秋山ゆかりさん出版記念イベントレポート 後編

セクハラおじさんは変えられるのか? 働く女性の出世のヒント

セクハラおじさんは変えられるのか? 働く女性の出世のヒント
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事業開発コンサルタントの秋山ゆかりさんの新刊2冊同時刊行を記念して、5月末に版元のディスカヴァー・トゥエンティワン(東京都千代田区)で開催された座談会。

前編では、女性同士で分断が起きてしまう問題と、家事のアウトソースをすることによる罪悪感について、登壇者のさまざまな立場や考え方から議論しました。

続く後編では、女性が組織で自由に働き、出世していくために必要なことを考えます。未だ根深いセクハラ・パワハラ問題について、女性自身はどう向かっていくべきなのでしょうか。

<参加者>
干場弓子さん:株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 取締役社長
秋山ゆかりさん:事業開発コンサルタント
浜田敬子さん:Business Insider Japan 統括編集長
高田麻衣子さん:オクシイ株式会社 代表取締役

(左から)干場さん、秋山さん、浜田さん、高田さん。

(左から)干場さん、秋山さん、浜田さん、高田さん。

「25歳を過ぎたオンナのすっぴんはセクハラ」と言われて

干場弓子さん(以下、干場):これまでは女性同士の分断についてお話をしてきましたが、ここからは会社や組織で女性がどう立ち向かっていくべきかお話できればと思います。男性からの扱いで理不尽に思ったことや、若い頃と今。ある程度責任を持つ立場になってからの違いについてありますか?

高田麻衣子さん(以下、高田):現在の話をすると、私は組織のスタッフは60人全員女性です。役員には男性が2人います。お客さまも父親以外は全員女性なので、現在の職場での男性との理不尽な関係性はありません。ただ、それまでは不動産業会の総合職で、9割が男性という環境の中で女性初の管理職ということもあり、風当たりが強いなと思うことはありました。

干場:どのような風当たりですか?

高田:例えば、妊娠・出産を経てからは、子どもがいるからといって責任のある仕事から外されたり、第2子を授かったときに「またか」と陰口をたたかれたり。若い頃だと、「25歳を過ぎたオンナが会社にすっぴんで来たらセクハラだ」とか、生理中であることを揶揄されたこともありました。

干場:ええ、ひどい。

高田:ただ、私はもう聞き流してしまっていましたね。これが彼らにとってのコミュニケーション方法なんだろうな、と思って。人によっては深く傷ついてしまうこともあるだろうなと思っていたので「他部署の女性に言ったら嫌われちゃいますよ」と、静かに釘を刺していました。

できる/できないも聞かずに仕事を外された平社員時代

干場:セクハラ・パワハラについて聞きましょう。いろいろなニュースが報じられたときにSNSなどで秋山さん、浜田さんも「怖い目にあった」と発信されていましたね。

浜田敬子さん(以下、浜田):財務事務次官の事件がありましたが、メディア業界は昔からセクハラ・パワハラが多くありました。今は少し改善されましたが、若い時は取材先、社内でのセクハラももちろんという時代でした。

平社員の時に一番イヤだったのは、女性だからという理由だけで仕事の機会が奪われてしまうこと。女性だからできないだろうという前提で、私の希望も聞かずに話が進んでいく。阪神大震災のときに、現場に行きたいと言ったのですが、女性が一人いるだけでトイレの問題や泊まる場所も大変だからと。2001年の同時多発テロではすぐにニューヨークの現場に行けたのは、「現場に行きたい」と主張し続けた女性記者たちの努力が実を結び始めたからかなと思っています。

それ以上に今深刻なのは、女性が管理職になるときではないでしょうか。私も、同期の中では比較的早めに副編集長になったことで、同世代や年上の男性部下に無視されたりゴミ箱を蹴られたり、あからさまに言うことを聞いてもらえなかったりしました。

社内政治はきたないこと?

干場:うーん。男性からすると、「オンナは下駄をはかせてもらってズルい」と?

