恋愛がうまく・かしこく回り出す 脳科学者・中野信子式の恋愛論 第1回

「恋愛の教科書がない」 “タラレバ娘”世代 脳科学者に聞く、恋愛の処方箋

「恋愛の教科書がない」 “タラレバ娘”世代 脳科学者に聞く、恋愛の処方箋

「彼氏はいるけれど結婚したいのか、したくないのか自分が分からない」「相手のことを大好きだと言える確信が持てない」「自分にピッタリな人に出会えない」ーー仕事はバリバリこなせても恋愛ごとになると自信を失ってしまう、そんな女性が多いようです。

そこで、以前『友達のフェイスブックにイライラするのはなぜ? 脳科学者と心理学者が解説する「嫉妬」と「妬み」の正体』で悩める女性に助言をいただいた、脳科学者・中野信子さんに再び解決策をお聞きしました。

恋愛はただ好き、心が動く、という感覚が動かしているというのが当然だと思っている人が多いでしょう。でもそこには心ではなく、体と現代の文化が私たちを揺り動かす要素が詰まっていたのです。

脳科学者の中野信子さん

脳科学者の中野信子さん

「こんにちは、中野です。よろしくお願いいたします」
インタビューで用意された部屋に入ると、にっこりとした笑顔で私たちを迎えてくれました。

東大卒で脳科学者。そんな肩書きを聞かされると、自分とは違う世界の人だと身構えてしまいがち。でもお会いしてみると、こちらの質問に対してよく笑い、よく悩んで答えてくれるーーひと言で表すのなら、とてもチャーミングな女性です。

そんな中野さんに、脳科学の側面から恋愛についてお話しいただきます。

現代の女性には恋愛に有効なテキストがない

ーー恋愛に対してモヤモヤを抱えている女性が多いと聞きます。一時期よく言われた「肉食系女子」もあまり見かけなくなりました。

最近の、特に30代前半ぐらいまでの女性が恋愛に対して消極的であるのは、実は自然なことなんです。もう少し上の40代ぐらいの世代には、恋愛の教科書がたくさんあったんですよね。マンガにドラマに小説に……作られた恋愛に対して知識や話題が常に豊富でした。

ーー小中学生の頃はコミック雑誌の『りぼん』(集英社)『なかよし』(講談社)『別冊マーガレット』(集英社)がバイブルで、大人になったら“月9”ドラマで盛り上がっていた世代ですね。

アラフォー世代には優秀な教科書がたくさんあったから、いつの間にか誰かを好きになる、交際をする、そして結婚するというルールが自然と身についていたんです。そこには「クリスマスは恋人同士で過ごす」などの情報もありました。

でも“教科書”で学んでこなかった人たちは、まず「(恋をするには)どうしたらいいのかわからない」から入ってしまう。消極的にもなりますよね。

ーー世代で区切らずとも、“教科書”で学ばなかった人と学んだ人では、恋愛の認識に差がありそうですね。私は恋愛教科書があったアラフォー世代なんですが、なんだか寂しいような気もします。

若い人たちにとって、私たちアラフォーの「恋愛バブル世代」は“動物園”のように見えているかも知れませんね(笑)。

恋愛はやや高度な趣味と同じエリアに

ーー確かに、若者世代が語る恋愛論は、形にとらわれないような自由な印象がありました。それも時代の性質だと思っていましたけど。

若者世代や恋愛に消極的な人からすると……恋愛は少し高度な趣味と同じ感覚なんです。高度なスキルを必要とする趣味ってありますよね。例えば、ダイビング、ボルダリング、スノーボードなど、道具を持っているだけでは何もできない、やらなくても生きていけるものだけど、やってみると楽しい趣味。

ーー興味はあるけれど、自分からは歩み寄ることはないものでもありますね。

では、その興味を形にしたいと真剣に思ったらどうしますか?

ーー誰かに教わりますね。

そうです。専門の先生につくなり、上手い人から情報を得ますよね。それを恋愛になぞらえると何を持って「上手い」のかは、人それぞれ主観になります。例えば離婚を何回も繰り返す、ひとりの男性と添い遂げる、浮気をする……どの恋愛も「上手い」のですよ。

ーー恋愛の定義が自由であることが当たり前、ということですね。

そうそう。ダイビングなら、「海に潜っていられれば幸せ」という人もいれば、地形を楽しむ人、写真を撮る人、それからドリフトダイビングに挑戦したい人、いろいろな楽しみ方がありますよね。それと同じことです。

ーープラトニックな関係、結婚を考える、不倫……と恋愛という趣味こそバラエティが豊富です。自由だからこそ迷ってしまう、決められないのでしょうか。

彼女たちにとって、自分なりの恋愛論を持って、人の恋愛感に共感することが恋愛のスタート地点になります。そして初めて「自分がこうなりたい」というイメージが生まれてくる。もし「もっといい恋愛がしたい」という向上心があるのなら、いい教科書と先生を探すことが先決ですね。

ーー今から学びたい女性にオススメの“教科書”はどんなものでしょうか?

アラフォー向けの“教科書”は刺激が強くて消化不良になりそうなので(笑)、「恋愛っていいな」と憧れることができそうなもの、少し現実味のないものの方が良いかもしれません。そう言った意味でも我が国の古典『源氏物語』もすばらしい教科書ですから、ぜひお勧めしたいですね。

恋愛の教科書がないからモヤモヤするーー指針がなければ人は進むことも、楽しむことも難しいのだと痛感しました。次回は「恋愛はただの愛着である」というテーマでお話しいただきます。

(小林久乃)

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