脱・頭痛持ち…タイプ別症状とセルフケア・第1回

頭痛持ち4000万人…後頭部が重苦しい、頭の奥がズキン…あなたのタイプは?【脳神経外科専門医に聞く】

頭痛持ち4000万人…後頭部が重苦しい、頭の奥がズキン…あなたのタイプは?【脳神経外科専門医に聞く】

「テレワークで毎日残業ばかり。パソコン作業が3時間を超えると必ず頭が重く痛くなって薬を飲む」「頭が押されているように痛い。たまに、こめかみや耳の奥がズキンズキンと痛んで吐くことも」「旅行や出張時、夜になると頭痛がする」「目の前にチカチカと星が飛んでズキッとした痛みが走ることがある」「梅雨や台風前にひどい頭重感がある」など、頭痛の悩みを訴える人が後を絶ちません。

「頭痛には、症状によっていくつかのタイプがあります。つらい症状を見つめて適切な治療やセルフケアを実践しましょう」と話すのは、脳神経外科専門医でいのうえクリニック(大阪府吹田市)の井上正純院長。そこで、頭痛のタイプ、それぞれの原因、治療法、セルフケアなどについて、連載でお話しを聞きます。第1回は、頭痛にはどのような種類があるのか、その各推計人口、特徴について尋ねました。

井上正純医師

井上正純医師

「慢性頭痛」と「脳の病気が原因の頭痛」に大別される

——頭痛にはタイプがあるということですが、症状別などに分かれるのでしょうか。

井上医師:まず、大きく分けて2種類があります。「ほかに病気がなく、頭痛そのものが病気となる場合で、くり返してつらい慢性頭痛(一次性頭痛)」と、「脳の病気の脳梗塞(こうそく)、脳出血、脳腫瘍(しゅよう)、髄膜炎、くも膜下出血など脳や体に何らかの原因や疾患があって起こる頭痛(二次性頭痛)」です。

前者の一次性頭痛には、緊張型頭痛(へん)頭痛群発(ぐんぱつ)頭痛などがあり、これらは「三大慢性頭痛」と呼ばれます。日本では3人に1人が慢性頭痛に悩んでいると推計されています。

後者の二次性頭痛は命に関わる場合があります。これまでに経験したことがないような突然のひどい頭痛、発熱を伴う強い頭痛、手足のまひやしゃべりにくさ、めまいを伴うなどの場合は脳の病気の場合があります。至急に脳神経外科や脳神経内科(神経内科)を受診する必要があります。

——二次性頭痛については、後の回で詳しく伺います。今回は、患者数がとても多いという慢性頭痛について尋ねます。

「緊張型頭痛」は肩や首のコリ、精神的ストレスが要因

——慢性頭痛とは、いわゆる「頭痛持ちの頭痛」のことですね。

井上医師:そうです。命に関わることはありませんが、長く続く、くり返し続くことが多く、仕事や家事、育児にも差し支えると生活の質(QOL)を低下させます。

——慢性頭痛人口はとても多いと聞きますが、何人ぐらいなのでしょうか。また、三大慢性頭痛のうち、もっとも患者数が多い頭痛は何でしょうか。

井上医師:慢性頭痛に悩まされている日本人は、受診をしていない人も含めて約4,000万人と推計されています。15歳以上の40%にあたります。

中でももっとも多いのが緊張型頭痛で、約2,000万人が悩むともいわれます。片頭痛ほど男女の差はありませんが、女性にやや多くみられます。症状は、頭を「ベルトで締め付けられるような」「ハチマキをしているような」「帽子をかぶっているような」と例えられる圧迫感がある痛みで、肩こりや目の疲れを伴うことが多くあります。

——「緊張型」という名称は、どこが緊張することを指すのでしょうか。

井上医師:肩や首の筋肉が緊張して凝ること、また、メンタル面の緊張も要因として挙げられます。長時間のデスクワークや運転など、同じ姿勢を続けることで後頭部や肩、首、背中が凝って神経が刺激されて頭痛を発症します。

