2011年3月11日に発生した東日本大震災から今日で11年がたちます。
私は3月11日には「Fleep(フリープ)」の下着やパジャマを着るようにしています。なぜなら、「フリープ」は主に岩手県陸前高田市の工場で製造されているから。この工場には震災後に伺ったこともあるため、製品に袖を通すと、そこで働く人々や陸前高田の街を思い出せるからです。
従業員の声をきっかけに、震災発生からわずか1カ月で再稼働
陸前高田と聞くと、「奇跡の一本松」が記憶にある人も多いのではないでしょうか。
「フリープ」は2007年に誕生したブランド。東日本大震災が発生した時、同工場は高台にあるため津波の被害は免れ、従業員の皆さんは全員無事だったものの、天井が落ちたり壁の至る所に亀裂が入ったり、エアコンや照明はぶら下がるなど、甚大な被害を受けました。電気や水道も止まる中、同工場は従業員やその家族の避難所に。秩父の本社などから支援物資が届き、駐車場はその配布場所となり、地域の助け合いの場になりました。
そして、1カ月後の4月11日から同工場は再稼働します。もちろん、震災前の日常生活からはかけ離れた日々でしたが「何かやっていたほうがいい」「前を向いて歩こう」という従業員の自発的な言葉で再稼働したそうです。
中には避難所から通勤する人も。その時のことを、従業員のひとりは「4月11日に再稼働できたことは良かったと思います。被災直後は必死で何かに突き動かされておりましたが、日がたつにつれ悲しみや喪失感が強まりました。そのまま無気力に心が支配されてしまった後では、日常の復帰は難しかった」と振り返ります。
悩みを抱える人もそうでない人も、同じ場所で購入し、同じように愛用できる下着
それから11年、2011年当時に比べ売り上げは約6倍へと大きく成長した「フリープ」は今、インクルージョン(包括性)な下着として注目されています。「誰にでも心地良く着られる下着」を追求していった結果、乳がんの手術後の人、皮膚の悩みがある人などにも信頼されるように。「この下着は●●用」と用途を制限するのではなく、悩みを抱える人もそうでない人も、同じ場所で購入し、同じように愛用できる下着が完成したのです。
「フリープ」に使用されているのは、スマイルコットン社の天然コットン素材。一般的なコットンに比べて、ふんわり軽く感じる素材で、糸の「より」をほぐして「わた」に近い状態にしてあります。そのため、繊維の間に空気を含み、軽く感じるのです。
縫製においては、縫い目は表に出して、肌に当たる部分を極力フラットに仕上げたり、タグ類は外側に付けて肌に直接当たらないようにしたりなど、肌触りの良さを細部に至るまでこだわっています。
日本アトピー協会推薦品、乳がん手術後の人からも支持
そんなこだわりから「フリープ」のほとんどの商品が、日本アトピー協会推薦品です。アトピーでなくても、肌が乾燥していたり、体調によって肌が敏感になっていたりするときは、縫い代やタグがチクチク感じることも。「いつどんなときも安心して着られる下着」それが支持される大きな理由です。
以前、こちらの記事(https://wotopi.jp/archives/114580)でも紹介したように、「フリープ」は、そのやさしい作りから、乳がんの手術後の人にも支持されています。同記事内の編集部Hさんのコメントに「何よりうれしかったのは、これまでと同じ場所で買い物ができること」とあるように、病気を抱えていても、これまでと同じように百貨店やランジェリーショップで購入できるのは、想像以上に心の支えとなるようです。
ストレスフリーなパジャマも人気上昇
「フリープ」ではさまざまな下着のほかに、ユニセックスのパジャマも展開しています。まだまだ行動が制限されたり、オンとオフの境が曖昧になったりしたことで、睡眠のリズムが狂ってしまった……そんな声も聞かれるコロナ禍の今。ストレスフリーな着心地のパジャマは、質の良い睡眠の一助になることが期待されます。
東日本大震災の発生当時、現地で被災された同社相談役が私に言われた「忘れないでいてくれれば、それでいいのよ」という言葉。11年が過ぎ、当時の記憶が薄れつつある中、その言葉の意味をあらためて心に刻みたいと思います。