脱・頭痛持ち…タイプ別症状とセルフケア/第4回

片頭痛が女性に多い理由は? 更年期以降はどうなる?【脳神経外科専門医に聞く】

片頭痛が女性に多い理由は? 更年期以降はどうなる?【脳神経外科専門医に聞く】

「脱・頭痛持ち…タイプ別症状とセルフケア」と題し、脳神経外科専門医でいのうえクリニック(大阪府吹田市)の井上正純院長に連載でお話しを聞いています。

前回の第3回では、三大慢性頭痛の中でも、強い痛みが断続的に続いてつらい「片(へん)頭痛」の特徴と症状について紹介しました。今回は、その片頭痛が女性に多い理由について尋ねます。なお、「第1回 頭痛持ち4000万人…後頭部が重苦しい、頭の奥がズキン…あなたのタイプは?」、「第2回 首・肩のこり、精神的ストレスが原因…緊張型頭痛の症状とセルフケア」も参考にしてください(各リンク先は文末参照)。

井上正純医師

井上正純医師

月経直前に片頭痛が起こりやすい

——前回、片頭痛とはおもに、頭の片側にズキンズキンとした痛みが週に1・2回から月に2回ぐらい起こること、また女性に多く、思春期ごろから増えて20~40歳代で発症することなどを教えてもらいました。そのような頭痛が女性に多い理由は何ですか。

井上医師:まず、女性ホルモンの変化による要因が挙げられます。「月経の数日前に片頭痛が起こる」という女性はとても多いのです。月経、排卵の周期では、女性ホルモンの種類のエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量に変化が起こります。とくにエストロゲンが片頭痛の発現に関係すると考えられています。

エストロゲンの分泌は、月経が終わると排卵に向けて増え、排卵時に急に減ります。その後また増えて次の月経に向けて減少するという周期を繰り返しまず。エストロゲンの分泌が急激に減少するとき、脳内の、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」や、神経伝達物質の「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」のバランスが変化します。CGRPとは聞きなれない言葉かもしれませんが、片頭痛の発症に深く関係しています。

これらのために三叉神経(顔の感覚を脳に伝える神経のひとつ。次回詳述)に炎症が起こったり、頭の血管が拡張したりして頭痛が発現すると考えられます。

そのため、片頭痛は、排卵直後や、月経直前から月経2日目ぐらいに多く起こります。エストロゲンが急激に減少するときに片頭痛が起こりやすいというわけです。片頭痛が月経後半に立て続けに起こることもありますが、その場合はもうひとつの女性ホルモンのプロゲステロンとの兼ね合いで起こると考えられています。

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片頭痛は月経前症候群と関係ある?

——月経直前は、胸や腰が痛くなる、肩こりがひどい、肌が荒れる、イライラや憂うつ感が強くなるといった「月経前症候群(PMS)」が発現します。片頭痛もそのひとつなのですか。

井上医師:片頭痛はまた違う病気で、「月経関連片頭痛」とも呼んでいます。このとき、市販の鎮痛剤を飲んで効く場合はいいですが、片頭痛の場合は効かないことも多いでしょう。

片頭痛の治療法として、トリプタン(後の回で詳述)という医療機関で処方される薬があります。また、予防薬もあります(同)。これらの薬は市販されていません。鎮痛剤が効かない頭痛の場合、片頭痛かもしれません。

片頭痛かどうかは、片方の頭がズキンズキンと脈打つように痛むなど、前回(第3回)に紹介した特徴や症状、見分け方を見つめてみてください。月経関連片頭痛の場合は、痛みが長く続く、痛みが強い、鎮痛薬が効きにくいという特徴もあります。

片頭痛かもと思う場合や、何だかわからない頭痛がつらいという場合は、脳神経内科、脳神経外科、頭痛外来などを受診して月経前症候群の症状とともに相談してください。

更年期とは関係がある?

——「妊娠中期以降や更年期以降では片頭痛が起こらない」と耳にします。これもエストロゲンの分泌量の影響でしょうか。

井上医師:そうです。妊娠中や更年期後は月経がないためエストロゲンの変動が少なくなります。すると片頭痛は治まります。一方、思春期のころに発症しやすいのもエストロゲンの分泌の影響と考えられています。

ただし、妊娠中に強い頭痛をくり返す場合は、「妊娠高血圧症候群」など別の病気が原因のことがあります。すぐにかかりつけの産婦人科などに相談してください。

——では更年期のころや、閉経後は片頭痛の状態はどうなのでしょうか。

井上医師:月経周期に関係なくエストロゲンが減少しだす40代後半は、片頭痛が頻発するケースがあります。その後、50歳以降で女性ホルモンの変動が安定すると徐々に痛みの程度が弱くなり、60歳以降になると治まりやすいです。ただしゼロではなく、ほかの要因によって起こることもあります。

——ほかの要因とは具体的に何ですか。

井上医師:「遺伝」があります。それも女性のほうが遺伝しやすいとされています。

またそれらとは別に女性の患者数が多い理由として、男性に比べると女性の方が痛みを周囲に訴えやすい、医療機関を受診する人が多いという要因もあります。

聞き手によるまとめ

片頭痛が女性に起こりやすい原因とはエストロゲンの減少であり、月経の周期と深く関係しているということです。また、月経前症候群と、月経前に起こる片頭痛は別の病気であり、改善効果がある薬が違うため、片頭痛の場合は医療機関を受診しよう、更年期以降は治まりやすいというお話しでした。次回・第5回は、痛みが起こるメカニズムや引き金について尋ねます。

(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

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