浜田:「何で俺たちがオンナの言うことを聞かなければいけないんだ」という気持ちだったのかもしれません。なので、圧倒的な実力がほしいとずっと思っていました。副編集長を9年やっていた時期には、ああやっぱり女性には2番手が向いているのかなと思っていたときもあります。

でもあるとき、取材で知り合ってメンター的な存在になった女性役員の方に「政治力を身につけなさい」と言われました。会社の中でやりたい仕事を通すときに、誰に交渉してどの人に根回しをしたら通るのかっていう。「浜田さん、きれいごとばかり言ってもやりたいことはできないよ」って。

秋山ゆかりさん(以下、秋山):私も社内政治が汚いものだと思っていて、実力さえあればうまくいくと思っていました。でも、根回しが足りなかったときに、社長に呼ばれて「思いやりが足りない、このままじゃクビだよ」と。ただ、メンツや相手の仕事を奪わないことって大切なんですよね。

私も最初は2番手でいいと思っていたのですが、そのポジションでは組織の文化を変えることができないんです。トップになれば、裁量はぐんと増えるし、セクハラやパワハラなどの理不尽なことがクライアント先にあったとして、たとえそれが大口顧客でも切るという選択ができる。私たちにもお客さんを選ぶ権利があると言える。そういった意味でも上に上がっていくってすごく大事だし、会社の文化を変えることにつながるなと思いました。

オンナの用法用量は正しく使えば大丈夫

干場:女性の場合って、仕事がうまくいくと「オンナを使った」と言われて、失敗すれば「オンナだから」と言われる。そういうことってありませんか?

秋山:ありますね。「あいつは枕営業をしているに違いない」という怪文書がずいぶんと出回りましたよ。

一同:えぇ!?

秋山:でもそれは言う人が問題であって、潔白なら気にする必要は全くありません。本の中にも書きましたが、オンナを使うことだって、私は用法用量を正しく守れば問題ないと思うんです。

高田:私の場合は、会社員時代に上司にかなり守られていたのだと、独立して気づきました。事業をスタートさせたばかりのころは、まるで生まれたてのヒヨコ状態で、周囲の人に助けてもらわないとやっていけない。でも、世の中にはいい人ばかりではなく、悪いおじさんもいます。そのおじさんたちの間をうまく渡り歩いて行かないと、自分の成し遂げたいことはできない。とはいえ今までみたいに守ってくれる人はいないと創業の時期は悩んだこともあります。

組織のおじさんは変えられるのか?

浜田:セクハラだけでなく、パワハラや会社の不正が許せない、という正義感を持っているのは男性よりも女性の方が多い気がしています。ただ、直訴したり主張したりすると会社から疎ましがられるんですよね。そのときにどう戦っていくかが大事かなと思います。会社や上司は自分に不利なことが起こりそうだと察知すると、突然モンスターと化すこともあります。そういうときに自分の身をどう守ればいいのか知っておいた方がいいと思うんですよ。

干場:そういう組織の男性はどうしましょう。

秋山:文化を変えるというアクションもしますが、それはいざとなったら辞められる土台を作ってから。その上でぶつかっていくときには相手を完全に潰そうとしないこと。私の場合は、選択肢を提示して本人に判断をゆだねるようにしています。

干場:それで本人は変わるかしら?

秋山:たとえ、相手は変わらなくても、周りはそれを見ているので、少しずつ状況は改善されるだろうと思います。私は損しているように見えるかもしれないけど、次の世代の人を少し変えるという意味では自分のポジションをかけてやる価値はあると思っています。

浜田:自分より上の世代のおじさんの意識を変えるのは、時間が無駄だなあと感じてます。本当に苦しくてツラいなら、そこから逃げたほうがいい。転職でもいいし、別の部署に異動してもいい。人の本質は変わらないと思って付き合う方がいい。

私が管理職になってから味方になってくれたのは、年下の男性たちが多かったです。社内でも社外でも。やりたいことを声に出していると、一緒にやりたいという若い社員が集まってきてくれたんです。なので後輩たちには、味方になってくれる人は誰か、探しておいた方がいいよといつも言っています。

干場:要するに、頭の固いおじさんたちは放っておいて、若い人たちに期待しましょうということですかね。ただ、確実に社会は変わりつつあると感じました。今日はありがとうございました。

(構成:園田菜々、編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

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