大きな社会問題になっている、ブラック企業。アディーレ法律事務所の篠田恵里香(しのだ・えりか)先生いわく「採用面接の段階でかなりの程度、その企業がブラックかどうか見抜ける」のだそう。
採用のための面接や試験は、その会社を自分の目でチェックできる貴重な機会。うっかりブラック企業に入ってしまわないよう、ファイナルチェックを抜かりなくやっておきましょう。
<今回のポイント>
【1】面接の時にチェックしたいのはコレ!
【2】もしかしてブラック……? 不安に思ったら確認を!
【3】契約書にサインする前にチェックしたいポイント
【登場人物】
サチ(30)
激務な広告代理店で営業をしている30歳独身、彼氏なし。Facebookで数年前に結婚報告をしていた友人たちが、最近続々と出産報告を始めてモヤっとしている。将来のことも考えて、転職をしようか考え中。
採用試験の面接前夜によぎる不安…
過労で倒れたのをきっかけに、本格的な転職活動を始めてもうすぐ3ヵ月。仕事の合間を縫って何社かエントリーして、現在選考が進んでいるのは1社。いよいよ明日は面接当日! 受かればここに行きたいと思ってるけど、どうなることやら……。
「はあ……。そういえば、エリカちゃんどうしてるかな……」
「呼んだ?」
「うわっ」
「久しぶり〜。採用試験、なかなかうまく進んでるじゃないの」
「今ちょうどエリカちゃんのこと考えてたんだ! 実は相談したいことがあって」
「なあに? 明日面接なんでしょ?」
「そうなんだけど……実はツテがなくて、その会社で働いている人に会えなかったんだ。だから実際どんな雰囲気の会社なのかわからなくてさ……」
「あなた友達少なそうだもんね〜」
「……う、うるさいよ! 一応営業志望で受けてるんだけど、またブラックだったらどうしようって思って……ちょっと不安で……」
面接でブラック企業を見抜く方法
「なるほどね。だったら面接の時にチェックしたらいいじゃない」
「え!?」
「面接はその会社で働いている人に直接会える機会なのよ。受ける側としてもチェックするところはチェックするべきね。会場が会社なら見ておくポイントはいっぱいあるわ」
「そっか! 試験で頭がいっぱいで考えてなかった……。どんなところを見ればいいの?」
「試験官の顔が疲れていないか」
「ええ!?」
「結構大事なことなのよ。試験官や社内の人たちの様子っていうのは。社内が見れるようであれば、ノルマが掲げてあるボードや働く人たちの姿も見ておくべきね」
「見られなかったり見てもわからなかった場合どうすればいいの?」
「そうなったら、土日や夜遅い時間に会社の電気が付いてないか確認することね」
「残業してるかチェックするってこと?」
「その通り。就職してみたら深夜残業ばっかり、なんてことだってあるんだから手間を惜しまずチェックすべきよ」
「ねえ、もしそうやって様子を見てるうちに「あれ?」って思うことが出てきたらどうすればいいの? やっぱりその会社はやめた方がいい?」
「まずは人事の担当者に確認してみるのがいいと思うわ。聞きにくいこともあると思うけど、雇用条件や待遇に関わることなんかはやっぱり事前に聞いておいた方がいいわね」
「そうだよね〜」
雇用契約書でファイナルチェック!
「もしこのまま面接もうまくいって、その会社で働くことになったら、最終チェックしてほしいのが雇用契約書よ。これ、案外よく読まずにサインする人多いのよね〜」
「今の会社の契約書……読んだ記憶ない……」
「雇用契約書にはそれこそお給料や休暇のこと以外にも、転勤や出張のこと、退職金のことなど確認すべきことが盛りだくさんなのよ! 特に残業についての規定が書いていないところは危ないわ。必ずしっかり目を通してからサインすること!」
「はい!」
「そもそも雇用契約書って働く上でのいろんな取り決めをまとめたもので、その条項はたくさんあるはずなの。だからA4の用紙1枚で、それ以外に何の書面ももらえず、大して中身がないようなものだったら要注意よ」
「ふむふむ」
「それに、適当にやってる会社だとテンプレートに手書きで記入してるなんてところもあるの。そういうところはいざ入った時に細かい規定がしっかり決まってなくて、後々全部会社に有利に解釈されるケースがあるから注意よ!」
「契約書自体でもチェックできるってことなんだね」
「なんにせよ、いろいろ調べて確認してその上でここはブラック企業だ、と思ったんならその後の採用を辞退すべきだと私は思うけどね」
「う〜ん。辞退か〜〜その勇気ないかも……」
「会社って1日の大半をそこで過ごすわけだし、職種や仕事内容も大切だけれど、それと同じだけ職場環境や労働条件も大切なのよ」
「……そうだよね」
「サチちゃんみたいに新卒からブラック企業で働いてる人なんて、ブラックな部分を普通だと思い込んでる可能性もあるわよ。せっかくの機会だし、世の中にはいろんな働き方があるってことを勉強した方がいいんじゃない?」
「確かに視野が狭かったかも。受かればどこでもいいって思ってたけど、もう少し慎重に考えてみるね」
「さてと、明日面接何時から? 早く寝た方がいいんじゃないの? あ、でもお風呂先入ってきていい? すぐだから」
そう言うが早いか、エリカちゃんはバスルームに向かってヒューっと飛んで行ってしまった。さっきまで不安でなんだか落ち着かなかったけど、不思議と今は心が落ち着いている。明日の試験の時には、冷静に会社のことを見られそう。さて、エリカちゃんがお風呂から出てくるまで、温かい紅茶でも飲もうかな。
<今回のポイント>
【1】面接の時にチェックしたいのはコレ!
面接は受験者にとってもその会社を知るチャンス! 面接官の顔が疲れていないかは大事な判断材料。土日や夜遅い時間に、会社に電気が付いていないか確認するのもオススメよ!
【2】もしかしてブラック……? 不安に思ったら確認を!
もし不安に思うことがあったら人事の担当者に確認すべし! 雇用条件や待遇に関わることはトラブルの元になりがち。しっかりチェックして。
【3】契約書にサインする前にチェックしたいポイント
雇用契約書は必ずしっかり読んでからサインして! 契約書の分量やフォーマットでも適当な会社かどうか判断できるわ。
エリカちゃん(永遠の30歳)
「六法全書」の妖精。本名はオピストコエリカウディア・スカルジュンスキィ。辛口で正論をバシバシ言うが、困っている人は放っておけない姉さんキャラ。神様から派遣され、困っている女性のリーガルマインドを鍛え直している。