アメリカの文化は受け入れない? ヨーロッパ各国ハロウィン事情

アメリカの文化は受け入れない? ヨーロッパ各国ハロウィン事情

先日、15年住んでいるスイスから日本に一時帰国して、ハロウィンの盛り上がり具合に目を見張った。数年前までは、これほどのハロウィン熱は見られなかったが、他の国の伝統行事をうまく取り入れて楽しむ日本人の姿勢はさすがだ。

アイルランドで発祥しアメリカに根付いたハロウィンは、ヨーロッパではどうなっているかというと、地域によって大盛況だったり一時的なイベントに終わったりと温度差が激しい。

ヨーロッパ各国のハロウィン事情は……

他のヨーロッパの国に住む知人たちに尋ねてみたところ、次のような答えが返ってきた。

イギリスでは、10年ほど前から大々的に行うようになりました。それ以前は「アメリカのお祭り」として認識されている程度でした。今やハロウィンは新たな商機と捉えられ、ハロウィン商品が毎年満載。今のところは、あくまでも子ども向けですが、年々規模がエスカレートしているので、そのうち大人だけでもパーティーをするようになるかもしれないですね。

スウェーデンでは、ハロウィンの盛り上がりは以前からいま一つです。子どもや一部の大人が仮装したりする程度で、それほどテンションが高まる感じではありません。

北ドイツ(ハンブルク)は毎年、近所の子どもたちが変装して「お菓子ちょうだい」とやってきます。少なくとも都市の中心街では、ハロウィンは習慣化しつつあるのかもしれません。

南ドイツ(シュトゥットガルト近郊)ではハロウィンは大盛況。市民に浸透した大きなイベントとなっています。大人はハロウィンパーティーに集い、子どもはお菓子を集めにあちこちを巡っています。

フランスでは15年ほど前から行われていたものの、最近は下火になりました。やはり、ハロウィンは「外国のもの」と考えられているようで、根付かなかった感じがします。

フランスに似ている? スイスのハロウィン事情

ヨーロッパの中央部に位置する、ここスイスはフランスの傾向と似ている。

約20年前にチューリヒの大手おもちゃ屋や全国チェーンの大手スーパーが、数店限定で子ども向けにハロウィングッズを売り始めた。今では、子どもたちが仮装して家々を回ってお菓子もらったり、小さい子どもからティーンエージャー向けに屋内でハロウィンパーティーを開催する町もあったりと、ハロウィンを行う人たち(子どもたち)はいる。その数は少しずつ増えているのかもしれないが、私の印象としては、派手にやらない方向に向かっている。

全国的な傾向として、生卵を家屋や車に投げる子どもたちが後を絶たず、ひげ剃りクリームやカラースプレーなどで交通標識や壁にダメージを与えるのも頻繁に見られて、住民たちから苦情が出ている。上機嫌で外を歩き回る子どもたちのことを「うるさい」と感じる人たちも少なくない。そんなわけで、最近はハロウィンの夜は警官たちが大勢で見回りに出ている。

クリスマスグッズが店頭に並ぶ前の時期、以前は近所のどのスーパーでも、衣装や顔用ペイントなどのハロウィン商品がたくさん売られていたが、いつの間にか姿を消してしまった。今年は、早くも9月下旬からクリスマス用クッキーが販売されて、「ハロウィンは一体どこに?」というムードだ。

つまるところ、スイス人にとってもハロウィンは「外国のもの」なのだと思う。スイスには、この時期、他に長く続く行事が催されることも関係しているだろう。

“カブちょうちん”が灯る夜

10月下旬から11月初旬にかけて、スイスではカボチャならぬカブでちょうちんを作る「レーベリヒトゥリ」という行事が各地で行われる。秋の収穫を祝う伝統で、家庭で、また幼稚園や小学校で、地区でカブちょうちんを作り、みんなで暗い夜の街をゆったりと歩く。主役はあくまでもちょうちんで仮装などはしない。揺れるカブから放たれるロウソクの明かりを楽しむ。

スイスのスーパーで、山積みに売られるちょうちん用のカブ「レーベ」。食用ではない。

スイスのスーパーで、山積みに売られるちょうちん用のカブ「レーベ」。食用ではない。

ハロウィンとレーベリヒトゥリを見比べると、いろいろとイベント化する日本とは対照的な、そして、他のヨーロッパの一部の国とも違う、いい意味でのスイスの頑固さを感じる。

撮影:岩澤里美

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