「まずは自分の人生を面白がってみる」大人が子どもたちにできること【内田也哉子】

「まずは自分の人生を面白がってみる」大人が子どもたちにできること【内田也哉子】

「学校に行きたくないあなたと、かつて子供だった私たちへ」
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「死なないで、ね……どうか、生きてください……」「今日は、学校に行けない子どもたちが大勢、自殺してしまう日なの」

亡くなる2週間前の2018年9月1日、窓の外に向かってそうつぶやいていたという樹木希林さん。そんな母の言葉をきっかけに娘の内田也哉子さんが、不登校について考え、対話し、その末に紡ぎ出した言葉をまとめた『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)が8月2日に発売されました。発売から1カ月たち、累計発行部数は8万部を突破。各所で話題を呼んでいます。

内田さんが母・希林さんから受け取ったバトンのこと、子どもに対して私たち大人ができること、「樹木希林の娘」として生まれたことについて……伺ったお話を3回に分けてお届けします。

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まずは大人が自分の人生を面白がってみる

——私自身は独身で子どもはいないですが、友達や知り合いの子どもと接することもあります。何よりかつては自分が子どもだったことを考えると、不登校の子どもはもちろん、そうでない子に対しても大人としてできることは何だろうな? と考えます。内田さんは、大人が子どもたちにできることって何だと思いますか?

内田也哉子さん(以下、内田):どんなことができるか……。自分の子どもや、周りの子どもに対して、私たちが大人として、一人の人間として、いかに自分の人生を楽しめているか、面白がっているかという姿を見せることではないでしょうか。それによって、何か希望のようなものを託せるのではないかと思います。

そして、「外にはもっといろんな世界が広がっているよ」「今まで生きてきた数年の間だけでは計り知れないような考え方や未来が、君の人生にはあるんだよ」ということを伝えるためには、一人ひとりの大人がまず、「絶対にこうでなければいけない」という強迫観念から自由になる必要があると思います。

——周りの大人が楽しそうにしていることは大事ですよね。

内田:私は、日本の小学校に転校してきた頃に、無視されたりいじめられたりしたことがあるんです。一番つらかったのは、休み時間でした。

それである日、母に「みんなが集まって盛り上がっているときに、一人でいなきゃいけないのがつらい」という話をしたら、「バカね、あなたは一人で面白そうなことをしてればいいのよ」と言われました。「例えば、本を読んでうれしそうにしていたら、『なになに?』って向こうから興味を示してくるのが人間なんだから」って。「あなたにはテクニックがない」と、逆に怒られたんですよ(笑)。

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——すごい怒られ方ですね。

内田:11歳とか12歳くらいの自分にとって、母の言葉を理解するのは至難の業でした。子どもにとって、自分が拒絶されるということは世界の終わりにも等しいから。大人でもそうかもしれないんだから。

それでも母は、「仲間に入れてもらうということは、ある種、他人に依存することだ」とまで言うんですね。もちろん、大人になった今なら、母の言わんとしたことも分かるんです。それがそう簡単にできることじゃないことも……。

何より、母が言った、自分ひとりで「フリ」だけでも楽しそうにする、ということは、世間からすれば「逃げ」かもしれないですよね。気持ちを別のところにそらしているだけだし、悩みの根本が解決されるわけではないのだから。いじめだって、止まらないかもしれない。でも、そうじゃない時間をなんとか確保することによって生まれる心のゆとりって、あると思うんですよ。今はそこに賭けたい気持ちもあります。

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「家庭を築いてから社会に出るのも面白いんじゃない?」

——日本では学校を辞めるとか、休むという選択はレールから外れる感覚があります。

内田:母は、そういうときも、ためらいなく「辞めればいい」って言いました。ああ、そうだ。私、振り返ってみたら2回言われているんですよ。1回目は小学6年生で、「学校に行きたくない」と毎日泣いていたとき。2回目は大学生で旦那さん(本木雅弘さん)との結婚が現実味を帯びてきたとき。そのときも、「辞めればいいじゃない。勉強なんていつでもできる。長い人生において、学ぶことはいつじゃなきゃいけないなんて、誰が決めたの」って言われました。

——でも、確かにその通りですよね。

内田:母には、「結婚は深く考えてするものじゃない」という持論があったんです。子どもが欲しいのであれば、そして産めるのであれば「早くやっちゃいなさい」と。家庭を築く経験をしてから社会人になるのも一つの生き方だし、「それは世の中にとっても面白いんじゃない?」と言っていました。

「こうでなきゃダメ」という感覚が全くなかったんですね。一見、確固たるポリシーがあって、揺るがない人に見えるかもしれませんが、別のいいアイデアがあればすぐに採用するんです。決断も早いし、感覚がとても鋭かった。

——前回のお話で「(樹木さんは)最後まで一貫していた」というお話もありましたが、一方ではすごく柔軟な部分もあったんですね。

「こういう生き方もあるんだな」と思えば選択肢も広がる

内田:それこそ、海外の大学に行けば、10代の子もいれば、お年を召した方までいて、そこには何の違和感もない。定年退職して、子育ても終わって、学びたいという気持ちになったから通っているだけ。それってすてきな人生だと思います。

社会の側にも、一人ひとりの選択や生き方を受け入れる度量があるし、寛容なんですよね。もちろん、文化的・地理的に見て、「一人ひとりが違って当たり前」という前提で成り立っている社会では、そうせざるを得ない事情もあるから、一概に海外がいいとか、だから日本はよくないなどとは言えないし、言いたいわけでもありません。

ただ、「寛容さ」について言えば、一つのルートがある一方で、そこからはみ出してしまった人にはまた別のルートがあってもいいと思うんです。何より、一人ひとりが選んだルートについて、みんなで「いいね!」と言える寛容さがあれば、その空気は子どもたちにも伝わっていくと思います。

だから、最初のご質問に戻るなら、やっぱりまず大人たちが、多様な想像力と行動力を持ったうえで、自分の人生を謳歌(おうか)していけたらいいですよね。子どもたちにとって、そういう大人が自分のお父さんやお母さん、先生といった身近な人であれば、「こういう生き方もあるんだな」と、自然と目の前の選択肢は広がっていくと思います。

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※第3回は9月16日(月)公開です。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、撮影:宇高尚弘、撮影協力:EDGEof)

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