仕事は順調、それなりに毎日充実もしている。
だけど、「恋愛だけはうまくいかない……」そうお悩みの女子は多いよう。
というわけで、「私たちの恋愛がうまくいかない理由」を独身研究家で『超ソロ社会「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)の著書もある、荒川和久(あらかわ・かずひさ)さんにお聞きするシリーズ。
第4回目は、「理想のパートナーが見つからない理由」について聞きます。
第1回:独身研究家に聞いた「私たちの恋愛がうまくいかない理由」
第2回:「私たちがデートでつまずくワケ」
第3回:「恋愛結婚」は幻想です。浮気や不倫が流行る理由
「理想のパートナー」なんてどこにもいない
——荒川さん、荒川さん。第1回からずーっとバッサリ斬られ続けて、恋愛と結婚はそもそも概念が違うというのは理解しました。
じゃあ、「結婚したい」という時に、もう「スペックが高い相手がいい!」とは言いません。「専業主婦になりたい」とも言いません。
ただ、理想を言えば、自分と対等でいてくれる人、もしくは尊敬できる人がいいなとは思ってます。そこまでハードル高いことを言っているわけではないのに、理想のパートナーが見つからないのはなぜでしょう?
荒川和久(以下、荒川):その「理想」っていうのがくせ者ですよね。第2回目でも話しましたが、もし仮に「あの人が好き!」って人がいるなら、「理想」じゃないですよね、現実にいる人だから。
でも、自分でつくった「理想」って架空の存在です。そういう存在しないものに縛られすぎて身動きとれなくなっていたりしませんか?
——(身に覚えが!!)
荒川:理想の人なんて、どこにもいないんですよ。存在しない理想を突き詰めていけばいくほど、現実じゃなくなります。だから、「理想」を追い求めること自体、自分を苦しめるだけだと思う。
例えば、自分より高収入の男性がいいという理想を掲げたとします。今や、女性の大学進学率も上がっているし、四年制大学を出て就職して、年収1000万超えの女性も出てきて、女性のレベルがどんどん上がってるわけです。
でも、一方、男性はバブル崩壊後、むしろ給料はどんどん下がっている。そんな中、一部の高収入の男性は、そもそもとっくに誰かと結婚して少なくなっているわけですよ。
ということは、いないんです。どこにも! 理想の男なんていないんです!(キッパリ)
——(なんてこったい!)
「自分と同等」がそもそも厳しい
——自分と同じくらいのレベルの大学を出て、同じぐらい稼いでる独身男子すらもこの世にいないってことですか!
荒川:そもそも、自分と同等、もしくは尊敬できる人って、それなりに稼いでるってことでしょう。
お金は大事だから、ちゃんと稼げるパートナーと結婚したいっていうのは当たり前。それは全然否定はしないんですけれど、現実生活を築こうと思った時に、自分より稼いでいる、もしくは同等レベルの人っていまだに独身で何人残ってますか? って話ですよ。
例えばそんな男性が、男性全体の中で100人残ってたとしても、女性側で狙ってるのが何万といる。その女性の中でも、上位100人しか結局マッチングされないわけですよ。
で、もし仮にあなたが158番目だったとします。何の順位かは別にして、説明の便宜上仮に。158番って何万人の中では上位だけど、そもそも希少価値の高い100人の男性が、何でわざわざ158番目の女を選ぶんですかっていう。理屈に合わないじゃないですか。
——選ぶ、選ばれるって観点で物事を考えたくはないけど……。その理論で言えば、自分と同等の男性をパートナーにしたいっていうのも幻想なんですか?(泣)
荒川:これは経済学でいうマッチング理論っていうものなんですけど、全員が全員、「自分の理想」というものを追い求めてマッチングしようとすると、悲しいことにほとんどの人がマッチングされないって結果になるんです。
自己最適を全員が求めだしたら、ほとんどの人が自己最悪になるってことです。
——(ガーン)
自分より「下」は狙わない女子たち
荒川:第3回で話したように、昔、みんなが結婚できたのは、お見合いみたいに自己最適を度外視してマッチングさせられたからですよ。それは確かに「不自由」だったかもしれないけど、果たして「不幸」だったのか? といえば、そうでもなかったようにも思います。
今、未婚率が上がっているのは、「結婚したくない」「結婚は必要ない」って考えている人が増えているのもあるでしょうけど、したくてもできなかった人だっているわけですよ。それは、自分で選択する自由はある反面、マッチングされなかったことは自己責任といわれてしまうわけです。
男性は、年収が低い人ほど未婚率が上がるけど、女性は全く逆。年収が高いほど未婚率が上がる。これは男性の「下方婚」志向、女性の「上方婚」志向と言われているものです。
本当は自分より収入が上の男性を狙ってた女性は、自分より収入が下の男を狙いにいけばいいじゃんって話なんですけど、結局女性は絶対それをよしとしないからね。
——うっ……。
男性も「男たるもの」に縛られている
——確かに、大学の同級生の男子もみんないい会社に勤めてるし、そもそもまわりにいる男性のレベルが高いっていうのはあるかも……。
でも、結婚はお金の問題だけじゃないと思ってます!
荒川:というか、男性側も自分より収入が多い女性とは結婚したくないんですよ。マッチングされたくないんですよ。
——ええ!! それは何でですか? よく言う「プライド」の問題ですか!?
荒川:プライドの問題も……あるでしょうねぇ。男は男ですごく縛られている。
男には、未婚者でも「稼いで家族を養ってナンボ」だって意識があります。それは、本人の意識とは別に、ずーっと潜在的な社会規範として身に染みついているもんなんですよ。「男は強くあるべし」「男はグチを言ってはいけない」とか「男は弱いものを守るものだ」とか美徳とされてきたわけです。
でもそれって、さっきの理想のパートナーという架空の存在に苦しめられる女性と同様、理想の男性像という架空の自分に、男性もまた苦しんでいるってことなんですよ。本来、結婚とは「現実」であるはずなのに、男女ともお互い「理想」という「ありもしない存在」の呪縛にとらわれている。そこから解放されないと、この未婚化は解消されないと思うんですね。
——昔ほど、「男らしさ」「女らしさ」に縛られない社会になりつつあると思っていたんですが、いまだにそうなんですね。男性も男性でしんどいんですね……。
そして、お話を聞いていて「私たちの恋愛がうまくいかないのはなぜですか?」という問い自体が間違ってたってことがわかりました……。
荒川:そう、「結婚できないのはなぜですか?」ならわかります。恋愛がうまくいったところで、それって何の問題解決にもならないのでは? って僕は思いますけどね(笑)。
——じゃあ、荒川さん、結局私たちはどうしたらいいんですか!? なにかアドバイスやヒントをくださいよ!(泣)
荒川:じゃあ、それは最終回にお話しましょうか。
(ウートピ編集部・北村なりこ、写真:宇高尚弘/HEADS)