内田有紀さんインタビュー後編

「力みすぎても肩が凝るだけ」内田有紀に聞く、ヘルシー&軽やかさの秘訣

「力みすぎても肩が凝るだけ」内田有紀に聞く、ヘルシー&軽やかさの秘訣
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4月23日より放送・配信を開始するWOWOWの新作オリジナル作品『連続ドラマW フィクサー Season1』。世の中を裏から操る主人公・設楽拳一を、唐沢寿明さんが演じます。

同作に出演する内田有紀さんは、ある事件を通して拳一と知り合う、人気ニュースキャスターの沢村玲子役を演じています。内田さんは俳優デビューから31年となるいまでも、撮影前にはとことん準備を重ねるのだそう。どうしてそれほど謙虚でいられるのか? 努力できる自分でいるためのマインドや、すこやかな心身を保つコツについて伺いました。

慢心してしまった時期もある。でも、一人じゃ成長できないと気づいた

——前編では、ニュースキャスターの沢村玲子という役を演じるにあたり、どんな役作りや練習を重ねてきたかを伺いました。内田さんほどの実績があって、それでもなお勉強熱心でいられることが本当にすごいと思いました。

内田有紀さん(以下、内田):ずっと今の姿勢でいられたわけではなく、40歳くらいで「私、もうじゅうぶんやれているよね? いろいろできているよね?」と勘違いしてしまった時期もありました。いろんな方に助けていただいているし、頑張って稽古もしているし、ちょっとはできるようになってきたかも、って。

——「勘違い」とおっしゃるということは、本当はそうではなかった、と?

内田:はい。パーフェクトな人間なんていないんだから「いろいろできている」わけがない。でも、デビュー当時は「有紀ちゃん」だった私も、年齢を重ねれば「内田さん」と呼ばれるようになり、気づけば仕事をしていても何も指摘されなくなってくるんですよね。そうやって何も言われないと、なおさらできているんじゃないかと勘違いしてしまう……。

だけど、そんなときにふと「いや、たくさんの方々のおかげでここまで成長してこられたのに、そんなふうに考えるのはよくない」「自分を知った気になって、勘違いするのだけはいやだ」と思ったんです。

——そう思うのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

内田:しいて言うなら、『連続ドラマW 華麗なる一族』で西浦監督から作品作りへの熱意を学べたことは、ひとつのきっかけだったと思います。たとえば、窓際で外を見ているだけのシーンなのに、7回くらい撮り直したんです。現場でそんなふうにテイクを重ねることはもうほとんどなかったし、何がダメなのか理由がわからず考え込んだりもしたけど……そこで「私、できている気になっていただけだ。これじゃダメなんだ」と気づきました。

——それだけ真摯に取り組まれるのはすばらしいことですが、つねにベストアンサーを出していくのは、大変ですよね……。

内田:お芝居は完成度を数字で表せるものではないし、そもそも人それぞれに好き嫌いがあって、正解はないですからね。でも、だからこそ自分勝手に「できた」と思い込まず、周りの力を正しく借りながら、いろんな可能性を模索し続けなくちゃいけないんだと考えています。

——周りの力やサポートを、内田さんがとても大切にしていらっしゃるのが伝わってきます。

内田:一人だと殻に閉じこもってしまうから、周りの助けや刺激が私には絶対に必要なんです。たとえば、台本を読んで「こんなセリフ、普通言わないよなぁ」と思ったのに、次の日まったく同じセリフを現実世界で言われて驚いたことがあります。「えっ、私が絶対に言わないと思ったあのセリフを、この方は言うんだ」と。人生って、こういうことであふれてるんですよね。

だからこそ、自分一人の考え方や思い込みに固執するのは危ない。何年も生きていると自分なりの答えを見つけているから、つい「私は私のやり方でいい」と思ってしまうけれど、それでは私は成長できない。周りの方々のアドバイスに対して「それはできません」じゃなくて「やれるかもね」「できたら面白いかも」と思える私でいたいし、芝居を通じて人生の勉強もさせていただきたいと考えています。

かっこつけて頑張るより、素直に周りに助けを求めたい

——周囲の意見を柔軟に取り入れつつ、「自分なんて」と卑下もしないためには、謙虚と自信のバランスが大切なのではないかなと思いました。

内田:そうですね。私も日によって波はあります。前日はとても自信があって「前向きにやろう!」と思えたのに、翌日はしょぼくれている。そのまた翌日はちょっと褒められて有頂天だったけど、次の日はばこーんと落ち込んで何もやれない……そうやってバランスが取れないことはしょっちゅうです(笑)。でも、つねに同じコンディションを保っていられるほど人間はタフじゃないし、そういう波こそ……生きてるって感じじゃないですか?

——なんとヘルシーな考え方……!

内田:生きているってそういうことだし、うまくバランスが取れないことも含めて、人生の醍醐味かなと思うんです。年齢を重ねるにつれて、どうしようもない自分ともうまく付き合えるようになってきました。弱い日に「頑張って元気になろう!」としたりせず、元気な自分が出てくる日を、焦らずに待てるようになったんです。無理したところでいいことはないし、力みすぎても肩が凝るだけ。だったら余計な力は抜いていこうと、いまは思っています。

——そのほか、すこやかな状態を保つために心がけていることはありますか?

内田:自分がしたいことを好きなようにする、でしょうか。演技ではみっちり準備をしますが、プライベートではしません。その日にしたいことをして、食べたいものを食べます。それを許してもらえる環境があることには、いつも幸せや感謝を感じていますね。更年期トラブルなども感じ始める年齢なので、とにかく心や体にストレスをかけないようにするのが大切。しんどいことがあったら、親しい人たちに素直に打ち明けるのもポイントかもしれません。かっこつけて頑張るのは、時間のムダだから。

——でも、つい「大丈夫」と意地を張ってしまったり、「強くありたい」とかっこつけたりしてしまいます……。

内田:私も昔はそうでした。かっこつけたり頑張ったりしすぎて疲れちゃったから、それを全部やめてみたんです。そうやって周りに助けを求めはじめたら、とってもラクになれました。しかも、みんなの力や素敵なところを取り入れながら生きていけるから、自分ももっといい感じになれるんです。

——みんなが気持ちよく力を貸してくれるのは、まず内田さんが心を開いて周りと接しているからだと感じました。

内田:いろんなことに興味を持っているんだということが、にじみ出ちゃっているんだと思います(笑)。とくにこの数年間はつねにオープンな状態でいたら、懐にすっと入ってきてくださる方がたくさん現れて、よい刺激をいただきました。固く閉じている者同士だとぶつかって削り合うだけだけど、自分が開いたら人も開いてくれるんですよね。

(取材・文:菅原さくら、編集:安次富陽子、写真提供:WOWOW)

■番組情報
WOWOW『連続ドラマW フィクサー Season1』

WOWOWプライム・WOWOW4K/WOWOWオンデマンド
2023年4月23日(日)放送・配信スタート
放送:毎週日曜午後10時~/配信:各月の初回放送終了後、同月放送分を配信
監督:西浦正記
脚本:井上由美子
出演:唐沢寿明
藤木直人 町田啓太 小泉孝太郎 要潤 吉川愛 斉藤由貴 駿河太郎
/ 西田敏行(特別出演) / 永島敏行 富田靖子 陣内孝則 内田有紀 小林薫

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