もめ事が苦手な人は法律婚が向いている? 事実婚と法律婚の違い【前編】

もめ事が苦手な人は法律婚が向いている? 事実婚と法律婚の違い【前編】

家族やカップルのかたちはさまざま。選択的夫婦別姓導入に関する議論もあり、事実婚にも注目が集まっています。

婚姻届を提出するいわゆる「法律婚」と「事実婚」の違いは? それぞれのメリットとデメリットは?

そこで、銀座さいとう法律事務所(東京都中央区)の齋藤健博(さいとう・たけひろ)弁護士にお話を伺いました。前後編。

齋藤健博弁護士

齋藤健博弁護士

事実婚と法律婚の違いは?

——周りでも事実婚を選択するカップルが多いです。私自身も選択的夫婦別姓制度に賛成なので、今のところ事実婚を選びたいと思っています。ネットで「結婚 メリット」と検索しても「好きな人と一緒にいられる」「子供が持てる」といった、ふわっとした回答しかなくて……。それぞれのメリットとデメリットを洗い出した上で、検討したいと思いました。

齋藤健博さん(以下、齋藤):「法律婚」は、婚姻届を市区町村役場に提出し、法律上の婚姻関係が認められ、戸籍上夫婦である婚姻を指します。一方、事実婚は、「婚姻はしていないが、婚姻生活と同じ」という概念なんです。つまり、「法律的な届け出はしていないが、社会生活上は夫婦と同様のもの」を事実婚と呼んでいます。そのため、法律婚と事実婚の違いは、国に戸籍として把握させるか否かという点だけで、特にありません。ちなみに同棲と事実婚の違いもほとんどありませんが、同棲は婚姻の意思を持たずに一時的な共同生活を送るケースも含まれます。

——そうなのですね。今回は30代半ばの年収500万円、世帯年収1千万円の子供がいない男女のカップルというケースで考えていければと思います。

事実婚であっても法律婚と同じように貞操義務や扶養義務なども発生するのでしょうか?

齋藤:事実婚における内縁関係は、“準婚理論”と言って、「婚姻関係に準じる関係」として法律で保護されています。「本当に内縁関係で、たまたま戸籍に入れていないだけ」ということが立証できれば、婚姻関係にある夫婦と同じように、権利と義務を認めるというルールがあるんです。そのため、事実婚でも貞操義務や扶養義務といった夫婦としての義務は発生していきます。

——ということは、事実婚でもパートナーが浮気したら浮気相手を訴えることができるのでしょうか?

齋藤:訴えられます。ただし、法律婚であれば、これらの義務を自動的に法律で保護してくれるのですが、事実婚だと“準婚理論”、つまり「婚姻関係に準じる関係」をきちんと立証しなければなりません。立証によって内縁関係が認められれば、婚姻関係に準じた保護が与えられることになりますが、逆に立証できないと、法律婚と同様の保護は与えられないということになりかねません。

——ちなみに同棲状態では?

齋藤:たとえ同棲であっても夫婦同然の関係である内縁・事実婚状態であれば慰謝料を請求できる可能性があります。

——と考えると、事実婚も法律婚もそれほど変わらないんですね。

齋藤:ただ、事実婚の場合、「婚姻関係に準じる関係」をきちんと立証するという理屈を噛(か)ませなければいけないので面倒と言えば面倒ですね。

——そっか。具体的にはどんなことをすれば「婚姻関係に準じる関係」を立証できるのでしょうか?

齋藤:この書類があればオッケーとは言い切れないのですが、「婚姻の意思があったこと」と「夫婦同然の共同生活を送っていたこと」がポイントになります。

例えば、賃貸借契約書で同居人の欄に内縁相手を記載していたり、住民票を同一世帯にして世帯主ではないほうの続柄を「妻(未届)」や「夫(未届)」のように記載していたり、でしょうか。ほかにも同居期間が長い(目安は3年くらい)といった客観的事情も証拠になり得ます。

——同一世帯の住民票はドラマにもなった『逃げるは恥だが役に立つ』でも登場しましたね。

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もめたくない人は法律婚が向いてる?

——法律婚は、何かトラブルがあった時のための“安心パック”ということでしょうか?

齋藤:良いか悪いかは別にして、そのように言えると思います。ひと昔かふた昔前は、「男性が外でお金を稼いで、女性は家の仕事をする」という夫婦関係が多かったと思います。女性のほうが経済的に不利な状態にいるケースが多かった。法律婚のルーツには、「女性が積極的にお金を稼いでこない」という前提があったんです。

離婚する時に、「男が外で仕事をしている時に、私は家の仕事をしていたので、財産を半分分けてもらう権利がある」という理屈が通っていて。「双方が協力して共同生活をしていた」という、五分五分の関係が成り立つので、財産分与請求権が発生するんですね。

——法律婚は、経済的に格差があった場合に機能する制度という言い方もできるのでしょうか?

齋藤:決して現代的にはそうではないかもしれませんが、もともと女性が社会進出したりしていなかった時代には、とりわけその機能が重視されていたように思います。

法律婚では、そういった権利が自動的に付与されますが、事実婚だと、離婚する時に、「婚姻関係がないから、財産分与はしない」という相手の身勝手な言い分を許してしまう可能性があります。そのため、トラブルになった時のことを考えると、法律婚のほうがいいと思います。財産分与請求権や慰謝料請求権、相続権といった権利は、婚姻届ありきの制度ですから。将来のことは誰にも分かりませんが、もめそうだったら法律婚にしたほうがいいですし、トラブルにはならなさそうで、万が一なったとしても自分で一つ一つ処理していこうと思っている人は法律婚でも事実婚でも大きな違いはないと思います。

——もめたりトラブルになったりするのが嫌な人は法律婚のほうが向いているということでしょうか?

齋藤:私はそう思いますね。事実婚をしていて離婚という話になると、裁判所は古い考えを持っているので、「籍を入れなかった理由があるんでしょ?」と言われかねません。法律婚であれば、戸籍一つ出せば、いちいち婚姻関係を説明する手間もなく、権利を主張できますから。

——仕事でも何でも他人ともめるのが本当に嫌なんです。そういう人にとっては法律婚のほうが楽といえば楽なのかな……。ちなみに、手術の同意書のサインは「法律上の親族のみ」という話も聞いたことがあるのですが。事実婚のパートナーは同意書にサインができないのでしょうか?

齋藤:言ってしまえば、病院側は、手術後に患者ともめないための同意書が欲しいだけなんです。手術の同意書に法的な根拠はないので、基本的には、事実婚のパートナーでも友人でも、同意書のサインは可能だと思います。ただ、「パートナーとトラブルを起こしている」など、後々問題になりそうな情報が病院の先生の耳に入れば、信用性に欠けると判断されるかもしれません。万が一、問題が生じた時に「関係ない人がサインした」と言われかねませんからね。

——法的な根拠はないのですね。後編では共有財産についてお聞かせください。

(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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