まさかの糖尿病予備群…健診で指摘されたら/第20回

糖尿病を悪化させる歯周病…怖い理由は【専門医に聞く】

糖尿病を悪化させる歯周病…怖い理由は【専門医に聞く】

「健康診断で糖尿病予備群だと言われた」「別の病気の血液検査で糖尿病が発覚、とまどうばかり」という人が後を絶ちません。そこで、糖尿病の基礎知識について、糖尿病専門医・臨床内科専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある福田正博医師に連載にて詳しく尋ねています(これまでの記事は文末のリンク先を参照してください)。

第14回から第19回までは、糖尿病が真に怖い理由について、三大合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症)と、新合併症といわれるうつ病、がん、認知症との関係について伝えました。今回は、近ごろよく指摘される「歯周病との関係」について尋ねます。

糖尿病専門医の福田正博先生

糖尿病専門医の福田正博医師

医学会が糖尿病と歯周病の悪循環を示す

——歯周病があると糖尿病が悪化する、また糖尿病の人は歯周病になりやすいと聞きます。「糖尿病と歯? 何のつながりが?」と思いますが、関係があるのですね。

福田医師:歯周病は歯ぐきなどに炎症が起こる病気で、原因は歯周病菌が繁殖したかたまりのプラーク(歯垢。しこう)です。糖尿病の患者さんで、「薬を飲んで生活習慣も規則正しく継続しているのに、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が改善しない。実は歯周病の歯が複数あった。歯周病を治療したら血糖値も改善した」という例はよくあります。

歯周病は糖尿病の合併症であることが明らかになっています。その実態については国内外で多くの研究報告があります。糖尿病の診断基準のひとつである「HbA1c(エイチビーエーワンシー、またはヘモグロビンエーワンシー。糖尿病の診断基準のひとつで血液検査でわかる。第1回参照)の数値が高いほど歯周病が多くなる」ことや、「歯周病があると糖尿病が悪化する」こと、「重度の歯周病は糖尿病を発症させる」ことなどが示されています。

また、日本糖尿病学会が編さんする『糖尿病治療ガイド』には「糖尿病と歯周病は相互に負の影響を与える」と記されています。日本歯周病学会も、『糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2014』を発行して医師に治療を喚起しています。

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糖尿病と歯周病は、免疫と炎症が関係する

——糖尿病と歯周病はどのように影響し合うのでしょうか。

福田医師:いくつかの要因があります。まず高血糖では、尿の量が増えて体内の水分が減少するとともに、唾液(だえき)の分泌量が減ります。唾液には抗菌・殺菌・消毒作用があり、歯周病菌を抑制する役割があります。しかし糖尿病ではその唾液が減るために、歯周病が進行すると考えられます。

また、高血糖の状態だと唾液に含まれる糖分の濃度が高くなります。歯周病菌は口腔(こうくう)内の糖分をエサにして増えるため、繁殖しやすくなるのです。

さらに、高血糖とは血管にブドウ糖があふれている状態で、それが白血球による免疫の働きを邪魔することになり、歯周病菌が増殖します。そして、ブドウ糖がタンパク質とくっついてできる物質のAGEs(糖化最終物)が歯肉組織に溜まると、白血球の免疫細胞が歯肉組織に侵入して炎症性のさまざまなサイトカインを放出します。サイトカインとは免疫細胞から分泌される物質で、炎症細胞の活性化を引き起こします。すると歯肉では組織の破壊が進んで、歯周病の発症や悪化をまねきます。

歯周病の治療で糖尿病が改善

——では、歯周病を治療すれば糖尿病は改善するのでしょうか。

福田医師:はい、歯周病は血糖コントロールを悪化させるので、歯周病を治療すると糖尿病が改善すると考えられます。それに、せっかく歯周病の治療をしても、血糖のコントロールが悪いと再発しやすいこともわかっています。また高血糖は歯周病を悪化させ、血糖値を改善すると歯周病の治療もうまくいくようになります。 

——それほど、相互に影響し合っているということですね。ただ、歯周病も糖尿病も、自分ではなかなか気づかないままに進行する病気と聞きます。

福田医師:糖尿病も歯周病も、かなり進行してからでないと自覚症状が現れない病気です。糖尿病予備群や糖尿病と診断されて、医師に「歯周病はありませんか?」と歯科を紹介されてはじめて歯周病に気づいたという人はたくさんいます。また、歯科で歯周病がひどいと診断されたことをきっかけに、糖尿病予備群や糖尿病だと判明したケースも少なくありません。

さらに、歯周病があると口腔から全身へ動脈硬化を引き起こす炎症性サイトカインも流れ出し、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などが起こりやすくなります。この点からも、口腔の健康は重要です。

糖尿病は健康診断やほかの病気の血液検査で、歯周病は歯科の定期検診で発覚することが多いのです。そのため、糖尿病を指摘された場合は歯周病を、歯周病を指摘された場合は糖尿病の検査も受けて、発覚した場合は一日も早く両方を治療することが悪循環を断ち切る方法です。

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——歯周病は、厚生労働省の「2012年歯科疾患実態調査」によると、25~29歳でも68%以上で、45歳~54歳では80%以上で兆候が見られるとあります。中年以降になるとほとんどの人が歯周病があると考えたほうがいい数字です。

福田医師:そうです。歯周病の進行を予防するためにもっとも重要なことが、プラークの量を減らす「プラークコントロール」です。歯科でプラーク除去やプラークのもととなる歯石を取る施術を受けることと、自分で毎日歯磨きや歯間清掃をするセルフケアで歯と口腔を清潔に保つことが提唱されています。

たとえ歯周病の症状に自覚がなくても、糖尿病の人はもちろん、糖尿病予備群と指摘された場合は歯科を受診し、必ず「糖尿病です」「糖尿病予備群です」と医師に伝えて、プラークコントロールの治療と指導を受けてください。

聞き手によるまとめ

歯の問題だとばかり思っていた歯周病が、実は糖尿病の引き金になること、糖尿病予備群でも歯周病があると血糖コントロールが悪くなること、また動脈硬化も起こりやすくなること、歯周病が治れば糖尿病も改善するということです。歯周病は年齢とともに罹患率が限りなく高まることもあり、糖尿病予防としても日々のプラークコントロールを継続していきたいものです。

★お知らせ
福田医師が会長をつとめる「大阪府内科医会」主催のオンライン健康セミナー「第23回市民公開講座 美と健康はおなかから~腸活のススメ~」が、2021年12月12日(日)13:00~と15:00~の2回、配信されます。福田医師もパネルディスカッションに登壇します。どなたでも無料で視聴ができます(事前登録が必要です)。申し込み先:https://www.osaka-naika.jp

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(構成・取材・文 藤井 空 / ユンブル)

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