもそも古いだろう、今はやっぱり複数の柱と面で支える「耐震構造」じゃなきゃダメだろう、というなんとも不思議な結論に達したが、そこに至るまでのトークには、「こんな生きかたもあったのか」と、目の前がパッと明るくなることしきりだった。
放送は本日23時45分からAbemaTVで(再放送は翌14日の17時から)。「いい男がいない」と嘆いている貴女も、彼氏やダンナと微妙な関係になってしまっている貴女も、もちろん円満な貴女も、ぜひご覧ください。
(ウートピ編集長・鈴木円香)
『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~』
男子は見なくて結構! 男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組がこの「Wの悲喜劇」。さまざまな体験をしたオンナたちを都内某所の「とある部屋」に呼び、MC・SHELLYとさまざまなゲストたちが毎回毎回「その時どうしたのか?オンナたちのリアルな行動とその本音」を徹底的に聴きだします。「そんなことテレビで言っちゃっていいの?」…いいんですAbemaTVですからタブーに挑戦します。
第12回となる今回のテーマは「大黒柱女子」です。
放送日時:2017年5月13日(土)23:45~24:45
放送チャンネル:AbemaNews
放送URL