通訳者に聞く仕事術・第4回

ジムはあえて行く日を決める、睡眠時間は絶対削らない…通訳者の仕事術

ジムはあえて行く日を決める、睡眠時間は絶対削らない…通訳者の仕事術

「同時通訳者」と言うとどんな仕事を思い浮かべるでしょうか? 真っ先に海外ニュースの通訳や、取材やインタビューでの通訳が頭に浮かびますが、そのほかにも国際会議の同時通訳や企業の株主総会、記者会見、翻訳や執筆など「通訳」が発生するありとあらゆる場所に仕事が発生するそう。

毎日が「本番」でありとあらゆる現場をこなす同時通訳者の仕事にはきっと私たちの仕事にも役立つヒントもあるにちがいない……というわけで、インプット術やタスクの整理方法、時間の使い方などの仕事術を聞きます。

お話を聞くのは、通訳・翻訳サービスを提供する「テンナイン・コミュニケーション」所属の通訳者で、現在は「CNNj」「CBSイブニングニュース」などで放送通訳者として活躍中の柴原早苗(しばはら・さなえ)さんです。最終回は「仕事で気をつけていること」について聞きます。

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睡眠時間は削らない

——1回目からお話を伺ってきて、同時通訳の仕事は通訳の「本番」だけではないんだなと思いました。体調も万全にしておかないといけないと思うんですが、1日のスケジュールを教えてください。

柴原早苗(以下、柴原):例えば今日ですと、午前3時半に起きて、5時前に家を出て、ニュースのスタジオに行って10時に帰ります。何もない日は家に帰り、そこから次の仕事の準備をしたり、あるいは大学の授業の準備をしたりというふうに過ごしています。朝方ですので、夜の7時、8時くらいになると眠くなってきますね。

——睡眠はちゃんと取れているんですか?

柴原:削らないようにはしています。削ってしまうと頭が回らないので。

——やっぱり睡眠は大事ですよね。

固定でスケジュールを決めてしまおう

——ほかに自分の体の状態をベストにしておくために心掛けていることは?

柴原:スポーツクラブに週3回は行っています。火、金、土は必ず行くようにして、それを中心にスケジュールを立てているくらいです(笑)。

CNNのシフトは早朝シフトに入れていただいていて朝の10時には終わりますので、昼間のレッスンに行けるんです。ですので、固定で「この日はスポーツクラブに行く」と決めてその前までの時間を有効に使うようにしています。

スポーツクラブから帰ってくると、すぐに子どもも下校してきます。そのころはくたびれて何もできなくなってしまいます。そういう意味では本当にメリハリがあって助かっていますね。

——固定で決めるのがいいんですね。

柴原:いつでも行けるからよいというフリータイムのジムなんですが、あえてこの日とこの日とこの日に行くと決める。大好きな先生のレッスンで毎回通っていると、常連メンバーもいてお友だちにも会えますので、楽しいですよ。

——私もいつでも行っていいホットヨガに行っていたんですが、いつの間にか足が遠のいちゃいました。

見るものすべてが“先生”

柴原:何かお気に入りの先生とかレッスンが見つかると続くと思います。なので、私は先生の教え方や雰囲気作りを見て、自分の大学の授業に結構使える要素は使わせていただいているんです。

「ここでこういうタイミングで声掛けするのか」などと参考になるので。授業運営のヒントをいただきに行く場所というのもありますね(笑)。全部チャンスになれば面白いなと思って。

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——一見、関係ないことも視点を変えればということですね。

柴原:自分以外は全部、学びの対象というか先生という感じですね。なので、例えば趣味で講演会に行ったときも「こういう立ち方で、こういうふうにパワーポイント使うんだ」とか「ここでこういう間を入れるのか」というのを見ちゃいますね。

——なるほど。確かに参考になりそう……。

柴原:飛行機に乗ったときもCAの方のスカーフの結び方を見て「あれ可愛い結び方だな」と観察して、ヒントをもらったり……。見るものすべてが自分にとって何かしらの“先生”という感じでいますね。

それこそ、今もカメラマンの方が写真をお撮りになっているのを見て「ひじはこうやって構えるんだな」というのも、自分にとっては参考になるので(笑)。そういうところも拝借してますね。

——おお! そんなふうに見ていたなんて気づかなかったです(笑)。

柴原:講演会に行くのも、ジムに行くのも趣味でもあるし仕事でもあるし、その境目がないのがすごく面白い。だからこの仕事がずっと続いてるんだろうなと思います。

——ありがとうございました。

(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

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