「インターネットで一番数字を持っているライター」として知られるヨッピーさんによる初の著書『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)が9月21日、発売されました。
商社マンだったヨッピーさんの、「死ぬほどつまらなかった」会社員を辞めて「好きで仕方がなかったこと」を仕事にするまでのエピソードや、「こっそりと二足のわらじを履こう」「趣味を消費型から生産型へ」など、ヨッピー流の仕事術がギュッと詰まった一冊です。
「(本書を)女性にこそ手に取ってほしい」と話すヨッピーさんに3回にわたって話を聞きます。
「一歩踏み出す」ではなく「つま先でつつく」くらいでいい
——このたびはインタビューをお引き受けくださり、ありがとうございます。今回のインタビューなんですが、実は「デキるおじさんに仕事術や仕事観を聞きに行く」という裏テーマもあって、「ネットで一番数字を持っているライター」と言われるヨッピーさんに、新刊の内容に絡めて仕事についていろいろ伺えればと思います。
ヨッピーさん(以下、ヨッピー):ええと、僕みたいなちゃらんぽらんな人間が「デキるおじさん」っていうのには完全に違和感がありますが、よろしくお願いします!
——本を出版されるのは初めてなんですね。本を書いてみようと思ったきっかけは?
ヨッピー:僕の人生のテーマが「好奇心に従う」なんですが、まだ本を出したことないので、やってみたかったっていうだけの話ですね。いろいろやってみたいことがある中のひとつが「本を出す」っていうことだったっていう。他にもドイツにあるらしい、エッチなサウナにも行ってみたいです。
——「好奇心に従う」っていいですね。ヨッピーさんの本を読んで「やっぱり好きなことをやったほうが楽しいよね」と改めて思いました。
ヨッピー:そうなんですよ。みんな「やってみる」に対して大げさに考えすぎているのかなって思います。世の中を見渡しても、ビシネス書を読んでも「リスクをとってチャレンジをしろ」っていう言い方がされると思うんですが、別にリスクをとってまでやらなくていいと思っていて。
そんなもん生存者バイアスじゃないですか。サイコロ転がして偶数が出たら勝ち、奇数が出たら負けっていう勝負をしてね、勝って赤ワイン飲みながら調子こいてる人達に「勝因は?」って聞いたらそりゃあ「リスクを取ったからです」って言いますよ。じゃあ、負けた人達はどうなんの、って。地下牢みたいな所に放り込まれて変な棒をグルグル押す仕事をさせられてるかもしれない。
「一歩踏み出してみよう」という言い方もされますが、一歩踏み出した先の足場が崩れたら身体ごと落ちちゃいますよね。「よーし、リスクを取るぞー!バンザーイ!」って言って不安定な足場に飛び乗って落ちちゃったらシャレにならないじゃないですか。ロシアのYoutuberじゃないんだから。
だから、「一歩踏み出す」んじゃなくて「足先を伸ばして、つま先でつついてみる」くらいで。つま先でつついてみて「あ、いけるかな」って思ったら、「もう少し体重かけてみようかな」くらいの温度感でいいんじゃないかと。別にリスクなんてとらなくていいよ、って。
——確かに。うちも「会社員辞めてすぐにフリーランス!」みたいな記事を掲載することもあるんですが、白黒つけすぎちゃっている部分はあるのかもしれないって思いますね。
ヨッピー:グレーくらいでいいんじゃないかなーって。「ちょっとやってみる」くらいでいいんじゃないかなと思いますね。なんかもう言い切りすぎなんですよ。「話し方が9割」とか「見た目が9割」とか明らかに言い過ぎですよ、あんなもん。スパッと言い切ったほうがウケが良いのはわかりますけど、そんなに簡単に割り切れるならみんな悩んだりしませんって。
——そうですよね。。
——ウートピの読者は都会で働く30代の女性が中心なんですが、仕事やキャリアで悩んでいる読者にヨッピーさんの本を読んでほしいなと思いました。
ヨッピー:僕も本質的には女性の方に読んでほしいなぁって思っているんです。女性は、結婚や出産のタイミングとキャリアについて悩まれる方も多いと思うんですが、そういう人にこそ読んでほしい。もちろん男性も同じではあるんですけど、まあ今の社会だと女性のほうがたぶん、そういうのに悩んでる人は多いじゃないですか。
子育てをしようとなったら「収入はどうしよう?」とか「社会と断絶されるのは嫌だな」とかいろいろ悩んだり、考えたりするんだろうなと思うんですが、趣味を副業にすれば会社員以外にも道が開けることってあると思うんですよね。
僕みたいなライターの仕事なら育児しながらでもできることはあるし、育児しているからこそ書ける記事だってあるわけで。選択肢を増やすことはそのままリスクヘッジにつながるんじゃないかと思うんですよね。
「一生懸命」は「好き」に勝てない
——そして、趣味や好きなことがいつの間にか本業になればこんなに楽しいことはないですよね。
ヨッピー:やっぱり、「一生懸命」は「好き」に勝てないと思うんです。
——どういうことですか?
