「生命科学アカデミー」内藤教授に聞く 第2回

ピンピンコロリがいいと思うなら…今から気をつけたいお腹と健康の関係

ピンピンコロリがいいと思うなら…今から気をつけたいお腹と健康の関係

「人生120年時代のわたしたちへ」
の連載一覧を見る >>

人生100年時代。もしも100歳まで生きるとしたら、どんな自分の姿を想像するでしょうか。もしかしたら、「そこまで長生きしたくない」と思う人もいるかもしれません。

それは「健康」が失われて働き方や生き方に希望がもてないからではないでしょうか。もしも、元気に歳を重ねていけたら——。最近は、生命科学のさまざまな研究から「老いは病気」「病気ならば治せる」といった可能性が見えてきました。

健康に美しく生きるために、最先端の研究を学ぶYoutube番組「生命科学アカデミー」は、このたび腸内微生物・消化器・抗加齢医学を専門とする内藤裕二教授をゲストにお迎えし、「腸内環境」と健康についてたっぷりと解説していただきました。

内藤教授と「生命科学アカデミー」学長のHIROCOさん

※本記事はYoutubeチャンネル「生命科学アカデミー」で6月30日(木)に配信された内容を、ウートピ編集部で再編集したものです。

日本人の平均寿命と健康寿命は?

——日本人の寿命と健康寿命について詳しく教えてください。

内藤:最近は「平均寿命」という言葉と「健康寿命」という言葉でその人の年齢を表そうとしています

皆さんご存知のように、日本人女性の平均寿命は世界第1位、男性の平均寿命は世界第2位です。ところが2000年頃に健康な生活をしている人たちを対象に——「健康寿命」と呼ぼうということで——調査をしたところ、女性は平均寿命より約13年短く、男性は約9年短いことがわかりました。

暦の寿命だけではなく、「健康な寿命」を延そうということで、その後さまざまな対策が行われ、「平均寿命」も「健康寿命」も延びたのですが、不思議なことに調査から20年経った今も、この2つの寿命の間にある差は縮まっていません。

これは日本人の死因にも関連しています。65歳以上の主な死因を調べたところ、1位と2位はがんと血管関連の病気でした。3位は、徐々に体が弱り、静かに命を落とす「老衰」です。

——え? 老衰ですか? 老衰が「病気」……?

内藤:先ほどお話ししたサルコペニアやフレイルになり、身体が弱って静かに命を終える……と。それを「病気」と言うのかどうかは非常に難しいところなのですけれど。死因の3位にまで来ているのは見過ごせないですよね。

私たちとしては、早期に発見し、対策をしてあげないと。せっかく長生きしても、最後の10数年が不健康というのはイヤですよね。

——人生を楽しみたいですよね。

内藤:(人生を最期まで楽しむなら)やはり、ピンピンコロリがいい。そして元気な間は健康でいたいと思いますよね。

「胃がん」と「大腸がん」

内藤:一方、長年日本人を苦しめてきたがんは、対策が難しい病気の一つです。胃がんはピロリ菌という細菌が原因だと判明しました。その結果を受けて、いま私は50年後に胃がんをなくそうと努力しています。これは実現可能なことであると思います。

ところが、女性のがん死亡原因でもっとも多いのは、大腸がんなんですよね。

——わー。そうか……大腸がん。

内藤:かつて大腸がんは欧米の人の病気で、日本人は少ないと言われていましたが、現状は異なります。けれども、遺伝子はそう簡単に変わらないですよね。ならば何が変わったのか。私はお腹の環境の調子が悪い人たちが、日本人で増えているのではないかという点に着目しました。

すると大腸がんに限らず、お腹の調子が悪いとさまざまな病気の要因になっているのではないかという見方が出てきました。私自身も、フレイルやサルコペニアが腹部に関係しているのではないかと疑っています。

腸内フローラの形は人それぞれ

——お腹の環境というと「腸内フローラ」をよく耳にしますよね。言葉は皆さんも聞いたことがあると思うのですが、これは何でしょうか?

内藤:この5年くらいの間に言葉が認知されるようになりましたよね。私も「腸内フローラの(研究をしている)内藤先生」と有名にしていただきました(笑)。最初は特に興味があったわけではないのですが、研究してみるとすごく面白かったんですよ。

腸内に住んでいる細菌は、菌種ごとに塊となって腸の壁にびっしりと張り付いています。この様子が花畑(flora)に似ていることから、「腸内フローラ」と呼ぶようになりました。私たちの研究チームは、人間を含めた動物の腸内細菌について多方面から調査をしています。

——「腸内フローラがこういう状態になると病気になりやすい」など、何か法則はあるのでしょうか?

内藤:これはよく聞かれる質問です。「どういう腸内フローラがいいんですか?」とか「どんな腸内細菌を持っていたらいいんですか?」というのも多いですね。

最近、約1,800人の日本人の腸内細菌を調べ、血液型のようにA型、B型、C型……と5つの型に分けることに成功しました。それによって、「この型の人は将来こんな病気のリスクがある」と伝えられるようになりました。

——へぇー!

内藤:しかし、腸内フローラは千差万別です。その人にとって一番いい腸内フローラを追求していく必要があるのですが、この過程で、どうやら食べ物が関係している、ということがわかってきました。

——なるほど。口から入れて直接関係しますからね。引き続き、健康長寿の秘密について、詳しく迫っていきたいと思います。

(第3回へ続く)

■動画で見る方はこちら

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この連載をもっと見る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

ピンピンコロリがいいと思うなら…今から気をつけたいお腹と健康の関係

関連する記事

編集部オススメ

2022年は3年ぶりの行動制限のない年末。久しぶりに親や家族に会ったときにふと「親の介護」が頭をよぎる人もいるのでは? たとえ介護が終わっても、私たちの日常は続くから--。介護について考えることは親と自分との関係性や距離感についても考えること。人生100年時代と言われる今だからこそ、介護について考えてみませんか? これまでウートピで掲載した介護に関する記事も特集します。

記事ランキング