「おなかが張って強く痛むので病院で検査をすると、『便秘です。過敏性腸症候群かもしれない』と診断された。過敏性腸症候群って下痢だと思っていたけど、便秘型もあるのですね…」(38歳女性)という読者の声が複数、届いています。
そこで、『慢性便秘症 診療ガイドライン2017』作成委員会委員長であり、兵庫医科大学病院の副院長で消化器内科専門医・指導医、『胃は歳をとらない』(集英社)という著書がある三輪洋人(みわ・ひろと)医師に、「過敏性腸症候群便秘型」について、連載にてお話しを聞きます。
今回・第1回は、過敏性腸症候群便秘型の症状について尋ねます。
過敏性腸症候群の便秘型は20~40歳女性に多い
はじめに三輪医師は、便秘の種類についてこう説明をします。
「便秘にはさまざまなタイプがあり、慢性便秘の場合、症状では『排便回数減少型』と『排便困難型』、病態では『大腸通過遅延型』や『便排出障害型』などに分類されます。
また、読者のお悩みにある『過敏性腸症候群便秘型』も増えています。これは『過敏性腸症候群』のひとつです」
過敏性腸症候群とはよく耳にしますが、どのような症状なのでしょうか。三輪医師はこう説明を続けます。
「過敏性腸症候群は、 IBS (irritable bowel syndrome)とも呼ばれ、日本人の約7人に1人が患っているとされます。腸の感じ方が過敏になったり、腸の運動が異常になったりすることによって、おなかの痛みを伴う便秘や下痢、その両方をくり返す症状が現れます。
過敏性腸症候群は、便の状態によって4つのタイプにわけることができます。
硬い、コロコロとした便が出る場合は『便秘型』、やわらかい、水っぽい便が出る場合は『下痢型』、便秘型と下痢型のどちらもの場合は『混合型』、どれにもあてはまらない場合は『分類不能型』です」
下痢型の場合、「通勤電車でおなかが痛くなってトイレに駆け込んだ」という経験談をよく耳にします。
「下痢型は、商談や会議、受験、発表会などで緊張しているときや、長時間トイレに行くことができない車やバスでの移動時などに、急におなかが痛くなったり、便意が我慢できなくなったりします。日常の仕事や生活に差し支えるつらい状態でしょう。
下痢型には男性が多く、便秘型には女性が多いこと、またいずれも、20~40歳に多いことがわかっています」と三輪医師。
破裂しそうな痛みを伴う過敏性腸症候群便秘型
過敏性腸症候群というと下痢をイメージしていました。便秘型もあるのですね。便秘型の場合、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。
「便秘型も下痢型と同じように、『おなかが破裂しそう、しめつけられる、削られるような感覚』など、激しい痛みを伴うこともあります。
場合によっては4~5時間も激しい痛みが続く場合や、救急車で運ばれるケースもあります。腸がぎゅっとしぼられるような動きをするために痛むのです」(三輪医師)
腹痛の頻度と排便の状態をセルフチェック
ここで、過敏性腸症候群便秘型かどうかのセルフチェック法について、三輪医師は次の項目を挙げます。
(1)腹痛が最近3カ月のうちで週に1回か、月に4回以上ある。
(2)次の症状が2つ以上ある。
□腹痛が排便と関連している(排便で痛みが緩和する)。
□腹痛と、排便が増えたり減ったりの時期が同時に起こりやすい。
□腹痛と、便が硬くなったり軟らかくなったりが同時期に起こりやすい。
「(1)と(2)が該当する場合、過敏性腸症候群便秘型の疑いがあります。また、厳密にチェックしなくても、『なんだかよくわからないけれど、便秘でおなかが痛むことが頻繁にある』と思った場合でも同様です。『便秘だし、市販薬でなんとかなるか』と放置したりひとりで悩んだりせずに、早めに消化器内科や内科を受診しましょう。改善する治療法があります」と三輪医師。
聞き手によるまとめ
便秘には、症状や病態によってさまざまなタイプがあり、過敏性腸症候群便秘型の場合は激しい痛みを伴うということです。とてもつらいのではないでしょうか。この便秘型かもと思ったらすぐにセルフチェックをして、症状と向き合うためにも受診をしたいものです。次回・第2回は、過敏性腸症候群便秘型の原因について尋ねます。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)