“日本推し”の外国人としてTwitterで一躍有名になったラトビア出身のアルトゥル・ガラタさんによる著書『アルトゥルと行く!不思議の国・ジャパン』(著者・原作:アルトゥル、漫画:ぺぷり/KADOKAWA)が昨年11月に発売されました。
著書では、少年時代から日本に憧れていたアルトゥルさんが、22歳のときに初めて来日したときや帰国後のエピソードをコミックエッセイの形で紹介。独自の目線で発見した日本文化の不思議や魅力が描かれています。
前編に引き続き、アルトゥルさんに「面白がり続けること」や「コミュニケーションで大事にしていること」をテーマにお話を伺いました。
面白がり続けられるのは周囲のおかげ
——前編では、アルトゥルさんがなぜ日本や日本語の勉強を続けられるのか、その理由について伺いました。ただ、やっぱり人によっては「この辺で、ほどほどでいいや」と突き詰めていくことに疲れたり、挫折したりすることもあると思うんです。
アルトゥルさん(以下、アルトゥル):まあ、確かにずっと教科書だけ見ているのは私もつらいんですよ(笑)。ドリルを繰り返していると、ちょっと飽きちゃうときはあります。……でも私の場合は、逆に私が「ありがとう」と言うべきだと思っているんです。こういう文化を守ってくれたことや、日本語がいろんな表現が豊かな言語であることに。
——アルトゥルさんのずっと「面白がる」姿勢も物事を続けるうえで大きいのかなと思いました。
アルトゥル:私はとてもラッキーなんじゃないかと思っているんです。なぜなら誰かが「アルトゥルはそれ、面白いと思うんじゃない?」と何かを教えてくれるので、また「面白い」と思うことができるから。Twitterでも、例えばあることについて投稿したときに「アルトゥルはもうご存じかもしれませんが……」と返信してもらえることがあって、「知っているわけないじゃん!」と(笑)。そういうループになってきたんですよね。日本語にも日本文化にも興味があって、それをつぶやいていたら、もっともっといろんなことを教えてもらえるんです。
逆に、例えば映画が好きな人に「この映画をまだ見に行っていなかったら、絶対にオススメしたい、あとで評価も教えてほしい」という気持ちもあります。本人が興味を持っているなら、喜んでもらえるんじゃないかって。もちろん何でもオススメするのではなく、「このジャンルが好きだから、絶対に喜んでくれる」と考えてオススメするんです。そんなふうに、同じ気持ちでいる方々のおかげで“面白がれる”気持ちがずっとあるのかもしれないですね。
——周囲からのいろんなフォローがあったり、自分がフォローしたり……“面白がり”のループが続いていくんですね。
アルトゥル:本当にその通りで、周囲がとてもとても大事だと思います。
コミュニケーションで大事にしていること
——「周囲」というお話が出たところで、「周囲とのコミュニケーション」についてもお聞きしたいです。異文化の人とのコミュニケーションを重ねてこられているアルトゥルさんが、コミュニケーションで大事にされていることは何でしょうか?
アルトゥル:「自分がされたい扱われ方をしろ」と子供のころからお母さんに言われていました。異文化で育てられた方に対しても、同じ文化を持つ者同士でコミュニケーションをとるときにも、それが一番大事にしていることですね。
特に、優しくしてほしいなら、一生懸命優しくしろ、と。それはずっとずっと思っています。
——ただ、やっぱりときには相手にうまく意図が伝わらないとか、どうにもならないコミュニケーションの難しさはあると思うんです。もしアルトゥルさんのマインドを理解してくれない人がいた場合は、理解してもらえるまで努力するのか、「まあ仕方ないね」と諦めるのか、どちらを選びますか?
アルトゥル:人によると思いますが、もし「はじめまして」もしていない人だったら、たぶん放っておくかなあ(笑)。でも、もし大事な友達が私の意見を受け入れられなかったり、勘違いしたりしていたら、もちろん私の考えが分かるように頑張って説明します。大事な友達に勘違いされたら、二人とも困ることになると思うので。
Twitterのつぶやきは「誰も傷つかないように何度も見直す」
——コミュニケーションといえば、アルトゥルさんはTwitterでも面白くつぶやかれていますし、アウトプットがすごく上手ですよね。発信する際に大事にしていることや意識していることを教えてください。
アルトゥル:Twitterの場合は、つぶやきの仕方は一応決まっているんです。まずはネタを得る。次に文章を作る。その次は、おかしい文法を調整する。まだ日本語も全然完璧じゃないので、誰にも勘違いされないように、ゆっくりゆっくり調整します。その後は、誰も不快にならないように、傷つかないように何度も見直しています。それから、SNS的に伸びやすいように調整する……という感じですね。
——慎重に時間をかけて投稿されているんですね。その場でリアルタイムで投稿されていると思っていました。
アルトゥル:そうなりたいんですよ、パパパっと「送信しました」って。まあ、そのうちかな(笑)。逆にそう言われて非常にうれしいです。
——昔からアニメ好きでサブカルチャーに触れられているだけあって、サブカルネタも入れていましたよね。
アルトゥル:そうですね。でも勘違いされないように、サブカルネタは今ちょっと遠慮しているんです。「リプにこれを貼ればきっと反応がある」という感覚を得るためには、マンガももっと読まないといけないし、もっとバラエティ番組や漫才をたくさん見ることが必要ですね。なので、まだまだ先の話だと思います(笑)。
言葉の勉強はマラソン
——外国語を勉強中の人や何かについて学んでいる最中という人も多いと思うのですが、そんな人たちに向けてメッセージをお願いします。
アルトゥル:読者の中に、もし今外国語を勉強中の方がいらっしゃいましたら、ゆっくり一歩ずつ勉強してほしい、ということを伝えたいです。言葉の勉強って、スプリント(短距離走)じゃなくてマラソンなので。
あと、このインタビューを読んでいる方に、すごく感謝の気持ちを伝えたいと思います。日本人がすてきな文化を守ってくれているからこそ、私は今、こんな楽しむことができているから。このインタビューを見ていただいてありがとう、と伝えたいですね。
(聞き手:河鰭悠太郎)