脱・頭痛持ち…タイプ別症状とセルフケア/第7回 

片頭痛を予防する画期的な新薬が保険適用に【脳神経外科専門医に聞く】

片頭痛を予防する画期的な新薬が保険適用に【脳神経外科専門医に聞く】

「脱・頭痛持ち…タイプ別症状とセルフケア」と題し、脳神経外科専門医でいのうえクリニック(大阪府吹田市)の井上正純院長に頭痛の特徴やケアについて連載でお話しを聞いています。

これまで、日本の頭痛持ちは推計4,000万人、このうち片頭痛で悩む人は1,000万人、頭痛の種類、緊張型頭痛、そして片(へん)頭痛の特徴、女性に多い理由、特効薬・トリプタンなどについて紹介してきました(これまでの記事のリンク先は文末参照)。

今回は、読者から届いた、「片頭痛を予防する薬があると聞きました。本当にこの痛みが予防できるのでしょうか」(36歳女性)、「片頭痛に悩むこと十数年、予防の注射でついに80%ほど痛みが減りました!」(33歳女性)という声について詳しいお話しを聞きます。

井上正純医師

井上正純医師

2021年から保険適用となった片頭痛予防の新薬3種

——片頭痛は、頭の一部がズキンズキンと脈打つように痛むつらい症状であり、前回(第6回)は特効薬として「トリプタン」があると教えてもらいました。さらに、冒頭の読者が話すように、片頭痛を予防する画期的な薬が登場したそうですね。

井上医師:日本では2021年の4月に商品名「エムガルティ」(一般名はガルカネズマブ)という薬が、続いて8月から「アイモビーグ」(エレヌマブ)、「アジョビ」(フレマネズマブ)が公的医療保険適用で使用できるようになりました。これまでの予防薬は効果が出るまでに時間がかかり、患者さんが薬を飲み続ける割合が低いなど課題がありました。

この薬は、後ほど説明しますが、「CGRP 関連薬剤」という注射薬です。月に1回ほどの注射で、片頭痛の予防がかなり期待できます。エムガルティでは、片頭痛の患者さんの約50%が「1カ月あたりの片頭痛の日数が半分に減った」、また約25%の人が「75%減った」、さらに約9%が「1カ月頭痛がない」という調査結果があります。

片頭痛の回数を減らすこと、起こったときの痛みを軽減すること、重症の場合にも有用であること、また副作用も比較的少なく、アイモビークは海外で先行発売され、5年の長期投与試験によって安全性が確認されています。効果が現れるのが速く、それも長続きするという特徴があります。

その効果で、日常生活の支障度が改善することが明らかになっています。すべての患者さんに効果があるわけではありませんが、既存の片頭痛予防治療薬で治療が奏功しない場合にも有効性が確認されていて、画期的といえるでしょう。

新薬の働き、使用頻度、費用は

——予防ができる薬の登場とは、苦しむ人にとっては朗報です。どういう働きをするのですか。

井上医師:第4回で、片頭痛が起こるメカニズムには、三叉(さんさ)神経から分泌されるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という神経伝達物質が重要だと話しました。このCGRPが、脳の血管や周囲の組織に炎症を引き起こして激しい痛みが生じるわけです。

これらの予防薬は、CGRPをブロックするように働き、痛みの発症を元から防ぎます。

——それは心強いですね。月に1回の注射ということは、通院が必要ですか。糖尿病のインスリンの注射のように自分で打つことはできますか。また、体のどこに打つのですか。

井上医師:まず、これらの注射は自分で打つことはできません。受診して医療機関で患者さんのふとももか、おなかか、上腕に打ちます。

エムガルティは最初は2本、翌月以降は月に1本を打ちます。アイモビーグは4週間に1回1本、アジョビは4週間に1回1本、または12週間に1回3本を打ちます。

——公的健康保険が適用ということですが、費用はいくらですか。

井上医師:この新薬のデメリットになりますが、高価なのです。「モノクロナール抗体製剤」と呼ばれる薬剤で、本来の目的のみを達成するように、精密に設計されています。細胞培養などのバイオテクノロジーを利用して生産する必要があり、高額となっています。このモノクロナール抗体製剤は、抗がん剤、免疫抑制剤など他の分野でも大きな成果を上げています。

エムガルティは公的健康保険適用の3割負担の場合で、2022年3月時点で薬剤費は1本が約13,550円です。初回は2本打ちますから、約27,100円になります。

アイモビーグとアジョビは、1本が約12,500円です。2ヵ月目以降1日あたりの負担は、3割負担で約440円となります。これに、受診時の再診料などが加算されます。

新薬はどのぐらいの症状の人が使用する?

——時間と費用の負担は大きいですが、冒頭の読者のように、この薬で助かっている人は多いと思われます。片頭痛と診断されると誰でも打つことができるのでしょうか。

井上医師:そうではありません。エムガルティなどが登場する以前から、予防薬としては、飲む薬の「カルシウム拮抗(きっこう)薬」「β(ベータ)遮断薬」「抗てんかん薬」「抗うつ薬」などから患者さんの症状に応じて処方し、試してもらっていました。これらの服用薬で効果がある人は新薬を注射する必要はありません。
それに、発症頻度が少ない人、軽症の人、発症時に飲むトリプタンで十分な効果がある人なども同様です。患者さんの症状によって医師が判断します。

——では、どのぐらいの症状の人が新薬を用いるのですか。

井上医師:新しい作用の仕組みを持つ薬として、今後も継続して安全性を観察していく必要があり、現在のところ、診療ガイドラインによる使用基準が決められています。

新薬の注射は目安として、片頭痛が月に複数回あり、これまでの予防薬の効果が十分でないか継続が困難な場合、最近3カ月以上の間に1カ月あたりの頭痛日数の平均が4日以上、日常生活に支障のある人が適用となります。18歳未満は使用不可となっています。

患者さんには、頭痛の状態を記録する「頭痛ダイアリー」を活用してもらい、相談するケースが多いです。

いずれにしろ、多くの悩める患者さんにとって治療の選択肢は増えています。頭痛がつらい場合は早めに、脳神経外科、脳神経内科、あるいは頭痛専門外来を受診しましょう。

聞き手によるまとめ

片頭痛を予防する、発作の日数や痛み具合が減るという新薬が3種登場したというニュースは、つらい症状の人はもちろん、現在は軽症で必要がない人でも安心材料になります。片頭痛の軽症時は市販もされている鎮痛薬を、つらいときは処方薬のトリプタンを、片頭痛の頻度が高い場合や痛みが強いときはこれらの予防薬を用いることができるということです。

次回・第8回は、片頭痛を予防するためのセルフケア法についてお尋ねします。

(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル 画像転載禁止)

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