ヨッピー:目の前の仕事を「一生懸命」にやっているやつは、目の前の仕事を「好きだから」やっているやつには勝てないなって気づいたんですよ。
あることを1日12時間それを3年間毎日、一生懸命にやれって言っても無理ですよね。絶対どこかで挫折するじゃないですか。
でも、好きなことだったら、1日12時間3年間でもできると思うんです。ネトゲ廃人の人達なんて1日12時間どころじゃないけど嬉々としてやってますし。例えとして適切かどうかは知りませんけど。
——なるほど。
ヨッピー:好きなことのほうが結果が出ると思うし、そうやって個人個人が得意なフィールドで結果を出せたら社会全体にとってもハッピーですよね。
自分に合っているものや好きなものは何かって試行錯誤する時間もあっていいんじゃないかなってこの本を通して伝えたかったんです。
「好き」を見つけるために必要な2つのコト
——「好きなことが何かわからない」っていう人もいますよね。好きなことを見つけるために必要なことは何ですか?
ヨッピー:根底にあるのは体力かな。
——えっ、体力ですか?
ヨッピー:そう。例えば「土日は寝なきゃ平日(の仕事で)負ったダメージが抜けない」っていう人がいるじゃないですか。
——ああ、休みの日は必ず寝だめするっていう人いますよね。
ヨッピー:僕は“エンジン”って呼んでいるんですが、クリエイターでも、“エンジン”が大きいタイプの人と小さいタイプの人がいるんです。大きい人はあちこち飛び回っていても大丈夫なんですが、小さい人はすぐにガス欠を起こして倒れちゃう。
体力がないと活動できないですよね。なのでまずは何をもっても体力なんです。だから体力がない人はウォーキングからはじめましょう! しょうもない話で申し訳ないんですけど……。
——いえ、なんかピンときました! 体力の次に必要なのは?
ヨッピー:すでに体力がある人は「生活に新しい何か」を入れてみるといいと思います。行ったことのない場所に行ったり、新しい人に会ったり。そしたらそのうち「好きなこと」が見つかるんですよ。
見つからない場合だってあるかもしれないけれどやってみないとわからないじゃないですか。
好きなことを探すっていうのは、やってみた中から、自分のとってのお気に入りを探していく作業だと思うんです。
——まずはやってみろと。
ヨッピー:そうそう。いろいろな自己啓発書の類は「行動しろ」っていうのが多いし、なんかそれもしゃらくさいな、とは思うんですが、でもそれってやっぱり正しいんですよね。僕もそこだけは譲れなかった部分なんです。
本当は「行動しなくても儲かるぜ! イエーイ!!」「1日3クリックするだけで月収100万円!」とか言えればいいんだろうけれど、「行動すること」だけはどうしても譲れない。そのくらい行動するっていうのは大事なことだと思います。
——ただ、その行動は必ずしも「でっかいこと」じゃなくてもいいんですよね?
ヨッピー:そう、小さいことでもいいんです。「いつもは土曜日に丸々寝ちゃってるけど、とりあえず今日は映画に行こうかな」でもいいんです。
※次回は9月23日(土)公開です。
(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)