新しいつながり方を模索してる
pha:この先何をやっていったらいいんだろうってときどき考えるんですけど、50代とかもなってみたらいろいろやることがあるんでしょうね。60代とかも。
スー:どっかでストーンと床が抜けそうで、怖くもあるけど。じゃあ会社員に戻って毎日真面目に働いてっていうのは、もう自分は「できない」んじゃなくて、「役に立たない」と思う。そういう訓練を随分休んでいるから。だからこれでやってくしかない。
pha:この先やりたいことって何かありますか?
スー:あるんですけど、あと自分が三人いないと無理なことばかりで。女ばかりを集めたフェスがやりたいんですよ。書く人もミュージシャンも演劇する人もみんないて、女子プロレスもやって。
あと、今って中年ファッション的に「これを着たらOK」がない時代なんです。下手すると10代と同じブランドの服を着てる。ユニクロとかね。全部カジュアル。その中で、みすぼらしく見えない、正解はなんだろうって悩む。だからストリートベースで腹落ちするファッション誌が欲しいんですよね。でも忙しくて、手がつけられない。
pha:スーさんの本を読んでて興味深かったのが、女友達との女同士のつながりとか連帯意識がすごく強いですよね。男同士のつながりは、もっとぼんやりした世界しかないよなって思いました。
スー:男友達特有の世界観は、われわれにはちょっとよく分からない。
pha:男は集まっても野球や映画の話しかしないって前に書いてましたね。
スー:たとえとして(笑)。でも、なんで自分の話しないんですか。
pha:なんでだろう。僕も男友達に会ったときは、ネットとか本の話とかばかりしてるかも。あとはあまり喋らずひたすら卓を囲んで麻雀を打ち続けるとか。
なんで自分の話をしないかというと、自分の話とか重い話は相手は興味なさそうだからそれよりも楽しいコンテンツの話をしてたいとか、みんなプライドが高いから自分の個人的な弱みとか話したくなさそうとか、そんな感じかもしれない。
スー:ドラマや漫画なんかの創作物でも、落ち込んでる男の男友達は、一切その件に触れずバカ話をすることで励ましますよね。あれ、その話しないの? って思っちゃうけど。
pha:本当はするべきですよね。でも僕もそういう個人的な話は女性に話すことが多いかもしれないな。
スー:飲み会で「野郎ばっかりだな、誰か女の子呼べよ」って言う人がいるって聞くけど。女だけで集まってて「女ばっかりだな、誰か男呼べよ」って聞いたことない。
pha:男同士で深くコミュニケーションするやり方をしてこなかったんだろうな。そういう文化がない。
スー:それをうまくやったのがphaさんではないのでしょうか。シェアハウスって。
pha:いや、シェアハウスは深く関わらないから、結局自分の話はしないんですよ。
スー:そうか、薄めるためのシェアか。密になるためじゃないんだな。
pha:そうそう。集まったら一緒にゲームをしたりするけど、それくらい。深い話はしない。それはそれで楽しかったけど。
スー:つながり方がうまいと目されていたphaさんが、新しいつながり方を模索してる。
pha:浅いままつなげるのはうまかったと思います。
スー:能町さんのところも新しいつながり方ですよね。
pha:子供が独り立ちしたあと、夫婦がお互いに好きなことやっているっていう人たちもいますよね。
スー:卒婚ってやつですね。
pha:最初から恋愛もセックスもない夫婦も、結果的にそういうのに合流してるのかもしれない。入り口は違うけど結果は同じという。
スー:そっか。子産み子育てがないと、そうなるかもしれない。
pha:恋愛もセックスもそんなにずっと続くわけじゃないですしね。
スー:そうやって落ち着いたと思ったところで、うっかり大恋愛とかしたら。
pha:あるかもしれないですね……。
スー:また性懲りもなくバカが……ってなる瞬間が(笑)。
pha:それはそれで楽しいかも。あと一回くらいあってもいいんじゃないですか。
スー:家解約したり引っ越ししたり、物理がちょっとキツイかな(笑)。
(写真:宇高尚弘)