『親友いないの誰?』山田可南さんインタビュー後編

オンナの親友とは“結果”である。山田可南さんが思う親友の作り方

オンナの親友とは“結果”である。山田可南さんが思う親友の作り方

学生時代はなんでも相談できる「親友」がいた人も多いはず。でも年を重ねるにつれて「親友」と呼べる存在がいなくなってきてしまうのはなぜだろうか——そんな大人の友人関係に関する疑問について、『親友いないの誰?』(集英社クリエイティブ)の著者、山田可南さんにお話を伺うこのシリーズ。

後編は「大人の友人関係のコツ」について聞きました。

【前編】ライフスタイルの変化による、人間関係の変化

価値観が違うからこそ、尊重する姿勢を

——前回は、ライフスタイルの変化で大人になると友人関係が「狭く浅く」なり、親友が消えてしまうのではないかとのことでしたが、大人になっても「狭く深い」付き合いができる友人を持つにはどんなことに気をつけたらいいと思いますか?

山田可南さん(以下、山田):やはり「相手の価値観を否定しない」ことが大切なのではないでしょうか。ライフスタイルが違えば、価値観や意見が違って当たり前。そんなときは「あなたはそう思うんだね。でも私はこう思うよ」と、一度相手を受け入れてから自分の意見を伝えるなどの工夫が必要だと思います。

——価値観の違いが表面化してくるからこそ、それを尊重しあう姿勢が大切ということですね。

山田:『親友いないの誰?』の2巻で、親友に「旦那の尾行をしてほしい」と頼まれる話を描いたのですが、じつは私の実話なんです。そのときは、正直「え?尾行?」と思いましたが引き受けました。今考えると、彼女は、私の漫画家としての興味が勝り、価値観を否定しないと思ってくれたのかも(笑)。

価値観が違っても「お互い大切にしていることを否定しない」ということができたからか、彼女とは今でも友人関係が続いています。 漫画の中は「親友の願いをどこまできけますか……」と続き、決してハッピーエンドとはいかないのですが……。

©山田可南/集英社クリエイティブ

©山田可南/集英社クリエイティブ

——たしかに「自分が大切にしていること」を相手も大切にしてくれていると感じられることが、 友人関係を継続するうえで大切なのかもしれないですね。

山田:私にも中学時代からずっとよい関係性が続いている友人がいるのですが、その友人は私が漫画家として成功しようが失敗しようが、全然変わりなく接してくれるんですね。お互いに大切にしていることは尊重しつつ、中学のときと変わらずくだらない話もできる。そんな関係性はとても居心地がいいなと思います。

男女間の親友ってあり得る?

山田:価値観が違うというと、2巻では「男女で親友」というふたりも描きました。私は、ずっと男女間の友情は「あり得ない」と思う派だったのですが、最近「あり得る」かもと思うようになりました。

——どうしてですか?

山田:これもライフスタイルが変わったことが大きいと思います。自分が結婚出産を経て40代になり 男性から女性として見られなくなった気がするというか、女であることを意識する場面が減って、すごくラクな気持ちになったことが大きいです(笑) 。

——まだ早いですよ!

山田:『親友いないの誰?』を描こうと思ったとき、友人たちに「親友」について話を聞いたんです。そのとき「旦那が親友」という人が結構いたんですね。面白いなと思ったのは、「旦那が親友」という人は、セックスレス夫婦が多かったこと。

親友夫婦になったからセックスレスなのか、セックスレスだから親友夫婦でいられるのか、これはまだ研究中のテーマですが、興味がつきないところでもあります。

女の親友とは「結果」である

山田:あとは、親友だからといって気を抜きすぎるのではなく、「親しき仲にも礼儀あり」。最低限のマナーを守ることも大切なのかなと思っています。

以前、「一生仲良くしようね」と話すほど仲がよかった親友がいたのですが、ある日SNSがきっかけでケンカをしてしまって、それっきり疎遠になってしまいました。ちなみに1巻で描いた「お金あるからいいじゃん」と言われたというエピソードと、友人からのご祝儀が1万円だったという話も、彼女が元になっています。

小さなモヤモヤが積み重なった結果、ケンカになってしまったのだと思います。

ただあんまりにも傷つけまいと慎重になりすぎると、相手に踏み込めなくて親しくなるチャンスを掴みにくいという側面もあるのでそこが難しいところでもあるんですけどね(笑)。

——どんなに気を付けていても関係性が崩れてしまうことがあると思うとなんだか切ないですね。

山田:たしかにそういう部分もあると思いますが、私は「女の親友は結果」だと思っていて。

——親友は結果?

山田:はい。たとえこれからどんな関係になってしまうとしても、昔仲がよかったときの思い出が消えてしまうわけではなく、ずっと心に残り続けるものだと思うんですよね。だから「一時は親友だった」という結果こそが大切なんじゃないかな、と。あと、気付けば腐れ縁だよね、という、そういう結果もあると思います。

©山田可南/集英社クリエイティブ

©山田可南/集英社クリエイティブ

©山田可南/集英社クリエイティブ

©山田可南/集英社クリエイティブ

——たしかにそうですよね。正解がなく、未来も親友でいられるという保証はないけれど、一緒に過ごした時間を振り返って「すごくいい時間をすごせたな」「あの人には助けられたな」って思えるだけですごく幸せなことだと思います。

山田:そうですね。相手に期待しすぎず、適度に節度を持って付き合う。もし何かのタイミングで疎遠になったとしても、ライフスタイルがまた合えば復活するかもしれません。私自身、復活した関係は結構ありました。濃密な時間があれば生涯一緒にいなくてもいい。大人の「親友」ってそういうものではないかと思います。

『親友いないの誰?』の第2巻のデジタル版が配信中! こちらから試し読みができます。

(取材・文:岡本実希)

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