花粉を避ける旅先選びのポイント 北海道、沖縄、花見は西へ【耳鼻咽喉科専門医が教える】

花粉を避ける旅先選びのポイント 北海道、沖縄、花見は西へ【耳鼻咽喉科専門医が教える】

花粉症によるつらいくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが長々と続く中、少しでもこれらから逃れる方法はないものかと考える人は多いでしょう。

耳鼻咽喉科専門医でとおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)の遠山祐司院長によると「重症の患者さんには、花粉がほとんど飛散しない地域への転地療法を提案することがあります。現実にはなかなか難しいことですが、いっときでも症状を休憩するためには、花粉を避ける旅に出るのもいいでしょう」ということです。詳しいお話を聞いてみました。

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北海道と沖縄県はスギとヒノキの花粉が飛ばない

ちょうど春や連休の旅先を考えていたところです。遠山医師はまず、花粉症の最大のケア法について、こう話します。

「花粉症の症状は1~3カ月もの間、継続して起こります。そのため、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目の症状だけではなく、夜中に何度も目が覚める、寝つけないといった睡眠障害や、憂うつな気分が続いて大きなストレスとなることがあるでしょう。これは二次的な症状と言えます。

こういった苦しい症状を避けるための花粉症の最大のケア法は、花粉が飛ばないエリアに移動することです。たとえ一時的としても症状から解放されるため、ストレスの改善になるでしょう」

この春はぜひ、そうしたいものです。遠山医師は、次に、花粉症を発する花粉の種類の中でも、患者数が多いスギ・ヒノキ花粉から逃れられるエリアについて、具体的にこう挙げます。

「国内では、北海道と沖縄県、鹿児島県の奄美群島、東京都の八丈島や小笠原諸島は花粉が飛ばない、あるいはとても少ない地域として知られています。

北海道は、スギとヒノキの植生が行われていないためにほとんど存在せず、スギとヒノキによる花粉症は起こりにくいでしょう。ただし、4月に入るとシラカバの花粉が飛び始めて6月に飛散量がピークになるので、シラカバにアレルギーがある人はこの時期は注意が必要です。

また、沖縄県は気候が亜熱帯になること、奄美群島や八丈島、小笠原諸島もスギやヒノキの自生がほぼ見られず、本州から距離があるために届きにくいと言われます」

これは選択肢が明解です。北海道や沖縄県の本島や周囲の宮古島、石垣島、西表島など島では、花粉を避けるツアーを呼び掛ける自治体や旅行会社もあります。

花粉の飛散ピークは九州と東北で1カ月の差がある

それでは、日本の本州では、花粉前線の動きはどうなのでしょうか。遠山医師はこう解説をします。

「日本は緯度の関係で、だいたい南西から北東へ花粉前線は移動します。毎年の気候や気温など気象条件によって変化はありますが、日本は南北に長い地形の関係で、九州と東北地方では、花粉が飛び始める時期は約1カ月の差があります。

スギ花粉は、1月下旬から2月上旬にかけて九州の南西のエリアのほうから飛び始め、次第に北東へ進みます。中国地方、四国、近畿地方には2月上旬から中旬、東海地方は2月中旬、関東甲信越地方が2月中旬から下旬、東北地方が3月上旬からとなります。その1カ月後ぐらいが飛散量のピークとなるでしょう」

そうすると、4月上旬あたりにスギ花粉症をさけた桜の花見の旅に出かけたい場合は、九州や中国、四国がよいということでしょうか。

「そうだと言えます。ただし、ヒノキ花粉は九州から近畿まで4月上旬がピークになるので、ヒノキの花粉症の人は注意してください。そういった情報を大まかに知っておき、花粉の飛散量を伝えるマップをインターネットやテレビのデータ放送などで調べることができるので、具体的なエリアを絞り込んで調べましょう。*

また、スギやヒノキは1,000メートル以上の高地には生えないため、それ以上のスポットに滞在する間は花粉の影響は少ないと言えるでしょう」と遠山医師。

*環境省花粉観測システム(愛称 はなこさん)

では、もっとも避けたいエリアはどのあたりでしょうか。遠山医師は、
「毎年環境省が実施する実測総飛散量調査などで、関東甲信越地方がもっとも花粉の飛散量が多く、飛散時期も長いことがわかっています。スギ花粉は4月下旬まで、ヒノキ花粉は5月下旬ごろまで飛びます。関東平野はスギ・ヒノキの植生が広く見られ、四方八方から飛散するからとされています。

年度によって県ごとの飛散量は違いますが、このエリアの場合、ヒノキの花粉症がある人はゴールデンウイークはもちろん、5月下旬までは花粉ケアを怠らないようにしましょう」と伝えます。

前年の夏が猛暑なら花粉の飛散量が増える

毎年、今年は花粉の飛散量が多い、少なめ、例年並みなどとニュースになります。どういう条件でその量が予測できるのかについて、遠山医師はこう説明を続けます。

スギやヒノキの花粉は、日照時間が長くて気温が高い夏の翌年の春に飛散量が増える傾向にあります。猛暑だと花粉を飛ばす雄花の成長が促されて大量につくられるからです。2018年のような記録的な猛暑の次の春、つまり2019年春に飛散量が増大したのはそれが原因と言われます。

また、冷夏で雨天が多い夏の翌シーズンは飛散量が少なくなるとされ、そういった気象や、前年の総飛散量などを参考に予想されています」

あのつらい猛暑は、花粉をもまねくということです……。

海外で花粉が少ないのは、ハワイ、韓国、台湾、タイ

海外旅行ではどのエリアや国を選べばいいでしょうか。遠山医師は、
「スギとヒノキは海外ではほとんど自生していないと言われます。スギやヒノキの花粉症は日本だけの病気だ、日本の国民病だと言われるのはそれが理由です。

スギやヒノキをはじめとしてほかの花粉も少なくて人気が高いのは、ハワイ、台湾、韓国、タイでしょう。

欧米は、ブタクサやイネ科の花粉が飛ぶことが多いとされます。これらにアレルギーがある場合は、行きたい国と渡航の時期から、事前にインターネットや旅行会社に問い合わせて飛散状況を調べて選んでください」

国内では、北海道と沖縄県などスギとヒノキが生えていない場所を選び、花見やゴールデンウイークには花粉の飛散が終了しつつある九州など西の方を目指すのが賢い選択のようです。参考になるのではないでしょうか。

(取材・文 海野愛子/ユンブル)

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