仕事以外の“逃げ場”が自分を救ってくれるかもしれない…私がドラマオタクになった理由

仕事以外の“逃げ場”が自分を救ってくれるかもしれない…私がドラマオタクになった理由
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自他ともに認める“ドラマオタク”のライター・エッセイストの小林久乃(こばやし・ひさの)さんによる『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)が12月に発売されました。動画配信サービスで過去の作品に手軽にアクセスできる今だからこそ見返したい、平成ドラマの魅力をたっぷりにつづっています。

本の発売を記念して、小林さんに寄稿いただきました。

“生涯の友=趣味”に本人が気づいていないことがある

12月に『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)という本を上梓した。本のタイトルから察するとおり、平成31年間に放送されたテレビドラマの見どころや、作品にまつわる体験談をまとめた一冊だ。

実は私、生粋のドラマオタクである。確か小中学生から1クールに放送される連続ドラマをすべて録画して、鑑賞する生活を現在も続けている。もちろん途中で視聴脱落していく作品もある。いくらドラマオタクと言っても、私にも趣向というものがあるから仕方がない。

「なぜそんなにドラマが好きなの?」

よく聞かれるのだが、答えることができない。衣食住のごとく私の生活に組み込まれているので、本当に理由が分からない。これ、推しを発見してしまうときと同じ現象らしい。例えば好きなアイドルグループがあるとして、最初は自分の好みのタイプと照らし合わせて、推し対象人物をチェックする。これは安全な推し活らしい。ただノーマークだった人物に心を奪われてしまうと、さあ大変。事故にあったようなもので、そこから資財を投げ打つような、ズブズブの沼に入り込んでいくとか、なんとか。私の“ドラマ推し活”にも非常に似ている。

「私もそんな趣味がほしいな」

こんなことをよく言われるけれど、実は私も自分はドラマオタクだと全く気づいていなかった。本書にも書いたけれど、私がある俳優に取材している様子を見ていた編集者の指摘によって気づいたのである。尋常ではないほどスラスラと過去のドラマタイトルが出てくる様子を見ていて「ドラマ好きなんですねえ」と言われて「はて?」となったのが、今から約10年前。あ、そうかみんな、連続ドラマを全部見ていないんだ。やっと気づいた。

私のように、生涯をかけたような趣味を持っていたのに、本人が気づいていないことがある。趣味がほしいなら一度、日々の生活を見直してみるのも一興であり、一案だ。

仕事と住まい以外の“解放区”は自分で作る

で、自著に話を戻そう。ドラマ本であることは間違いないのだが、一冊を通して伝えたかったメッセージに「趣味を持とう、それがいつか自分を救ってくれる」というものがある。

というのも、私、今まで今回のような趣味一辺倒のような本ではなく、人間関係や婚活に関するエッセイを書いてきた。令和の現在、著者へのファンレターは出版社に手紙……ではなく、SNSのDMで届く。そこには自身の悩みや感想、時に揶揄(やゆ)などいろいろな意見が送られてくる。

目立つ悩みに「職場との往復だけで出会いがない。もう人生が終わっている」という、恋愛願望を綴(つづ)りながらも自尊心を傷つけるようなこと。ほかには「ストレスがたまっているけれど、友人を誘いづらいから食事に行けない」など。社会人になると一度は陥るループだ。

こういうときに役立つのが“趣味”なのである。たまたま私はドラマだったけれど、推しを追い続けてもいいし、スポーツに没頭したっていい。手芸、料理、書道、写真……金を注ぎ込んで、たまったストレスを発散する方法はいくらでもある。この意見、昔バラエティ番組で中居くんが言っていた。もう番組名も忘れてしまったけれど、社会人に「何か好きなもの=逃げ場を持て。それが行き詰まったときに自分を救ってくれる。俺はたまたまその逃げ場が野球だった」というアドバイスをしていた。ふと耳に触れた彼の言葉が忘れられず、自分には何があるだろうと思ったら、ドラマ鑑賞があった。結局、解放区は自分で開拓するのが一番いい。「好きだ」という衝動から始まることが多いのだから、まずは振り返る。少しでも興味があったら、手を出す。表層的なものだって構わない。いつか生涯をかけた友であり、解放区になるかもしれないのだから。

ドラマ鑑賞が老後の“健康バロメーター”になる予感

ちなみにまたまた私事ではあるけれど、ドラマ鑑賞をしていて良かったと思うことがいくつかある。

まずはよく泣いて、笑うこと。自覚がある人もいるかもしれないが、年齢を重ねると感情が表に出づらくなる。あくまでも聞きかじったようなことだけど、確かに私も若い頃に比べると簡単には泣かなくなった。それがドラマを見ていると、涙が止まらないのだ。最近は朝ドラを見ていて、ヒロインが告白されただけで「良かったね」と泣いてしまう一幕があった。それも違う意味でまずいのかもしれないが、ストレス発散の一例は私の中で担保されている。

あとは見ていて「……どうも物語が(脳に)入ってこない」と思うと大概、具合が悪い。単純に疲れていることもあるけれど、好きなものが受け入れられないときは体調の危険信号だ。これから加齢はどんどん進んでいくけれど、私の場合、通院以前のテレビドラマというリトマス試験紙があると思うと、心強い。

そして最後に。ドラマ鑑賞という、逃げ場であり、解放区であり、ユートピアを持って良かったとしみじみするのは、こうして趣味を文章にして生業にしていることだ。10年前のあの日、私の趣味を指摘してくれる編集者さんがいなかったら、ウートピに寄稿をしていることもなかった。ついには書籍まで書き下ろしたのだから、好きとは何を運んできてくれるのか分からない。侮ってはいけないのだ。

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