それに、精神的なストレスがあると筋肉のコリが悪化することに加え、神経の反応が過敏になって痛みが悪化します。

——それらは、テレワークを開始してから頭痛がひどくなったという読者のお悩みの原因として考えられそうです。

井上医師:症状や頭痛の持続期間を詳しく聞いて診断しないとわかりませんが、ほかの病気がない場合で、頭を締め付けるような痛みがデスクワークを開始してから数時間後や夕方、夜などに30分~数時間ほど続く場合は、緊張型頭痛の可能性が高いでしょう。

「片頭痛」は強い痛みで吐き気を伴う

——片頭痛の症状や特徴はまた違うのでしょうか。

井上医師:片頭痛の場合は、緊張型頭痛とは明らかに違う特徴があります。患者数は緊張型頭痛よりは少なく840万人といわれますが、思春期ごろから増えてきて、20~40歳代での発症が多く、女性に多くみられます。

主に「ズキンズキンと脈打つように痛む」ことで、「それが頭の片側に起こるけれど、両側に起こることもある」、また、吐き気やおう吐を伴い、目の前がチカチカするなどの前兆を伴うこともあります。おじぎや階段の昇り降りなどの日常的な動作で痛みが激しくなることが特徴的で、光や音に過敏となります。

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緊張型頭痛と片頭痛の「混合型」もある

——冒頭で紹介した読者の声では、「頭が押されるような痛みがあり、急にズキンズキンと痛むことも」と言う人がいます。

井上医師:緊張型頭痛と片頭痛の混合型があります。合併型ともいいます。「日によってどちらかが現れる」、また、「いつもは緊張型頭痛だけれどたまに片頭痛も」というケースもあります。

男性に起こる眼の奥の激痛の「群発頭痛」

——群発頭痛とは男性に多いと聞きますが、どういう症状でしょうか。

井上医師:群発頭痛は、「片方の眼の奥が何かで突かれているように激しく痛む」という特徴があり、痛むほうの眼の充血、鼻づまり、鼻汁などを伴います。20代~40代の男性に多く、日本頭痛学会は人口10万人あたり56~401人程度と報告しています。ほかの頭痛よりは比較的少なく、あまり認知されていないタイプの頭痛です。女性にも起こりますがまれです。

このような発作的痛みが毎晩、夜中から明け方にかけて1~2時間、1~2カ月にわたって毎日のように群発的に続くので、群発頭痛と呼ばれます。飲酒が誘因となることがわかっています。群発頭痛はあるとき急におさまるのですが、2~3年で再発するケースが多くあります。頭痛発作期には、日常生活に大きな支障をきたします。

ほかに、鎮痛薬を月に15日以上飲み続けることによって頭痛が慢性化する「薬物乱用頭痛」もあります。

——頭痛と言えば市販の鎮痛薬で様子を見てきましたが、痛みがこれらの特徴的であったり、長く続いたり頻発する場合は、医療機関を受診した方がいいように思えてきました。

井上医師:そのとおりです。とくに、片頭痛、緊張型頭痛と片頭痛の混合型、群発頭痛、薬物乱用頭痛は専門的な治療が必要です。脳神経外科、脳神経内科(神経内科)、頭痛外来などを受診してください。まずは問診や検査で、先に紹介した二次性頭痛で危険な頭痛ではないか、次に、どのタイプの頭痛かを診断し、適切な薬を処方します。片頭痛に適切な新しい注射の予防薬も登場しています。

——薬や、それぞれの頭痛についての具体的な治療法やケア法は次回以降に詳しく尋ねます。ありがとうございました。

聞き手によるまとめ

ひとことで頭痛と言っても多くのタイプがあり、それぞれに症状も治療法も違うということです。慢性頭痛(一次性頭痛)には、緊張型頭痛・片頭痛・その混合型・群発頭痛・薬物乱用頭痛があること、また、脳の病気による危険な二次性頭痛があり、市販薬でだましだまし過ごすよりも、早めに受診をして脱・頭痛を目指したいものです。次回・第2回は、緊張型頭痛について詳しく伺います。

★お知らせ
井上医師が理事を務める「大阪府内科医会」では、オンライン健康セミナー・第23回市民公開講座「美と健康はおなかから~腸活のススメ~」を、2021年12月12日(日)13:00~、15:00~の2回、開催します。無料で視聴できます(事前登録が必要です)。申し込み先:https://www.osaka-naika.jp

大阪府内科医会_2021年12月オンライン講座2

(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

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