人のお節介に悩まないで
——今までこんなに考えたことはなかったかもしれないです。そもそも、産む/産まないについて、考えていない人が多い。友人に「子どもがほしいの?」と聞くと、「え、なんでそんな質問するの?」って返ってきます。ほしいと思うのが当たり前だというのが無意識に浸透している。
下重:私の友人も、「そんなこと考えていたら子どもなんて産めないわよ。何も考えないから産むのよ」とよく言いますけどね。私は自分の面倒を見るので精一杯なの。自分一人で食べていかなきゃいけないし。つれあいの面倒を見るのも嫌だし。まあ嫌というよりも、できないと言うべきかしらね。責任が持てないものを作るのは、やっぱり無責任だと思うんです。
——みんななかなか気づけない……。
下重:どんなに伝えても変わらない人はいますから、あまり悩まないことね。とにかく自分で考えて自分に合う生き方をすればいいんです。みなさん、本当はぼんやりと気づいているはず。みんな違う選択をしてもいいというのが当たり前なのに、どうして人と違うことをしたらお節介なことばかり言われるのかしら。そんなことで悩む必要は全くないのにって言ってあげたいの。
——その自信は、お仕事で自己表現の場を持っていることも大きいのかなと思います。
下重:そうね。私は今とても自由です。その自由をどのように獲得したかというと、2つあります。ひとつは経済的な力。人を養えなくてもいい、死ぬまで自分で自分を養えるだけの力を持つこと。もうひとつは自分で考えて、自分で感じて、自分で選ぶという精神的な自立。経済と精神。2つ揃わないと自由は手に入りません。
でもそれは簡単なことではありませんよ。私も長い間かけて自分の身にしてきました。人に養ってもらうのは、もちろんラクですよ。でもそうしたら、自由を売り渡すことになる。私はどちらが大事かといったら自分の自由が大事です。それがどんなにしんどい選択でも、自分で稼ぐことはやめない。自分ひとりを養うぐらいの仕事は今の日本にはありますからね。
(取材・文:安次富陽子 写真:青木勇太)